Archive for 7月, 2011

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『フィジカルアセスメントについて』

火曜日, 7月 19th, 2011

 

KW:語彙解釈・フィジカルアセスメント・physical・assessment・身体的・査定・評価・身体的情報評価

Q:最近薬剤師あるいは看護師の仕事の関係で「フィジカルアセスメント」という言葉を聞くが、全く同じ意味で解釈していいのか

A:physicalは「?身体の、肉体の;身体的な、肉体的要求の、肉欲の。?物質[界]の、自然[界]の;自然の法則に従った。?物理の、物理的;物理的科学の、自然科学の」意味である。
assessmentは「?課税、賦課;査定;評価、?査定額;課税額;評価される価値」の意味である。

physical assessmentは「physical=身体的な」、「assessment=情報を意図的に収集して判断する」とする意味付けも見られるが、直訳すると「物理的評価」あるいは「肉体的評価」である。その他、「身体に現れる情報を収集し、整理し、意味付けするという一連の作業」とする報告もされている。

看護職の言うフィジカルアセスメントは、医師の診察が最先端の医療機器を用いた診断になっており、正確で詳細なデータの補足は可能になったが、医師本人が患者に接し、打診・聴診・触診をする機会が減少している。そこで代替行為として看護師によるフィジカルアセスメント(打診・聴診・触診など、実際に患者の体に触れ、患者の症状を分析する)を行うこととしている。

従ってphysical assessmentとは、身体的情報の収集及び評価ということであり、将に『診察』という言葉に含まれる医師の行為そのものと言うことが出来るが、『診察』は医師の専権行為であるため使用できない。更に『診療補助』・『診察補助』では従来の看護業務との変化が表現できないということで、原語そのものを用いているものと思われるが、直訳すれば「身体情報の収集・評価」とすることが出来る。

看護師は常に患者の傍についており、高度な医療機器による診断結果よりは、従来行われていた診察の結果の方が、日常業務に役立つと考えていると言うことである。その意味では高度医療を行う病院以外では、医師自身が従来の診察方法を行っており、看護師が医師擬きの『診察』類似行為をする必要はないと思われる。

その意味では、physical assessment(身体的情報評価)という表現に、看護師以外の職種が『診察』類似行為を行うことの意味は含まれていないが、薬剤師が病棟業務、更に進んで医師の業務の一部を代行するという考え方から、physical assessmentなる用語を持ち出してきたものと考えられる。

1)小学館ランダムハウス英和大辞典;小学館,1979
2)http://hitan.net/physical_assessment.html,2011.3.18.
3)山内豊明:在宅療養を支援するフィジカルアセスメント;月刊ナーシング,29(10):100-103(2009)

         [615.8.PHY:2011.3.29.古泉秀夫] 

「ニコチン受容体について」

月曜日, 7月 18th, 2011

 

KW:物理化学的性状・nicotine・ニコチン受容体・nicotine receptor・ニコチン性アセチルコリン受容体・nicotinic acetylcholine receptor

Q:ニコチンは、実際には喫煙をしなくても体内にもともと持っているものなのでしょうか?。チャンピックスの作用機序としてニコチンレセプターをブロックするとされていますが、タバコをやめてチャンピックスオンリーの治療段階では、ニコチンの消失速度からみてそれ以上喫煙しなければ、直ぐに体内からは消失しているかと思われますが、ブロックしなければいけないニコチンというものが、もともと体内にあるとの回答だったのが理解できずにおります。

A:nicotine(C10H14N2=162.24)について、次の報告が見られる。

ピリジンアルカロイドの一つ。タバコ(Nicotiana,ナス科)のalkaloidの主成分である。油状のalkaloid。その他ナス科Duboisia hopwoodii(シカジチョウ:スモウトリバナ)、キク科Eclipta alba(タカサブロウ)、ガガイモ科Asclepias syriaca(オオトウワタ)、ベンケイソウ科Sedum acre(オウシュウマンネングサ)に含まれる。神経節細胞のニコチン様受容体に結合してまず興奮作用が起こり、続いて神経節遮断を生ずる。接触性神経毒として農業用殺虫剤となる。またnicotineは骨間筋や神経節に存在するコリン作動性受容体(acetylcholine receptor)を少量で興奮させ、逆に大量で遮断する。このnicotineの作用にちなんで、この種のコリン作動性受容体をニコチン様(コリン作動性)受容体と称する。急性nicotine中毒では悪心、嘔吐、痙攣を惹起する。またnicotineは天然由来の物質である等の報告が見られるが、人体内で合成されるという報告は確認できない。

