トップページ»

「リリカについて」

月曜日, 11月 14th, 2011

 

KW:薬名検索・リリカ・プレガバリン・pregabalin・γ-アミノ酪酸・GABA・calciumチャネル

Q:足の浮腫、痺れがあり受診したところ、「腰部脊椎管狭窄症」(馬尾型)の病名が付き、基本的には手術だが、高齢の場合手術は困難といわれ、vitamin B12製剤とリリカが出された。このリリカという薬の薬理作用、また、薬の名称としては聞き慣れない『リリカ』の名称の由来等。

A:リリカ(ファイザー製薬)は、一般名:プレガバリン[pregabalin(JAN)]を含有する製剤である。1Cap.中に25mg・75mg・150mgを含有する製剤が市販されている。

pregabalinはγ-アミノ酪酸(GABA)の誘導体の一つである。pregabalinの作用機序は、過剰に興奮した興奮系神経系において、電位依存性calciumチャネルの補助サブユニットであるα2δ蛋白と高い親和性で結合し、神経前シナプスにおけるcalciumの流入を低下させ、各種興奮性神経伝達物質の放出を抑制することにより鎮痛作用を発揮すると考えられている。

pregabalinは構造上GABAに類似するが、GABA(GABAA、GABAB、benzodiazepine)受容体に結合せず、GABAの代謝やGABA取り込みへの急性的な作用はない。更にNMDA、AMPA、カイニン酸、グリシン受容体などの各種興奮性アミノ酸受容体並びに電位依存性calciumチャネル、natriumチャネル、chlorideチャネル、kaliumチャネルに作用する分子(ガバペンチンは除く)の結合部位にも活性がないことが確認されている。

pregabalinは、リリカの販売名で2010年7月現在、米国、欧州連合諸国、オーストラリア、カナダを含む世界110の国と地域において神経障害性疼痛などの適応で承認されている。pregabalinは欧州では2004年7月に末梢性神経障害性疼痛の適応で初めて承認され、米国では2004年12月に帯状疱疹後神経痛及び糖尿病性末梢神経障害に伴う神経障害性疼痛の適応で承認されている。更に欧州では2006年9月に中枢性神経障害性疼痛の適応が追加承認された。

日本では1998年より第I相試験が開始された。国内外の臨床試験の結果、帯状疱疹後神経痛に対する有効性と安全性が認められ、2010年4月に末梢性神経障害性疼痛のうちの「帯状疱疹後神経痛」効能・効果として承認された。また、帯状疱疹後神経痛を対象とした国内外の臨床試験に加え、糖尿病性末梢神経障害に伴う疼痛を対象とした国内外の臨床試験においても、有効性と安全性が認められ、2010年10月末に『末梢性神経障害性疼痛』の効能・効果への変更が承認された。

1.効能・効果:末梢性神経障害性疼痛
2.用法・用量:通常、成人には初期用量としてプレガバリン1日150mgを1日2回に分けて経口投与し、その後1週間以上かけて1日用量として300mg迄漸増する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高用量は600mgを超えないこととし、いずれも1日2回に分けて経口投与する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.本剤の投与を中止する場合には、少なくとも1週間以上かけて徐々に減量すること。
2.*本剤は主として未変化体が尿中に排泄されるため、腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与する必要がある。腎機能障害患者に本剤を投与する場合は、下記に示すクレアチニンクリアランス値を参考として本剤の投与量及び投与間隔を調節すること。また、血液透析を受けている患者では、クレアチニンクリアランス値に応じた1日用量に加えて、血液透析を実施した後に本剤の追加投与を行うこと。複数の用量が設定されている場合には、低用量から開始し、忍容性が確認され、効果不十分な場合に増量すること。なお、ここで示している用法・用量はシミュレーション結果に基づくものであることから、各患者ごとに慎重に観察しながら、用法・用量を調節すること。

クレアチニンクリアランス(mL/min):≧60
1日投与量:150?600mg
初期用量:1回75mg1日2回
維持量:1回150mg1日2回
最高投与量:1回300mg1日2回

クレアチニンクリアランス(mL/min):≧30-<60
1日投与量:75?300mg
初期用量:1回25mg1日3回又は1回75mg1日1回
維持量:1回50mg1日3回又は1回75mg1日2回
最高投与量:1回100mg1日3回又は1回150mg1日2回

クレアチニンクリアランス(mL/min):≧15-<30
1日投与量:25?150mg
初期用量:1回25mg1日1回もしくは2回又は1回50mg1日1回
維持量:1回75mg1日1回
最高投与量:1回75mg1日2回又は1回150mg1日1回

クレアチニンクリアランス(mL/min):<15
1日投与量:25?75mg
初期用量:1回25mg1日1回
維持量:1回25又は50mg1日1回
最高投与量:1回75mg1日1回

クレアチニンクリアランス(mL/min):血液透析後の補充用量注)
初期用量:25又は50mg
維持量:50又は75mg
最高投与量:100又は150mg

注:2日に1回、本剤投与6時間後から4時間血液透析を実施した場合のシミュレーション結果に基づく。

重要な基本的注意

1.本剤の投与により眠気、めまい等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。特に高齢者ではこれらの症状により転倒等を伴う可能性があるため、十分に注意すること。
2.*本剤の急激な投与中止により、不眠、悪心、頭痛、下痢、不安及び多汗症等の症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、少なくとも1週間以上かけて徐々に減量すること。
3.本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
4.本剤の投与により、弱視、視覚異常、霧視、複視等の眼障害が生じる可能性があるので、診察時に、眼障害について問診を行う等注意し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
5.*本剤による治療は原因療法ではなく対症療法であることから、末梢性神経障害性疼痛の原因となる疾患の診断及び治療を併せて行うこと。

副作用

帯状疱疹後神経痛投与時:主な副作用は、浮動性めまい393例(23.4%)、傾眠267例(15.9%)及び浮腫179例(10.7%)。
糖尿病性末梢神経障害に伴う疼痛投与時:主な副作用は、傾眠74例(24.5%)、浮動性めまい68例(22.5%)及び浮腫52例(17.2%)。

重大な副作用

1. 心不全(0.3%未満)、肺水腫(頻度不明注):心不全、肺水腫発現(特に心血管障害を有する患者)。
2. 意識消失(0.3%未満):意識消失発現。
3. 横紋筋融解症(頻度不明注):横紋筋融解症発現。筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等-投与中止。また、横紋筋融解症による急性腎不全の発症注意。
4. 腎不全(0.1%未満):腎不全発現。
5. 血管浮腫(頻度不明注):血管浮腫等の過敏症発現。

注:自発報告及び海外での症例のため頻度不明

代謝酵素:CYP1A2、CYP2A6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4に対する阻害無。本剤は主として未変化体のまま尿中に排泄され、ヒトにおいてほとんど代謝されることなく、また血漿蛋白にも結合しないため、本剤が薬物相互作用を引き起こす可能性は低い。

名称の由来については、QOL改善のイメージが可能であり、読み、聞き、書いた場合に印象がよい言葉として、Lyric:叙情詩(Music)、Lyrical:叙情的なを由来とするの報告が見られる。

1)リリカインタビューフォーム,2011.7.(第4版)
2)リリカカプセル添付文書,2011.10(第2版)
3)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2011;医学書院,2011

       [011.1.PRE:2011.9.古泉秀夫]