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『より厳しくあるべきではないのか』

木曜日, 2月 24th, 2011

       魍魎亭主人     

田辺三菱製薬の子会社が、医療機関向けの注射剤の一部で、出荷に必要な品質試験を行っていなかった問題で、同社の社長が26日、都内で記者会見を開き、陳謝したとする報道がされた[読売新聞,第48473号,2011.1.29.]。

健康被害の報告は無いが、2008-2010年に出荷された試験未実施の可能性がある約200万本を自主回収する。同社は昨年4月にも別の子会社が新薬承認時の試験データを改竄するなどして、薬事法に基づく業務停止処分を受けている。

社長は会見で「信用回復の途上で起きた問題で、原因究明を徹底し、改善していく」。社外有識者による危機管理委員会を設置し、再発防止に当たる方針を明らかにしたという。しかし、そう簡単にいくかどうか。

今回の問題について、業界紙の報道では、試験業務中に器具が故障し、そのまま作業を進めたということになっているが、壊れた試験器具をそのままにして、試験中断を続けていたという意味が解らない。普通直ちに器具の補習を行い、試験を再開するというのが当たり前の話で、それをしなかったということは、会社に対して何か含むところがあったということか。更に作業中に上司が何回かチェックをしていたというが、発見できないでいる。更に手抜き問題に関連して、内部調査を実施しているが、社内の職員のみで構成された委員会では、調査結果は「白」と出たという。

この経過を見る限り、組織全体のたがが緩んでいると言われても仕方がない。合併に次ぐ合併で、異文化が導入され、未だ混沌として一体感を持つまでに成長していないということか。特に三菱製薬は、血液製剤で事故を起こしたミドリ十字を引き受けた会社である。何時までもいわれたくないという思いがあるかもしれないが、人々の記憶から消すことは困難である。

特に今回のように、組織内部に問題があるのではないかと思われるような事例が発生すると、まだ尻尾を引き摺っているのではないかと勘ぐりたくなるのである。例えば社内の人間関係の融合が巧く行っていないとか、あるいは個人的に社内で阻害されているのではないかとの誤解を招くような雰囲気なり環境があるのではないか。

何れにしろ人の命に関わる製品を製造しているのである。常に緊張感を持って、仕事をして戴けなければ、出来上がった製品の信頼性は得られない。更に何かあれば必ず過去の亡霊が顔を出すのは、この会社の持つ宿命だといえる。古い話を引き出されるのが嫌なら、間違いを起こさないことである。他の会社の倍の努力をしても足りない“負の要件”を背負っていることを忘れて貰っては困るのである。

          (2011.2.1.)