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『OTC薬の販売姿勢』

木曜日, 9月 3rd, 2009

魍魎亭主人

 2009年6月1日改正薬事法の最終施行が実施された。それに基づいて一般用医薬品(OTC薬)の販売方法が大幅に変更された。副作用の危険度の高いOTC薬について、まず『適切な情報の提供』が前提条件となった。

 今回の改正ではOTC薬を危険度の高い順に1類(安全上、特に注意を要するもの)、2類(まれに入院相当の健康被害が生じる可能性がある)、3類(身体の不調が起こる恐れがある)の3分類に区分し、薬局・店舗はOTC薬を分類毎に分けて陳列し、1類は直接客が手に取れないようにカウンターの奥に並べる。1類医薬品のみであるが、明確にOTC薬(over-the-counter drug)としての扱いとすることが決定された。

 更に1類医薬品の販売の際には、薬剤師が文書を使って積極的に副作用や相互作用等の説明を行うことが義務化された。2類及び3類の医薬品については、薬剤師がいなくても、新設された『登録販売者』がいれば販売できるが、2類の場合も情報提供に努める義務が課されている。尚、『登録販売者』は、都道府県が実施する試験に合格した者が資格を取得する。

分類

リスク

主な薬

情報提供

対応する専門家

ネット等販売

3類

比較的低い

ビタミン剤、整腸剤

原則不要

薬剤師、登録販売者

1類

特に高い

H2遮断薬入り胃薬、一部の発毛剤

義務(文書で)

薬剤師

禁止

2類

比較的高い

主な風邪薬、解熱鎮痛剤

努力義務

薬剤師、登録販売者

禁止*

 更に今回施行された法律の特徴の一つは、これまで法令で直接禁止されていなかったInternetなどによる通信販売については『対面販売と比べて安全性が確保できない』として、省令により1類、2類の販売は禁止された。ただ、薬局のない離島の住民らには2年間に限って2類の販売も認める経過措置が設けられたということである。

 さて今回の改正の結果を受けて、薬剤師の責任は重いと思うが、その自覚はあるのだろうか。

 今回法律の力により、本来あるべき姿に引き戻して貰った。つまり薬剤師にしか取り扱えない薬が明確に規定され、更に情報提供が求められることになった訳である。しかし、これに対して、漫然と対応していたのでは、OTC薬は最終的に薬剤師の手から離されてしまうことになる。Self-Medicationを実施する上で、更にswitch-OTC薬の拡大を期待したいが、期待されるswitch-OTC薬は、当然重篤な副作用等の発現する可能性があるものも含まれるはずである。その際、薬剤師が使用者の立場に配慮した情報の提供と、発現が予測される不都合な作用の防止法をどの様に伝えていくのかが重要な役割となるはずである。Self-Medicationの推進は、偏に薬剤師の薬の扱いに掛かっている。

1)市販薬3種に分類-薬事法改正リスクに応じ説明:読売新聞,第47868号,2009.6.1.

(2009.6.8.)