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「尿の性状について」

水曜日, 8月 31st, 2011

 

KW:物理化学的性状・尿性状・尿色調・尿pH・ネフロン・無機質・有機物・尿中成分

Q:尿色調、尿pH等の尿の性状について

A:尿(英・urine、独・harn、羅・uron)。腎で生成。体外へ廃棄される溶液性排泄物。尿は体内の血漿成分を原料とし、ネフロンで?過(赤血球、白血球、蛋白質を血液中に残存)・再吸収(水、糖、アミノ酸など)・分泌によって造られる。これを尿管、膀胱、尿道を通じて排泄(黄色清澄透明液体)される。尿の産生過程で、腎は老廃物や有害物質の排泄や水電解質や酸塩基平衡の調節などを通して、体液の恒常性を維持している。尿は有機物、特に尿素を多く含み、無機質では食塩などが多い。健常者では糖、蛋白を含まない

尿成分は90%以上が水分で、残りの主成分は尿素及び塩化Naであり、他にK、Mg、アンモニア、リン酸、クレアチニン、尿酸、硫酸などを含む。尿の黄色色調は主としてウロクロムによる。健康成人の尿量は通常1-2L/日、pH:5-8。浸透圧1500mOsm/kgH2O、比重1.005-1.030で、糖や蛋白を含まない。尿は食事内容や量、疾病の存在や進行度に左右されるので、健康状態の判定や各種疾患を診断する上で重要である。

1)尿の理学的性状

(1)尿色調:正常者の排泄直後の尿は、うすわら色、透明。着色尿は異常と見なしてよいとする報告が見られる。但し、尿着色は、病的意味を持つものと持たないものがある。

?赤色:原因は血尿、血色素尿、薬剤によるものなどで、見た目に赤い尿は肉眼的血尿、一見赤くないのに検査で赤血球の存在を認める出血は顕微鏡的血尿あるいは潜血尿という。これは無自覚な尿路系出血の重要な所見で、検査でないと発見できない。薬剤が原因で赤色尿になることがある。

?褐色:ビリルビン尿(黄疸)の時で、この時は泡迄黄色味を帯びる。脱水で濃い尿をするときの尿は、褐色調でも泡迄は黄色くならない。

?濃褐色・黄褐色:起床時、運動時、発汗時には尿色調は濃褐色又は黄褐色になることがあるが、これは体水分の蒸散によるもので、特に疾患上の心配はないとされている。

?黄色・黄色蛍光:尿を黄変させ、臨床検査値に影響を与えることがある(ビタミンB2による)。

(2)尿混濁:細菌が増加すると尿は濁る。脂肪・塩類の排泄が増加したときも濁る。

(3)尿pH:正常者の尿pHは6.0前後、4.5-8付近に変動する。強い酸性尿は血液のacidosisを、アルカリ性はalkalosisを示す。

(4)尿比重:尿比重は尿中に溶けている浸透圧物質と、水分の量的関係で決まる。尿比重は正常者でも尿量が少ないと上昇、多尿の時は下がる。正常者の尿比重は1.003-1.030付近である。糖、蛋白質、Ca等の浸透圧物質が大量に排泄されるときは、尿比重は上昇する。腎機能不全では、尿量は少ないが、尿濃縮力が低下するため尿比重は低い。

2)尿蛋白

尿蛋白は血液の蛋白が腎の糸球体から漏出したものである。腎糸球体の?過面は細かい網目であるので、蛋白は僅かしか通過しない。しかも尿細管で特に小さい蛋白は再吸収される。正常者でも少量の蛋白、殊に小アルブミン分子は、尿中に漏出する。これを糸球体性蛋白という。

(1)生理的蛋白尿

?起立性蛋白尿:起立時にのみ尿蛋白を認める。軽度の腎障害に基づく尿蛋白との鑑別には慎重を要する。
?激しい運動後の蛋白尿:その時にのみ蛋白が出る。

(2)病的蛋白尿

?糸球体の障害が主原因:糸球体性蛋白尿
?尿細管再吸収障害が原因:尿細管性蛋白尿(小型蛋白で、特殊検査を要する)

病的蛋白尿の最大の原因は、腎障害、殊にネフローゼで、1日3-10g程度出ることは珍しくない。

(4)尿細管泉蛋白尿
(5)特殊な尿蛋白:多発性骨髄腫のベンス・ジョーンズの蛋白は、免疫グロブリンのL鎖で、一般蛋白質と性質が異なり、加熱すると60-70℃当たりで凝固し、更に加熱して100℃辺りになると溶けてしまう。

3)尿糖

尿糖は血中のブドウ糖が腎糸球体より漏れ出たもので、血糖の濃度(血糖値の高さ)と腎尿細管での再吸収能バランスで決まる。正常者では血糖170-180mg/dLがその境界で、このレベルの血糖値を糖排泄閾値という。

