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「G蛋白質について」

木曜日, 6月 23rd, 2011

KW:語彙解釈・G蛋白質・Gタンパク質・G peotein・GTP結合蛋白質・GTP-binding protein

Q:G蛋白質について

A:Gタンパク質(G protein):グアノシン5′-三リン酸(GTP)又はグアノシン5′-二リン酸(GDP)と特異的に結合し、結合したGTPをGDPに加水分解する酵素(GTPアーゼ)の活性を持つファミリーをGTP結合蛋白質と総称するが、この中でホルモンや神経伝達物質などの細胞外情報物質(アゴニスト)が結合する細胞膜上の受容体と共役し、細胞内へのシグナル伝達・増幅因子(トランスデューサー)として機能するファミリーを、特にGタンパク質と略称している。厳密なヌクレオチドの結合特異性が決定される以前は、Nタンパク質とも呼ばれた。

GTP結合蛋白質(GTP-binding protein):グアノシン5′-三リン酸(GTP)及びグアノシン5′-二リン酸(GDP)と特異的に結合し、結合したGTPをGDPに加水分解する酵素(グアノシントリホスファターゼ;guanosine triphosphatase;GTPアーゼ、GTPase)の活性を持つ蛋白質ファミリーの総称で、細胞の生理応答発現に係わる種々の情報伝達経路においては、分子スイッチとして機能している。

細胞膜上の受容体と共役し、細胞内へのシグナル伝達・増幅因子として機能するGタンパク質は、分子量の大きい順にαβγと呼ばれる3種の異なるsubunit(副次的単位)からなる三量体で、動物細胞の場合その分子量が39,000-52,000であるα-subunitに、GTP(又はGDP)結合部位とGTPaseの活性が存在する。分子量35,000又は36,000のβ-subunitγ-subunit(分子量約6000)とは常に会合状態にある。

細胞膜を7回貫通する構造の受容体にアゴニストが結合すると、三量体型Gタンパク質のα-subunitと結合していたGDPは、細胞内のGTPと交換し、Gタンパク質活性化されてGTP結合型α-subunitとβγ複合体に解離する。

Gタンパク質はそのα-subunitが果たす機能及び遺伝子の違いからGs、Gi、Go、Gq、Gt、Golf等と略称されるsubufamilyに分類される。受容体に特異的細胞変化を起こすGタンパク質のsubufamily(表)

Gs アデニル酸シクラーゼの促進性。アデニル酸シクラーゼを活性化してcAMP合成を増加
G1 アデニル酸シクラーゼの抑制性
Gq/11 ホスホリパーゼC(phospholipase C;PLCβ)活性化
Gk K+チャネル活性化
Go K+チャネル活性化。神経組織に多く発現。
Gt cGMPホスホジエステラーゼ活性化。感覚器官の視細胞(網膜)と嗅細胞に対する組織特異的なトランスデューシン(Gt) 発現。
Golf 嗅覚。感覚器官の視細胞(網膜)と嗅細胞に組織の特異的なトランスデューシン(Gt)と共に発現する
G12/13 細胞骨格、細胞間結合や他の動作に関連する過程を調節

GMP:guanosine  5′-monophosphate(グアノシン一リン酸)。

Gタンパク質は、細胞で最も重要なシグナル伝達分子の一つであり、糖尿病、アルコール依存症、ある種の下垂体癌などの疾病はGタンパク質の機能不全によるものであると考えられるの報告が見られる。したがってそれらの機能、シグナル経路、タンパク質相互作用を理解することにより、治療や様々な予防措置が期待できるされている。

Gタンパク質を発見したのは、アルフレッド・ギルマンとマーティン・ロッドベルで、1994年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

1)今堀和友・他監修:生化学辞典 第三版,東京化学同人,1998
2)遠藤政夫・他編著:医科薬理学 改訂4版;南山堂,1998

  [615.8.GTP:2009.11.3.古泉秀夫]