自律神経系の主な化学伝達物質の一つはacetylcholineである。acetylcholineを伝達物質とする神経はコリン作動性神経(cholinergic nerve)と呼ばれている。交感神経及び副交感神経節前線維は、何れもコリン作動性であり、その終末から遊離したacetylcholineはシナプス後膜のニコチン性受容体と結合し、節後線維を興奮させる。

副交感神経節後線維の神経伝達物質もacetylcholineであり、効果器にあるmuscarine受容体と結合して、muscarine様作用を現す。コリン作動性神経支配シナプス後膜にはmuscarine受容体、あるいはnicotine受容体が存在し、acetylcholineはmuscarine様作用とnicotine様作用を持っている。muscarine様作用はmuscarineの薬理作用と類似した作用で、現在ではこれに類似した作用は他の薬物の作用でもmuscarine様作用と呼ばれる。muscarine様作用はatropinで遮断される。nicotine様作用は、nicotineの薬理作用と類似した作用で、acetylcholineの神経筋接合部や自律神経節に対する興奮作用である。他の薬物の作用であっても、acetylcholineのnicotine様作用に類似したものは、nicotine様作用と呼ぶ

*コリン作動性神経(神経末端からacetylcholineを放出している神経)
a.交感神経節前線維→nicotine受容体
b.副交感神経節前線維→nicotine受容体
c.副交感神経節後線維→muscarine受容体
d.汗腺に至る交感神経の節後線維→muscarine受容体
e.副腎髄質に至る交感神経節前線維→nicotine受容体

■ニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor:nAChR)

ニコチン性受容体という言葉からは、nicotine受容体に結合するリガンド(ligand:情報伝達物質)はnicotineだけと考えられがちであるが、nicotine受容体の生体内でのligandは飽く迄acetylcholineであり、むしろacetylcholineと結合する方が本来の役割であるとされる。

nicotine受容体は1983年沼らによってシビレエイからα-ブンガロトキシン結合能を指標に精製された蛋白質の部分アミノ酸配列に相当するオリゴヌクレオチドをプローブ*にしてクローニングされた。これは受容体の構造が分子レベルで明らかにされた最初の例である。このchannelを通過するのはNa+が主であるが、K+やCa2+も通過する。
nicotine受容体は筋肉型(NM)と神経型(NN)の二つに分けられる。神経筋接合部のNMはα1×2、β1、γ、δの5量体で、acetylcholineは二つのαサブユニットと結合する。また成熟個体のNMはγでは無くεを含む。自律神経節や中枢神経系のNNのサブユニットは主にαとβ(それぞれに9、4種類のサブタイプがある。)からなり、α×2、β×3のヘテロペンタマーが多いが、αのみのホモペンタマーもある。
*「生ある物質の存在を確認するための手掛かりに用いる物質。対象物質と相互作用するような物質が用いられる。」
また、nicotine受容体には様々なサブタイプが存在し、受容体を構成するサブユニットとしてα(1-10)、β(1-4)、γ、δ、εの17種類が発見されている。その中で中枢神経細胞での発現が多いのは二つのα4と三つのβ2で構成されているα4β2受容体である。この受容体はnicotine依存にも関係が深く、これらのサブユニット以外にもα7サブユニットもnicotine依存症の病態への関与が示唆されているとする報告が見られる。

nicotine:煙草に含まれるnicotineはnAchRに結合して振戦、呼吸促進、嘔吐、交感・副交感神経の刺激症状(徐脈、血管拡張、蠕動亢進などの自律神経のうち優位な方の神経の刺激症状が出現する)を起こす。喫煙による禁断症状が現れるのはこのためである。

NN-antagonist(拮抗薬):ヘキサメトニウム、メカミラミン、トリメタファン:これらの薬物は解離性大動脈瘤や悪性高血圧のような緊急時にのみ血圧を低下させるために用いる。

NM-antagonist(拮抗薬):(競合的)d-ツボクラリン、パンクロニウム、ベクロニウム;(脱分極性、非競合的)スキサメトニウム:これらの薬物は、全身麻酔時の筋弛緩や骨折、脱臼時の整復の際に用いられる。

