Archive for 6月 23rd, 2011

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「アービタックス注射液について」

木曜日, 6月 23rd, 2011

KW:薬名検索・アービタックス注射液・頭頸部がん・抗悪性腫瘍剤・抗ヒトEGFR

Q:欧米では1006年がん増殖をピンポイントで防ぐ「アービタックス(商品名)」が承認され、頭頸部がんの再発、転移の標準的な治療薬になっているとする新聞記事を見たが、アービタックスの内容について

A:読売新聞[第48350号,2010.9.27.]で連載されている医療ルネッサンスNo.4930 日本では使えない2/5の記事中に見られる薬品名で、現在国内でも使用されているが、承認適応は限定されている。

アービタックス注射液100mg (ブリストル・マイヤー)
薬効分類:抗悪性腫瘍剤。抗ヒトEGFR注2)モノクローナル抗体

注2)EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor(上皮細胞増殖因子受容体)

有効成分 1バイアル(20mL)中の分量

セツキシマブ(遺伝子組換え)注3) 100mg
[Cetuximab(Genetical Recombination)]

注3)マウスハイブリドーマ細胞株を用いて製造される。マスターセルバンク及びワーキングセルバンク構築時にウシ胎児血清を使用している。また、製造工程において、培地成分としてウシ血清由来成分(アルブミン及びリポたん白質)を使用している。

本品の『効能又は効果』については、『EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌』とされており、他の適応は承認されていない。

また、効能又は効果に関連する使用上の注意として、添付文書に次の事項が記載されている。

1. 術後補助化学療法としての本剤の有効性及び安全性は確立していない。
2.本剤の使用に際してはKRAS遺伝子変異の有無を考慮した上で、適応患者の選択を行うこと(「臨床成績」の項参照)。
3.「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。

用法及び用量

通常、成人には週1回、セツキシマブ(遺伝子組換え)として、初回は400mg/m2(体表面積)を2時間かけて、2回目以降は250mg/m2(体表面積)を1時間かけて点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.*オキサリプラチン及びフッ化ピリミジン系薬剤を含む化学療法が無効となった患者に対するイリノテカン塩酸塩水和物との併用において、本剤の上乗せによる延命効果は検証されていない(「臨床成績」の項参照)。

2.本剤と放射線療法との併用における有効性及び安全性は確立していない。

3.本剤投与時にあらわれることがあるinfusion reaction(注入反応)を軽減させるため、本剤の投与前に抗ヒスタミン剤の前投薬を行うこと。さらに、本剤投与前に副腎皮質ホルモン剤を投与すると、infusion reactionが軽減されることがある。

4.重度(Grade3以上注4)のinfusion reactionが発現した場合には、本剤の投与を直ちに中止し、再投与しないこと。軽度?中等度(Grade1-2注4))のinfusion reactionが発現した場合には、投与速度を減速し、その後の全ての投与においても減速した投与速度で投与すること。投与速度を減速した後に再度infusion reactionが発現した場合には、直ちに投与を中止し、再投与しないこと。

5.重度(Grade3以上注4)の皮膚症状が発現した場合には、次表(省略)に従い本剤の用量を調節すること。

更に重大な副作用として、次の報告がされている。

1. 重度のinfusion reaction(5%未満)[重度のinfusion reactionとして、気管支痙攣、蕁麻疹、低血圧、意識消失又はショックを症状としたアナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、投与中及び投与後も観察を十分に行い、重度のinfusion reactionが認められた場合は、本剤の投与を直ちに中止し、それ以降、本剤を再投与しないこと]。

2.重度の皮膚症状(10?15%)[皮膚症状[主にざ瘡様皮疹、皮膚の乾燥及び亀裂、続発する炎症性及び感染性の症状(眼瞼炎、口唇炎、蜂巣炎、嚢胞等)]があらわれることがあり、重度の皮膚症状(主にざ瘡様皮疹)発現後に、切開排膿を要する膿瘍や黄色ブドウ球菌敗血症等を合併した例が報告されているので、重度の皮膚症状が認められた場合には、本剤の投与量を調節するとともに、続発する炎症性又は感染性の症状の発現に十分注意し、これらの症状に対する適切な治療を行うこと。また、必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導すること(<用法・用量に関連する使用上の注意>の項参照)。

3. 間質性肺疾患(0.5%未満)[間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状が急激にあらわれた場合には投与を中止し、胸部X線等の検査を実施するとともに、副腎皮質ホルモン剤投与等の適切な処置を行うこと]。

4. *心不全(頻度不明注8)[心不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと]。

5. *重度の下痢(頻度不明注8)[重度の下痢及び脱水があらわれることがあり、腎不全に至った症例も報告されている。観察を十分に行い、これらの症状があらわれた場合には、止瀉薬(ロペラミド等)の投与、補液等の適切な処置を行うこと]。

