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「ドパミン作動薬による突発性睡眠の発現機序について」

日曜日, 8月 28th, 2011

KW:副作用・発現機序・突発的睡眠・発現機序・パーロデル・ビシフロール・ペルマックス・ドパミン作動薬・パーキンソン病治療薬・sudden onset of sleep・SOOS・ブロモクリプチンメシル酸塩・プラミペキソール塩酸塩水和物・ペルゴリドメシル酸塩・L-DOPA

Q:パーロデル、ビ・シフロール、ペルマックスの副作用。突発的睡眠の発現機序について

A:上記三剤について、次の報告がされている。

 

§パーロデル錠2.5mg (ノバルティスファーマ)

一般名:ブロモクリプチンメシル酸塩

(Bromocriptine Mesilate)

薬効分類:持続性ドパミン作動薬
重大な副作用として『突発的睡眠(頻度不明)』:前兆のない突発的睡眠があらわれることがあるので、このような場合には、減量、休薬又は投与中止等の適切な処置を行うこと。本剤の薬効薬理について、次の報告がされている。
麦角アルカロイドの誘導体。本剤は持続的なドパミン受容体作動効果を有し、内分泌系に対しては下垂体前葉からのプロラクチン分泌を特異的に抑制し、末端肥大症患者において異常に上昇した成長ホルモン分泌を抑制する。また、中枢神経系に対しては黒質線条体のドパミン受容体に作用して抗パーキンソン作用を示す。

§ビ・シフロール錠0.5mg (日本ベーリンガーインゲルハイム)

一般名:プラミペキソール塩酸塩水和物

(pramipexole hydrochloride hydrate(JAN))

薬効分類:ドパミン作動性パーキンソン病治療薬。
本剤の添付文書には『警告』として『前兆のない突発的睡眠及び傾眠等がみられることがあり、また突発的睡眠等により自動車事故を起こした例が報告されているので、患者に本剤の突発的睡眠及び傾眠等についてよく説明し、本剤服用中には、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業に従事させないよう注意すること。』とする記載がされている。
本剤の警告記載の理由について、次の報告が見られる。
海外において本剤服用中に突発的睡眠の症例が報告されており、国内臨床試験においても本剤服用中に突発的睡眠の例が認められた。海外では、前兆のない突発的睡眠の発現により極めて重大な事故につながる危険性があるため、本剤服用中に自動車の運転や機械の操作を行わないよう、警告を設定して注意喚起を促している。本邦においても本剤服用中に自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業をしないよう十分な注意を行う必要があると考えられたため、警告を設定した。その後、国内市販後においても突発的睡眠による自動車事故の症例が報告されたことから、承認時の表現を修正した。

突発的睡眠(sudden onset of sleep,SOOS)について

海外における市販後集積症例報告として、1998年10月に医師からプラミペキソール服用中の8名の患者が自動車運転中の睡眠発作(sleep attack)が原因と考えられる自動車事故を起こしたとの報告があった。これに対応して、欧州及び米国においてCPMP(欧州医薬品委員会)とFDAとのディスカッションの後、欧州では1999年7月に“Dear Doctor Letter”を、米国では1999年8月に“Dear Health Care Letter”を発行し、医療関係者にこの有害事象の危険性について注意を喚起した。また、「睡眠発作(sleep attack)」という有害事象名は適切でなく、「突発的睡眠(sudden onset of sleep,SOOS)」に変更された。日本においてもプラミペキソール服用患者に対する注意喚起を徹底するために「突発的睡眠」を「警告」及び「重要な基本的注意」の項を設定した。
なお、「突発的睡眠」は本剤に特有の有害事象ではなく、L-DOPAやdopamineagonist(dopamine作動薬)に共通して発現するものであり、2002年CPMPがdopamine作動薬の共通した有害事象としてposition statementを発表している。本邦においても、2003年3月に総てのL-DOPA製剤とdopamineagonist(作動薬)について、「突発的睡眠」に関する注意喚起が添付文書に記載された。なお、特発性レストスレッグス症候群患者を対象にした国内の臨床試験において突発的睡眠の副作用報告は無かった。

参照:用法・用量

パーキンソン病:通常、成人にはプラミペキソール塩酸塩水和物として1日量0.25mgからはじめ、2週目に1日量を0.5mgとし、以後経過を観察しながら、1週間毎に1日量として0.5mgずつ増量し、維持量(標準1日量1.5?4.5mg)を定める。1日量がプラミペキソール塩酸塩水和物として1.5mg未満の場合は2回に分割して朝夕食後に、1.5mg以上の場合は3回に分割して毎食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減ができるが、1日量は4.5mgを超えないこと。

中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群):通常、成人にはプラミペキソール塩酸塩水和物として0.25mgを1日1回就寝2-3時間前に経口投与する。投与は1日0.125mgより開始し、症状に応じて1日0.75mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。

重大な副作用:1. 突発的睡眠(0.1-5%未満):前兆のない突発的睡眠があらわれることがあるので、このような場合には、減量、休薬又は投与中止等の適切な処置を行うこと。
pramipexole hydrochloride hydrateの作用機序として
(1) ドパミンD2受容体に対する親和性(in vitro):本剤はドパミンD2受容体ファミリー(D2、D3、D4)に対し強い親和性を示したが、D1及びD5受容体に対する親和性は示さなかった。 (2) ドパミンD2受容体刺激作用:MPTP誘発ヘミパーキンソン病モデル動物において、線条体シナプス後膜ドパミンD2受容体刺激作用により障害側とは反対側への回転行動を誘発した(アカゲザル)。また、ハロペリドール誘発カタレプシー症状の改善作用を示した(ラット)等の報告がされている。。

§ペルマックス錠50μg (協和発酵キリン)

一般名:ペルゴリドメシル酸塩

(pergolide mesilate(JAN))

薬効分類:ドパミンD1、D2作動性パーキンソン病治療薬
本剤の重大な副作用として「突発的睡眠(頻度不明):前兆のない突発的睡眠があらわれることがあるので、このような場合には、投与を中止あるいは減量し、適切な処置を行うこと。」が添付文書に記載されている。
本剤の薬効薬理として、本剤は線条体におけるシナプス後ドパミン受容体を直接刺激することによりパーキンソン病に対する治療効果を発現すると考えられているの報告が見られる。また本剤はウシ脳より抽出した脳線条体膜において、脳内ドパミンD1及びD2両受容体に親和性を有するの報告も見られる。

以上の報告から「突発的睡眠」はpramipexole hydrochloride hydrateに特有の有害事象ではなく、L-DOPAやdopamineagonist(dopamine作動薬)に共通して発現するものとする内容について理解できたが、その発現機序については報告されていない。
但し、突発性あるいは突発的の標記については『外部からの作用に拠らず、また特に認めるべき原因もないのに起こる病気』とする報告、あるいは特発性過眠症とは、持続性あるいは反復性の日中の過度の眠気の発作を主症状とする睡眠障害の一種である。そもそも特発性とは、原因が判明していないことを指す言葉であり、特発性過眠症の原因は判明していないとする報告から、「特発的睡眠」の発現機序は不明であるとすることが出来る。

1)パーロデル錠添付文書, 2009.9.
2)ビ・シフロール錠添付文書,2011.4.
3)ビ・シフロール錠インタビューフォーム,2011.4.
4)ペルマックス錠添付文書, 2011.1.
5)日本医薬品卸勤務薬剤師会・監修:医薬品用語事典 第8版;じほう,2005

 

       [065.SOO:2011.7.22.古泉秀夫]