■ムスカリン性アセチルコリン受容体(muscarinic acetylcholine receptorm:mAChR)

acetylcholine(ACh)には、ニコチン性(n)とムスカリン性(m)の作用がある。nicotine受容体は、ionchannel型である。muscarine受容体はG蛋白質共役型で、遺伝子的にはm1-m5の、薬理学的にはM1-M3のサブタイプに分類される。M1-Rは中枢神経系や胃の細胞壁、コリン作動性神経節伝達の促進に、M2-Rは心臓に分布し、Gi/oと共役しており、AC*の抑制やK+ channelの開口により、陰性変力、陰性変時作用を起こす。M3-RはGqと共役し、PLCを活性化し、シナプス前部からのacetylcholineの遊離、胃酸分泌、腺分泌、平滑筋収縮に関係する。副交感神経刺激は、muscarine受容体に媒介される反応を惹起する。また、m5受容体は、リンパ球に発現していることが知られている。
*アデニル酸シクラーゼ

副交感神経刺激により、瞳孔括約筋は収縮し(縮瞳)、近くを見るために毛様体筋は収縮する(輻輳)。涙腺、汗腺、副腎髄質、膵臓、唾液腺、鼻咽頭腺など外分泌腺からの分泌は全て刺激される。心臓では心拍数、収縮力は減少し(それぞれ陰性変時、変力作用)、活動電位持続時間(AP)は延長し、伝導速度は低下し、房室伝導は減少する(陰性変伝導作用)、動脈平滑筋は弛緩し、動脈は全て拡張し、気管、気管支平滑筋は収縮する。消化管では、胃腸管の運動と緊張は増加し、幽門と肛門の括約筋は弛緩し、胃腺、腸腺の分泌は刺激される。泌尿器系では、膀胱排泄筋は収縮し、三角筋と括約筋は弛緩し、排尿に至る。陰茎は勃起する。

muscarine受容体-agonist(作動薬):即ちコリン作動薬[acetylcholine(N+M)、カルバコール(N+M)、ベタネコール(M2、M3)など]は、消化機能亢進や尿閉に使用されるが、重篤な心疾患(徐脈)、気管支喘息、甲状腺機能亢進症、消化性潰瘍、パーキンソン病、てんかん、妊婦などには禁忌であり、使用には十分な注意と共に、拮抗薬のatropinの準備が必要である。しかし、可逆的コリンエステラーゼ阻害薬は、内因性のAChを増量させてmuscarine受容体を介して作用するので術後などの消化管機能低下に対して用いられる。

muscarine受容体-antagonist(拮抗薬):3級アミン化合物と4級アンモニウム化合物に分類される。4級アンモニウム化合物は中枢への移行が少なく中枢性の副作用が軽減されるが、消化管での吸収も低下する。atropinは代表的なmAChR-antagonist(抗コリン薬、副交感神経遮断薬)で、麻酔の前投薬、消化性潰瘍による分泌・運動の亢進、胃腸・胆管・尿道の痙攣性疼痛、迷走神経性徐脈、有機リン中毒に用いられる。

■varenicline tartrate(JAN)
[チャンピックス

『似非市民運動家始末』

木曜日, 7月 14th, 2011

     魍魎亭主人

 

九州電力玄海原子力発電所の運転再開問題で、九電の幹部の指示で、社員や関連会社の社員が再開賛成の世論を誘導する目的で、メールやファックスを送りつける騒ぎがあった。今回だけではなく、従来もあらゆる場面で、社をあげて世論誘導に狂奔してきたようである。しかし、今回、会社の幹部が間違えたのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、原発の安全神話が崩れ、原発に対する国民の意識が変化した。その国民の中には社員もおり、社員の意識も変化し、会社の指示に盲従することに抵抗する意識が存在したということである。こういう状況になれば、内部情報の機密性は失われ、外に漏れてくる。

原子力発電所の再開問題に関連して、原子力発電所の安全性の判断条件として、欧州連合が2011年6月に始めたといわれる耐性検査(ストレステスト)の導入が必要だと、何の脈絡もなく突然思いついた鈍臭いおっさんがいて、しかも、経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会*のダブルチェックをすると言うことになった。これは経産省に強い不信感を持つ首相の意向に配慮したものだという。しかし、この辺から既に話が違っている。首相が経産省原子力安全・保安院に不信感を持つのは勝手だが、悪いが国民の多くは『経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会』の両者に対して不信感を持っている。第一両者は今回の事故で、ただ右往左往するだけで、的確な対応を取ったとは思えない。それ以前に今回の危険性を予測し、回避する手立てを日常的に検討しておかなければならなかったのではないか。