また、「警告」として、次の記載がされている。

警告
1.本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
2. 重度のinfusion reactionが発現し、死亡に至る例が報告されている。症状としては、気管支痙攣、蕁麻疹、低血圧、意識消失、ショックがあらわれ、心筋梗塞、心停止も報告されている。これらの症状は本剤の初回投与中又は投与終了後1時間以内に観察されているが、投与数時間後又は2回目以降の本剤投与でも発現することがあるので、患者の状態を十分に確認しながら慎重に投与すること。また、重度のinfusion reactionが発現した場合は、本剤の投与を直ちに中止し、再投与しないこと(「重要な基本的注意」及び「重大な副作用」の項参照)。
なお、本剤使用にあたっては添付文書を熟読すること。

薬効薬理

1.作用機序:セツキシマブはヒトIgG1の定常領域とマウス抗体の可変領域からなるキメラ型モノクローナル抗体であり、EGFR発現細胞のEGFRに対して高い親和性で結合する。
2. 抗腫瘍作用:多様なEGFR陽性癌細胞株において、セツキシマブのin vitro増殖阻害作用は濃度依存的であった。また、セツキシマブの増殖阻害作用は多様なEGFR陽性癌細胞株(ヒト結腸癌GEO等)を用いたin vivoモデルにおいても確認されている。

以上、アービタックス注射液の概略について紹介したが、現段階において承認適応は限定的である。

1)アービタックス注射液100mg添付文書,2011.3.改訂

   

[011.1.CET:2011.3.30.古泉秀夫] 

「G蛋白質について」

木曜日, 6月 23rd, 2011

KW:語彙解釈・G蛋白質・Gタンパク質・G peotein・GTP結合蛋白質・GTP-binding protein

Q:G蛋白質について

A:Gタンパク質(G protein):グアノシン5′-三リン酸(GTP)又はグアノシン5′-二リン酸(GDP)と特異的に結合し、結合したGTPをGDPに加水分解する酵素(GTPアーゼ)の活性を持つファミリーをGTP結合蛋白質と総称するが、この中でホルモンや神経伝達物質などの細胞外情報物質(アゴニスト)が結合する細胞膜上の受容体と共役し、細胞内へのシグナル伝達・増幅因子(トランスデューサー)として機能するファミリーを、特にGタンパク質と略称している。厳密なヌクレオチドの結合特異性が決定される以前は、Nタンパク質とも呼ばれた。

GTP結合蛋白質(GTP-binding protein):グアノシン5′-三リン酸(GTP)及びグアノシン5′-二リン酸(GDP)と特異的に結合し、結合したGTPをGDPに加水分解する酵素(グアノシントリホスファターゼ;guanosine triphosphatase;GTPアーゼ、GTPase)の活性を持つ蛋白質ファミリーの総称で、細胞の生理応答発現に係わる種々の情報伝達経路においては、分子スイッチとして機能している。

細胞膜上の受容体と共役し、細胞内へのシグナル伝達・増幅因子として機能するGタンパク質は、分子量の大きい順にαβγと呼ばれる3種の異なるsubunit(副次的単位)からなる三量体で、動物細胞の場合その分子量が39,000-52,000であるα-subunitに、GTP(又はGDP)結合部位とGTPaseの活性が存在する。分子量35,000又は36,000のβ-subunitγ-subunit(分子量約6000)とは常に会合状態にある。

細胞膜を7回貫通する構造の受容体にアゴニストが結合すると、三量体型Gタンパク質のα-subunitと結合していたGDPは、細胞内のGTPと交換し、Gタンパク質活性化されてGTP結合型α-subunitとβγ複合体に解離する。

Gタンパク質はそのα-subunitが果たす機能及び遺伝子の違いからGs、Gi、Go、Gq、Gt、Golf等と略称されるsubufamilyに分類される。受容体に特異的細胞変化を起こすGタンパク質のsubufamily(表)

Gs アデニル酸シクラーゼの促進性。アデニル酸シクラーゼを活性化してcAMP合成を増加
G1 アデニル酸シクラーゼの抑制性
Gq/11 ホスホリパーゼC(phospholipase C;PLCβ)活性化
Gk K+チャネル活性化
Go K+チャネル活性化。神経組織に多く発現。
Gt cGMPホスホジエステラーゼ活性化。感覚器官の視細胞(網膜)と嗅細胞に対する組織特異的なトランスデューシン(Gt) 発現。
Golf 嗅覚。感覚器官の視細胞(網膜)と嗅細胞に組織の特異的なトランスデューシン(Gt)と共に発現する
G12/13 細胞骨格、細胞間結合や他の動作に関連する過程を調節

GMP:guanosine  5′-monophosphate(グアノシン一リン酸)。

Gタンパク質は、細胞で最も重要なシグナル伝達分子の一つであり、糖尿病、アルコール依存症、ある種の下垂体癌などの疾病はGタンパク質の機能不全によるものであると考えられるの報告が見られる。したがってそれらの機能、シグナル経路、タンパク質相互作用を理解することにより、治療や様々な予防措置が期待できるされている。

Gタンパク質を発見したのは、アルフレッド・ギルマンとマーティン・ロッドベルで、1994年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

1)今堀和友・他監修:生化学辞典 第三版,東京化学同人,1998
2)遠藤政夫・他編著:医科薬理学 改訂4版;南山堂,1998

  [615.8.GTP:2009.11.3.古泉秀夫]