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『MDMAについて』

日曜日, 9月 20th, 2009

KW:薬名検索・MDMA・エクスタシー・アダム・MDM・MDMA・メチレンジオキシメタンフェタミン・methylenedioxymethanphetamine・覚醒剤・合成幻覚薬・XTC

Q:MDMAの略号で呼ばれる薬物について

A: methamphetamine誘導体であるMDMA(3,4-methylenedioxymethanphe-tamine;メチレンジオキシメタンフェタミン)は、覚醒剤であるメタンフェタミン(methamphetamine hydrochloride)やメスカリン(mescaline)に化学構造が類似している合成幻覚薬である。エクスタシー(Ecstasy又はXTC)、アダム、MDM等の名称で呼ばれている。MDA(3,4-methylene dioxyamphetamine)とともに麻薬及び向精神薬取締法で規制されている。

MDMAは、常温では白色の結晶又は粉末。分子構造はmethamphetamineに類似し、methamphetamineのフェニル基の一部を置換したものと同一である。このためMDMAもmethamphetamineと同じく光学異性体を持つ。C11H15NO2=193.25。CAS-69610-10-2。

MDMAはその分子構造からしばしば覚醒剤に分類されるが、他の覚醒剤といわれる薬物とは、主たる作用機序が異なる。また、特有の精神作用により幻覚剤にも分類されるが、この「幻覚」は多幸感や他者との共有感などといった幻覚体験を指すもので、主作用として幻視や幻聴(一般に言う幻覚)を伴うことは稀である。MDMAは、長時間の活発なダンスに関連してしばしば使用されるが、『脱水』を引き起こし、『高体温』の引き金になる。

臨床徴候:高血圧、頻脈、散瞳、発汗、開口障害などが認められる。重症中毒では、高体温、DIC、筋硬直、ミオクローヌス(素早い筋収縮)、横紋筋融解症、急性腎不全等の他、時に抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)も認められる。上室性及び心室性不整脈も起こり得る。初期に見られた昏迷や興奮から昏睡や痙攣に移行することがある。

治  療:昏睡や痙攣が急激に起こることがあるので、催吐は行ってはならない。胃洗浄は摂取後1時間以内に開始できる場合にのみ有効である。活性炭投与を行う。静脈ラインを確保し、輸液を行う。興奮に対しては、気道確保及び呼吸補助の準備をした上でbenzodiazepineを投与する。β-遮断薬は頻脈や高血圧の治療に有用である。著しい高血圧にはnitroprusside sodiumが必要なこともある。

痙攣に対してはまずbenzodiazepineを使用し、引き続いてphenytoinあるいはphenobarbitalを投与する。心室性不整脈に対しては、lidocaine、phenytoin、esmolol hydrochloride(国内適応外)で治療する。高体温に対しては蒸発を利用してクーリングを行い、dantroleneの投与を考慮する。横紋筋融解症に対しては対症的に治療する。

1)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005

2)渡邉建彦・他:分子を標的とする薬理学 第2版;医歯薬出版株式会社,2008

3)高久史麿・他監訳:第11版 ワシントンマニュアル;MEDSi,2008

[011.1.MDM:2009.8.16.古泉秀夫]