原子の火は多くの富をもたらすかもしれない。しかし制御するには高度の技術を持った御者が必要なのだ。甚だ悪いが、国民の多くは、あんたの御者としての能力を見限っている。国民の多くは、まあ、何て仕事の出来ない男なんだろう、まあ何て行き当たりばったりな男なんだろうと呆れており、何の期待もしてない。第一、自らの出処進退を明らかに出来ない男がいうことを信用しろといわれても信用する訳にはいかない。それに無闇に耐性検査に拘っているが、あれは飽く迄も架空現実の話だ。条件設定によっては凡そ信用できない結果になりはしないか。丁度良い、まず東京電力福島第一原子力発電所でやってみたらどうだ。その結果を見れば、どの程度の精度で結果が得られるのか分かろうというもんだ。兎に角実際に潰れている訳で、実験材料としてこれだけ貴重なものはない。

国会議員が選挙を怖がるというのはおかしくはないですか。金は掛かる、当選の保証はない。落選すればただの人になる訳で、なるべく避けたいとの思いは解らないではないが、現状の政治状況を見れば、何とか打開しなければならない状況にあることは、解るはずだ。似非市民運動家が、脱原発を振りかざして、あたかも国民の希求の代弁者みたいな顔で記者会見などしているが、今、国会を解散して選挙になれば、間違いなく彼の率いる政党は陥没する。党代表に選出し、総理にした代議士諸君が、国益を損なっている総理を自らの手で引きずり下ろせない。各大臣諸氏が、纏めて辞表を提出し、次の役員人事で指名された諸氏が全員断れば、組閣できない総理は自ら決断せざるを得ない。また同時に党役員も全員が辞表を提出すれば、それこそ現政権は自然消滅するはずである。しかし、現状を見る限り、大臣の地位にあることに汲々としている諸君が多く、この国の行く末を心配するよりは、現政権にしがみついていることの方を優先している。

このような状況は国民の誰もが知っていることである。今、総理が解散を強行すれば、間違いなく政権党に属する政治家の多くは再び赤絨毯の上に立つことは出来ない。国民の希求が強い脱原発の旗を振ろうが、困難な状況下にある東日本大震災の被災者を見捨て、選挙に打って出る党首がいる政党の議員に投票する国民は多くはないはずである。

 

*原子力安全委員会:原子力基本法、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法及び内閣府設置法に基づき設置される。原子力を安全に利用するための国による規制は、直接的には経済産業省、文部科学省等の行政機関によって行われるが、原子力安全委員会は、これらから独立した中立的な立場で、国による安全規制についての基本的な考え方を決定し、行政機関ならびに事業者を指導する役割を担っている。このため、内閣総理大臣を通じた関係行政機関への勧告権を有するなど、通常の審議会にはない強い権限を持っている。

          (2011.7.13.)

「町内会は行政の機関なのか」

木曜日, 7月 14th, 2011

       魍魎亭主人

 

谷市で、自治会が配布した殺虫用の薬品を誤飲したとみられる70代の女性2人が重症になり、市や自治会関係者は大きな衝撃を受けている。市によると、自治会役員が薬品を緑茶用のペットボトルに小分けしたとみられる。市は近く各自治会に対し薬品管理の徹底を求めるほか、誤飲を避けやすい粒剤などの導入の検討を始めた。[毎日JP]
県警によると、15日午後5時10分ごろ、越谷市の女性(74)宅の1階居間で、この女性と、友人の女性(71)が倒れていた。県警は、刑事事件での捜査も視野に入れ誤飲の原因を調べている。

市によると、問題の薬品は水性サフロチン乳剤「ES」。薄い黄色をしている。今回はボウフラの駆除用で、200倍に薄めて排水溝に散布する目的だったという。市環境政策課によると、重症になった74歳の女性宅は、自治会の班長を務めている。薬品は連合自治会長が13日に市役所から10缶(原液18リットル入り)を受け取り、これを傘下の5自治会が2缶ずつ分けた。

