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「ヒドラジン(hydrazine)の毒性」

金曜日, 12月 5th, 2008
対象物 ヒドラジン(hydrazine)
成分

ヒドラジン(hydrazine)、CAS No.302-01-2。別名:hydrazine anhydrous。N2H4=32.05。無色透明でアンモニアに似た液体。比重:1.013、引火点:38℃(密閉式)、融点:2℃、沸点:113.5℃。水、アルコールに溶ける。爆発し易い。塩基性で非常に還元されやすい。金属酸化物-水銀、銅などの酸化物及び多孔性酸化物と接触すると炎を発して分解する。

一般的性状

hydrazineは僅かにアンモニア臭を有する還元力の強い、塩基性の無色の液体で、非常に吸湿性があるとともに、大気中から二酸化炭素及び酸素を吸収する。水、アルコール、アンモニア、アミンなどの極性溶媒と混和し、炭化水素及びそのハロゲン置換体のような非極性溶媒には不溶。空気中では180℃でアンモニアと窒素に分解し、ハロゲン、硝酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム等と激しく反応する。水溶液は銅の触媒により分解する。強アルカリ性で腐食性が強く、ガラス、ゴム、コルクなどを侵す。

無水hydrazineはロケット燃料に用いられる。水加物プラスチック発泡剤製造用、還元剤、農薬(植物成長抑制剤及び除草剤製造用)、エアーバック用起爆剤。

水加hydrazineはプラスチック発泡剤やエアバッグ起爆剤などに使われている。また高圧ボイラー水(缶水)には溶存酸素を除去するために防蝕剤としてhydrazineが添加されている。このボイラー缶水を誤って飲用し、中毒する事例が多い。

爆発限界:2.9-100%(hydrazine、無水)、熱するか火焔に触れさせるか、酸化剤と反応させると、激しく爆発することがある。

保管条件:容器は密栓し、冷暗所に保管する。

毒性

許容濃度:0.1ppm、0.13mg/m3(皮膚)、ACGIH:0.01ppm(TWA)(皮膚)。IARC2B。強アルカリ性で皮膚を侵し、その他粘膜などに強い腐食を与える。急性経口毒性LD50:60mg/kg(ラット)。
吸入や経皮吸収又は経口にやって曝露される。皮膚や粘膜を刺激又は腐食する。

症状

全身作用として痙攣誘発作用、肝障害溶血作用がある。水加ヒドラジン中毒による死亡例では脱力、嘔吐、ふるえ等があり、死亡時の病理所見は重度気管・気管支炎、肝の脂肪変性、腎炎が見られた。発癌性として国際がん研究機関は2B(ヒトに対して発癌性があるかもしれない)としている。
吸入蒸気は粘膜刺激性、吸収は脊髄痙攣や溶血、時に過度体温上昇と糖分酸化増加が起こる。中程度の中毒も、肝壊死により数日以内に死に至ることがある。経口摂取は疲労、めまい感と眩暈食欲喪失、胃炎と下痢などを起こす。中毒性肝炎と貧血が多量投与後に起こる。hydrazine塩類は刺激的であり、腐食的である。本剤に触れると皮膚や粘膜の灼熱感を生ずる。

処置

眼に入った場合:流水で十分に洗う。

皮膚に付いた場合:大量の温水及び石けん水でよく洗浄する。

吸入した場合:新鮮な空気の場所に移し安静に努める。

救急処置はアルカリと同じなので参照する。

中枢神経症状には大量のビタミンB6(ピリドキシン)静注が特効薬として作用する。25mg/kgを3時間かけて静注する。一部を筋注してもよい。症状が取れない時には5-10分毎に25mg/kgずつ増量し、1回300mg/kgを超えない範囲で静注する。pyridoxineの長期大量投与で、神経障害が起きることがある。痙攣が止まらない場合はdiazepam 5-10mgを緩徐に静注又は筋肉内深く注射する。

メトヘモグロビン血症に対してはメチレンブルーの点滴をする。溶血、メトヘモグロビン血症が現れ、hydrazineによる腎毒性が出ていないうちであれば強制利尿で尿量増加を図る。

事例

米国国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官がAPに対し「被害を減らす手だてを検討している」と述べ、衛星が落下することを認めた。衛星の詳細は機密のため、明らかにされていない。米国ではL-21と呼ばれる偵察衛星が2006年の打ち上げ直後に交信不能になり、高度約350キロを漂っていると報道されたことがある。

過去、軌道上から落果した構造物は、2001年のロシアの宇宙ステーション・ミール(130t)が最大。これに次ぐ大きさの米スカイラブ(80t)は1979年、制御不能で破片の一部がオーストラリアに落果した。APは今回の衛生を10tと伝えている。

ロケットや衛星の推進剤に使われるヒドラジンは、無色透明でアンモニアに似た刺激臭のある液体。吸い込む肺水腫を引き起こす恐れがある他、眼に入ると失明する危険性もある[読売新聞,第47379号,2008.1.28.]。

備考 ある日突然、打ち上げた衛星が軌道を外れ、落下してくる。それには有害なhydrazineが大量に積まれており甚だ危険だといわれたとしても、それじゃどうすればいいんだとしかいいようがないじゃないか。しかも何処に落ちるか判らないなんぞといわれたのでは立つ瀬がない。しかし、完全に費消する量を積んでおけばいいのに、何故余分な量を積み込んでいるのか。最も計算通り軌道を遊行するのではなく、なかには勝手な判断でやめる奴が出てくるのかもしれないが、今回の衛星みたいに宇宙で爆破するなんてことを繰り返していると、それこそ宇宙が塵だらけということになりかねないが、果たして衛星を打ち上げているお国の方々はどうされるのであろうか。
文献

1)14303の化学商品;化学工業日報社,2003
2)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005
3)白川 充・他共訳:薬物中毒必携 第2版;医歯薬出版株式会社,1989
4)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001

調査者 古泉秀夫 分類 63.099.HYD 記入日 2008. 5.8.