腎性糖尿:腎の糖排泄閾値が低いため、血糖のレベルが低いのに尿に糖が漏出する。特に病的な意味を持たない。
病的糖尿:一般には170-180mg/dL以上の高血糖になったとき。糖分を多量に取れば、血糖が上がり、尿に糖が出やすい。尿糖の出方は1日のうちで大きく変動するが、糖尿病の患者では、1日中高血糖であるため、早朝空腹時にも尿糖を認め、食事後持続する高血糖のため、糖を長時間排泄する。

4)尿ケトン体

ケトン体とは糖代謝障害のため、脂肪の中間代謝物として肝で造られ、血液に溜まって尿にあふれ出たものである。ケトン体にはアセト酢酸、β-ヒドロ酪酸、アセトンがあり、酸性物質であるので。血中に増加するとacidosisになる。よくコントロールされていない糖尿病、脱水症、飢餓の時に産生が高まる。糖尿病で尿中にアセトン体が出ることは、糖代謝が著しく障害され、脱水症が強いことを意味し、acidosisから意識障害昏睡を来す。これが糖尿病性ketoacidosisで糖尿病性昏睡(diabetic coma)に陥る。

5)尿ウロビリノーゲン

urobilinogenは老朽赤血球の処理産物であるbilirubinの代謝産物として腸内細菌によって変化を受けて生じ、腸管から血中に再吸収され(腸肝循環という)、一部腎を通して尿中に排出される。urobilinogenは正常者の尿にも少しは含まれる。溶血性貧血では、bilirubinを経てurobilinogenが大量に造られるので、尿中urobilinogenは著しく増える。肝炎の際にもurobilinogenは増加する。胆管が閉塞される閉塞性黄疸では、腸管に胆汁が十分に出ないので、urobilinogenの産生が著しく減少し、尿中urobilinogen反応は陰性になる。

6)尿ビリルビン(胆汁色素)

赤血球の血色素で造られたbilirubinは水に溶けないので、蛋白と結合して血中を循環する。蛋白と結合したbilirubinは、水に溶けない非抱合性bilirubinであるため、肝で補足され肝細胞でグルクロン酸と結合(抱合)して、水溶性の抱合性bilirubinに変えられる。胆汁を経て、腸管に排出され、腸管から再吸収され、血中に戻り、一部が尿に排泄される。従って尿に出るのは抱合性bilirubin(直接bilirubin)だけである。直接bilirubinが尿中に出ると、尿は赤褐色となり、泡まで黄染する。尿にbilirubinが出るのは急性肝炎、閉塞性黄疸で、水溶性の直接bilirubinが血中に逆流し、尿に溢れ出たものである。

腎臓における吸収・排泄

物質 血液から濾過される量 再吸収量 尿中排泄量 排泄率(%)
180L 179L 1L 0.6%
ブドウ糖 144g 144g 0 0
尿素 52.2g 27.6g 24.6g 47
尿酸 8.4g   7.6g 0.8g 10
クレアチニン 1.4g   0 1.4g 100

尿素(urea):(NH2)2CO。哺乳動物における蛋白質、窒素の最終代謝産物であり、尿中窒素の約80%を占める。尿素サイクルを経て、肝にて生成される。臨床的には、腎機能の指標(BUN)として評価される。

尿の色調変化

通常、尿は殆ど無色である。濃縮された尿は濃い黄色をしている。黄色以外の色は異常である。食品用の色素で尿が赤色化することがあり、薬物は尿を茶、黒、青、緑、赤など様々な色調に変化させる。また茶色の尿には破壊されたヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中の蛋白質)が混じっていることもあり、腎臓、尿管、又は膀胱の病気で血液が尿中に漏れると尿が茶色になる。稀に溶血性貧血などの病気が原因で壊れたヘモグロビンが尿に出ることがある。茶色の尿には、重度の筋損傷後に尿中に排出された筋蛋白質が入っていることがある。尿色調が、ポルフィリン症で生じる色素のために赤くなったり、メラノーマ(黒色腫)によって分泌される色素で黒色化することがある。濁った尿は、尿路感染による膿、あるいは尿酸塩やリン酸塩の結晶が混じっていることが示唆される。異常な色の原因は、尿の化学検査や顕微鏡検査で同定できる。

酸性度:一部の食品や代謝性疾患によっても、尿の酸性度は変化する。

1)長谷川榮一:カラー版医学ユーモア辞典 改訂第3版;エルゼビア・ジャパン,2008
2)最新医学大辞典 第3版;医歯薬出版株式会社,2005
3)医学書院医学大辞典 第2版;医学書院,2003
4)福島雅典・監訳:最新メルクマニュアル医学百科家庭版;日経BP社,2004
5)橘 敏也:改訂コ・メディカルのための基礎医学の知識;薬業時報,1998

[014.4.URI:20011.古泉秀夫]