女性宅のある自治会では、役員が薬品を緑茶用のペットボトルに小分けし、26班の班長宅へ13-15日に配布したという。

市は13日から薬品を希望する160自治会に、「安全な取り扱い方法」などを記したパンフレットを添えて配布した。「誤飲防止のため飲料水の容器には絶対保管しないで下さい」と記していたという。

ボウフラの駆除のために、排水溝に散布するのであれば、行政の手で業者に依頼して散布するのが順当ではないのか。それをやらずに町内会に丸投げで任せてしまった結果が今回の事故である。町内会は行政の下請け機関ではないはずだが、地方では行政に組み込まれているということなのか。しかし、もしそうだとしても、小瓶の製品を購入して配布するか、なければ業者に小分けして納入するよう交渉し、兎に角間に入る素人が、小分けなどしなくて済むようにすべきだろう。

所でこの事故を受けて、厚生労働省は監視指導・麻薬対策課長通知を発出した。つまり『本件のように、必要な許可、適正な表示及び包装なしに医薬品である殺虫剤を小分けして配布することは、薬事法違反』ということであり、法律を犯しているということをいいたい訳である。勿論健康に対する配慮に欠けるということもいっているが、法律に違反したとなると、機械的な処分の対象ということで、配慮は得られないかもしれないが、小分けした人だけではなく、行政の不手際も処分の対象にしなければ、片手落ちということになる。

    薬食監麻発0518第1号
        平成23 年5 月18日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

                                      厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長

                              殺虫剤の配布について

今般、埼玉県越谷市内において、自治会が第2類医薬品である殺虫剤をお茶のペットボトルに小分けし、これを誤飲した女性二人が意識不明となる重大な健康被害が発生しました。
このような行為は医薬品の小分け製造であり、薬事法(昭和35 年法律第145号)第13 条に基づく医薬品製造業の許可が必要となります。

また、医薬品については、誤使用を防止する観点から、薬事法により、医薬品の名称等がその直接の容器又は被包に記載されていなければならないこと(薬事法第50 条)、医薬品の容器又は被包は、その医薬品の使用方法を誤らせやすいものであってはならないこと(薬事法第57 条第1 項)が定められており、これらの条項に違反する医薬品については、その販売、授与等が禁止されています。

本件のように、必要な許可、適正な表示及び包装なしに医薬品である殺虫剤を小分けして配布することは、薬事法違反であり、また同時に、公衆衛生上の観点からも、重大な健康被害をもたらす可能性の高い極めて危険な行為です。

ついては、貴管内の関係部局に対して、このような事例が再び発生することを防ぐべく、殺虫剤の不適切な小分け配布について厳に慎むよう周知徹底を図られたく、お願いいたします。

    (2011.6.16.)

「何をお考えだったのか」

土曜日, 7月 2nd, 2011

   魍魎亭主人  

 

肺癌治療薬「イレッサ」を巡る訴訟で、東京、大阪両地裁の和解勧告に懸念を示す声明を出すよう、厚生労働省幹部らが関係学会に要請したとされる問題で、厚労省は24日「不当な働きかけだった」として、医薬食品局の間杉純局長、平山佳伸審議官らを訓告、担当課長ら職員数人を厳重注意処分とすることを決めた。両地裁は今年1月、国に和解金の支払いを求める内容の和解を勧告。同省は当時、勧告拒否の方針を固めていたが、その方針の後押しを求める意味で7学会に協力要請し、日本医学会など3学会には声明文の下書きも提供。同24日に複数の学会が勧告内容に懸念を示す声明を発表し、国は両地裁への回答期限だった同28日、勧告を正式に拒否した。その後、大阪地裁では国が勝訴、東京地裁では国が敗訴する判決が言い渡された[読売新聞,第48588号,2011.5.24.]。

普段、各種医学会には、相当の資金的な援助?をしているから、頼めば内緒で何でも対応してくれるとでも思っていたのであろうか。それとも各種医学会のお偉方は、厚生労働省の各種委員会等の委員を委嘱しており、厚生労働省の依頼に逆らえないとでも思ったのだろうか。

それにしても子供染みたことをしたものである。少なくとも今から20年位前の役人ならこんな御粗末な対応は取らなかったのではないか。裁判所の判断に異論があるなら自分たちの判断を示せばいいわけで、他人の褌で相撲を取ろうなどという、せこい考えは止めた方がいい。

今回の判決で最も問題なのは『重大な副作用』欄に記載された副作用の順位に判断の基準を置いたことではないか。『重大な副作用』欄に引き上げられた副作用は、それだけで患者の治療にとって重要な情報で、順位はあまり関係ないはずである。死亡例の出るような副作用であれば、勿論、上位に掲載されるであろうが、死亡例の多寡で副作用の順位の変更が見られるなどという性質のものではないはずである。

『重大な副作用』欄に記載されているということは、それだけ治療時に十分注意して薬の投与を行えということで、医療関係者であれば、十分承知しているはずである。ただ、必ずしも発生頻度が明確なものばかりではない。時には極めて稀な副作用も含まれており、その意味では、時にないがしろにされることもあるが、概ねその重要性は認識されているはずである。ただ、添付文書に対する基本的な視点ということから言えば、医師と薬剤師では相当の相違があり、薬剤師は添付文書の記載内容を順守するという気風があるが、医師はさほどではない。

添付文書の記載内容に対するcompliance(順守)という点からいえば、その記載内容に問題があるというのが医師の考え方である。添付文書に記載されている情報の精度に対する不満を医師が持っている限り、裁判所が考えるほど添付文書に情報源としての価値はない。従って厚生労働省がやるべきことは、添付文書の情報源としての価値を高めるための努力である。

裁判所の和解勧告に懸念を示す声明を出すよう、関係学会に文案を提供し、要請することではないはずである。厚生労働省も「文案提供は行き過ぎだった」として、医薬品食品局の間杉純局長や実際に文案を提供した平山佳伸審議官ら計4人を訓告処分にした。次官や担当課長ら4人については、監督責任を理由に厳重注意処分とした。

大体役所が他人の褌で相撲を取ろうという魂胆がせこい。厚生労働省は「声明の要請自体は、多様な意見があることを示すためで問題はなかった」[読売新聞,第48589号,2011.5.25.]としているそうであるが、多様な意見があるならほっといても声は出るはずで、役所が要請することではない。自ら正しいと信じるなら自らの声で語るべきで、他人の声など当てにする必要はないはずである。

        (2011.5.15.)   

「炉心溶融」

土曜日, 7月 2nd, 2011

        魍魎亭主人 

 

東京電力福島第一原子力発電所の復旧作業の見通しが大きく崩れそうである。今迄、炉心溶融(メルトダウン)はないと発表していたが、どうやらそれは大嘘のこんこんちきということになってしまったようである。

東京電力福島第一原子力発電所の着工日は1967年9月と報告されている。

一方、 原子炉の炉心溶融事故が実際に発生した最初の事例とされるエンリコ・フェルミ高速増殖炉(Enrico Fermi Fast Breeder Reactor)は、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト郊外にあるとされるが、そのエンリコ・フェルミ原子力発電所(Enrico Fermi Nuclear Generating Station)内にあった高速増殖炉試験炉で、1966年10月5日に炉心溶融が起きたとされている。事故の原因は炉内の流路に張り付けた耐熱板が剥がれて冷却材の流路を閉塞したためであるという。また蒸気発生器では、伝熱管破損及び溶接不良によるトラブルが発生したとされる。原子力発電所ではないが、メルトダウンを起こした最初の事例だという。この場所では今も除染が継続されており、多くの住民の被害と膨大な経費とが垂れ流しになっている。これを何の参考にもしなかったのか。

またスリーマイル島原子力発電所事故は、1979年3月28日、アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で発生した原子力事故である。スリーマイル島 (Three Mile Island) の頭文字をとってTMI事故とも略称される。原子炉冷却材喪失事故 (Loss Of Coolant Accident, LOCA) に分類され、想定された事故の規模を上回る過酷事故 (Severe Accident) である。国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル5の事例であると報告されている。これを参考にして、強度を補強する工事はしなかったのか。

1986年4月26日には、ソビエト連邦(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で事故が発生しており、チェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力に関する事故の話は有名である。後に決められた国際原子力事象評価尺度 (INES) において、最悪のレベル7(深刻な事故)の参考事例として知られている。

事故の発生事例は件数としては多くはないが、事故が発生すると始末に負えなくなることは、全ての事例で十分証明されている。その事故を前例として、何故国内の原発は、より強固な対応をしてこなかったのだろうか。

津波についていえば、869年に発生した貞観地震(じょうがんじしん)のときには、内陸部まで津波が押し寄せたといわれている。更に約2000年前の弥生時代にも仙台平野を津波が襲っており、今回の東日本大震災の巨大津波と同程度まで内陸に浸水していた可能性が高いことが解ったとされる。貞観津波とほぼ同じ浸水範囲を示したと思われ、仙台平野ではほぼ1000年周期で東日本大震災と同規模の巨大津波が襲来していた可能性がある[読売新聞,第48580号,2011.5.16.]とする報告も見られる。

我々は原始時代に『火』を手に入れた。『火』を手に入れたことによって近代的な歴史の道筋を歩んできたともいえる。しかし未だにその『火』を完全に制御出来ずにいる。それが証拠に例年数多くの火事を出し、焼死者を出している。その体たらくを見れば、原始の火を制御するなどということは、人にとってある意味、幻想に近いといえるのではないか。温和しく制御されているように見えるが、それは表面上のことで僅かな齟齬で重大事件に発展する。

原子力発電所の建設に際して万全の体制を取ってきたといえるのか。あらゆる過去の災害の歴史に学び、それに対応する施設、設備を整備したといえるのか。少なくとも過去にマグニチュード8.3以上の地震が来ているとすれば、それに上乗せした地震に対応するだけの施設になっていたのか。しかも最も重要な設備である電源は、何故、複数用意されていなかったのか。

最悪を予測してなおそれでも安全だという施設・設備を整備するとすれば、膨大な設備投資をすることが求められる。適当なところで判断する。それをしなければどれほどの設備投資をすればいいのか解らないなどということを述べた斯界の権威が居たそうだが、東電の役員報酬50%カットでも3,600万円とする報道がされていた[読売新聞,第48578号,2011.5.14.]が、これほどの手当が払えるほど稼ぎがいいなら、設備投資の金なぞ幾らでも掛けられるはずである。また、原発事故によって、これから東電が放出する金額を考えれば、設備投資に使用する金額なぞは極僅かな金額だったはずである。いずれにしろ予測性の欠如、お粗末な想像力の結果だといえる。

所で西村武夫参議院議長の寄稿文[読売新聞,第48583号,2011.5.19.]で、菅総理の退任要求に対して『急流で馬を乗り換えるな』という心理が働くという惹句を引用していたが、急流を乗り越えることの出来ない馬に乗っているなら馬を代えて渡り直さなければならないし、そのような馬を選んだ乗り手も代えなければならない。如何に激変のさなかとはいえ、乱世に対応できない首長は、何時まで待っても対応できるように成長することはあり得ない。

    (2011.5.20.)   

「烏森神社・日比谷神社」

土曜日, 7月 2nd, 2011

           鬼城竜生  

新橋といえば専ら会社の帰りに寄る飲み屋のある街という程度の付き合いであった。更に新橋駅の降り口は専ら烏森口で、烏森口の駅名の由来が新橋にある烏森神社によるものだとは承烏森神社-01知していたが、神社そのものは参道に並ぶ飲み屋に行ったときに、遠くから見ただけで、社殿まで上がったことはなかった。

つい最近できたホルモン焼きの店で、烏の漫画を書いた絵馬が飾ってあったので、何処の絵馬か尋ねたところ、お客さんが貰ってきてくれた烏森神社の絵馬ですよとのことであった。内心面白い絵馬だなと思いながら、近いうちに行ってみるか。少なくとも絵馬が売っているということであれば、神主はいるということで、神主がいれば御朱印は書いて戴けるということだろうと考えた次第。

6月24日(木曜日)新橋駅で降りて烏森口にでて、烏森通りをしばらく行くと、右側に茅の輪が見え、その奥に神社の鳥居と社殿が見えた。茅の輪は、夏越しの大祓に使われるもので、正月から6月までの半年間の罪穢を祓う(6月30日午後6時執行)ためのもので、それを潜ることによって、疫病や罪穢が祓われるいわれている。

烏森神烏森神社-02社の御祭神は、栞の紹介によると倉稲魂烏森神社-03命(うがのみたまのみこと)・天鈿女命(あめのうづめのみこと)・瓊々杵尊(ににぎのみこと)の三神であるとされる。烏森神社は平安時代の天慶三年(940年)に、東国で平将門が乱を起こした時、百足退治の説話で有名な鎮守将軍藤原秀郷(俵藤太)が、武州のある稲荷に戦勝を祈願したところ、白狐が現れ白羽の矢を与えた。その矢を持って速やかに東夷を鎮めることができたので、秀郷はお礼に一社を勧請しようとしたところ、夢に白狐が現れて、神鳥の群がる所が霊地だと告げた。そこで桜田村の森まできたところ、夢想のごとく烏が群がっていたので、そこに社頭を造営した。それが烏森稲荷の起こりである。

烏森の地名は、古くこのあたりが武蔵野国桜田村と呼ばれていた時代には、江戸湾の砂浜で、一帯は森林であった。その為当時この地帯は「枯州の森」あるいは「空州の森」といわれていた。しかもこの松林には、烏が多く集まって巣をかけていた為、後には「烏の森」とも呼ばれるようになった。それが烏森という名の起こりであるとされている。

ところで烏森神社の鳥居の形は面白い形をしている。鳥居だといわれれば、間違いなく鳥居であるが、もし別の場所にあって、神社の社殿がなければ、相当首をひねる建造物になるのではないかと思われ烏森神社-04る。近代的な鳥居として、それなりに建烏森神社-06造した側の理屈はあるのだろうが、特段の説明は見当たらなかった。

烏森神社の例祭日は、江戸時代までは稲荷信仰に従って、二月初午の日が例祭日とされていたが、明治以降は例祭日を端午の節句五月四・五・六に改め、夏祭りの走り烏森祭りとして全国的に有名であるとされている。但し、烏森神社の大御輿は二年に一度、五月五日の例大祭で、新橋駅前を宮出しされるという。

新橋駅烏森口から出て直ぐの所にある信号の位置から左手側を見ると、新環状二号線の向こう側にある日比谷神社の社殿の屋根が見える。この神社の大祭は、烏森神社と交互に隔年で行われるという。

日比谷神社(鯖稲荷)の栞によると、御祭神は豊受大神(とようけのおおかみ)で、その他、祓戸四柱大神(はらいどのよつばしらのおおかみ)として、瀬織津比賣大神(せおりつひめのおおかみ)・速開都比賣大神(はやあきつひめのおおかみ)・気吹戸主大神(いぶきどぬしのおおかみ)・速佐須良比賣大神( はやさすらひめのおおかみ)の神々が祀られている。

豊受大神は伊勢神宮の御饌の神として伊勢神宮外宮に祀られる神さまで、五穀の主宰神として、稲荷神と並ぶ農業神で烏森神社-07あるといわれる。日比谷神社は、古くから旧麹町区日比谷公園の大塚山という所に鎮座し、日比谷稲荷明神旅泊(さば)稲荷明神と呼ばれていた。慶長 十一年(1606年)、烏森神社-08江戸城築城に際し日比谷御門を造営することとなり、氏子と共に芝口に移動となったが、町名は従来のまま、日比谷となっていたとされる。

寛永七年(1630年)、新橋に新しく芝口御門を造営することになり、町名も日比谷町から芝口町へと改称することになったが、神社の社号は変えることなく現在に到っているという。芝口の地に御鎮座して四百有余年となる古社であるが、明治五年(1872年)に村社に列せられ、その後、関東大震災(大正十二年)の後、昭和三年の都市計画区割整理の対象となり、愛宕下町二丁目に換地されて、現在の新橋四丁目に日比谷神社の御社殿が造営された。

以降、新橋の鎮守として広く崇敬を集め幾多の災厄に遭うも、その都度氏子崇敬者の方々の御厚意をもって再建されたという。平成二十一年、都市道路計画(環状2号線)により、御社殿は東新橋二丁目に建造されたという。日比谷神社の大祭は烏森神社と交互に隔年で行われる。

日比谷神社が「鯖稲荷」と呼ばれた理由については、次の説明がされている。

当社が日比谷公園の中にあった頃、全国の苦しんでいる旅人たちに神社の社務所を開放し、無病息災の祈願を受けさせたところ、霊験が殊更に著しくあらわれ、旅人や周囲の人々は「旅泊(さば)稲荷」と唱えました。新橋に遷った後に魚の鯖に変わるようになり、鯖稲荷と称してまいりました。特に昔、虫歯虫封じに苦しむ人が御祈祷をうけると霊験があるとされ、鯖を食べることを断ち祈誓をかけると治ったそうです。それ以降、治った人々は鯖を奉納するといわれてきました。

当日の総歩行数は、9,463歩で目標の一万歩には若干足りなかった。

     (2010.8.29.)