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『インターネットでの薬の購入』

火曜日, 12月 23rd, 2008

魍魎亭主人

 

H19.1.11.「インターネットで漢方薬を買ったのですが」(患者・電話)

手足の冷えとシモヤケのため、薬局からインターネットで漢方薬(当帰四逆加呉茱萸生姜湯顆粒)を4週間分購入した。3週間服用したところ、おなかが張ってきたので、副作用かどうかを確認しようとメールで問い合わせをしたところ、「貴方は膠原病でアレルギーもあるので附子を使え」という返事が来た。
副作用かどうか、どう対応すればよいか(服用をやめるべきか、量を少なくすればよいのか)を聞きたかったので、再度メールで問い合わせをしたが、最終的には「あなたとはメールの遣り取りはしないので、近くの漢方薬局に行くように」との旨の返事が来た。
こちらの質問には答えていないし、薬局の対応として、あまりに不親切と思う。薬剤師会から注意をしていただきたい。

[事務局対応]会員であれば指導するよう伝える [薬事新報,第2493:1039(2007)]。

 

OTC薬の『当帰四逆加呉茱萸生姜湯顆粒』を購入したのであれば、何でインターネットで購入したのか、その辺のところがよく分からない。あくまで医薬品は対面購入が基本で、種々の疑問点をぶつけて最終的に製品を選択するという方法をとるべき物である。その患者の疑問に、的確に回答するあるいは説明するためにこそ薬剤師が薬局にいる意味がある訳である。

更にお訊ねしたいのは、その薬の箱の中に添付文書は、入っていなかったのかということである。現在、添付文書という正しい呼称が専ら使われているが、従来は効能書きの一部を弾いて『能書』といわれており、場合によっては箱に納めてあるから『納書』、瓶に巻いてあるから『巻紙』等といわれていたが、『添付文書』は薬を使用する際の重要な仕様書なのである。

次に示すのは医療用医薬品の『当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス細粒』の添付文書の一部であるが、OTC薬の添付文書と内容的にはさほど掛け離れていないはずである。

本薬1日量(7.5g)中

日局 当帰            3.0g
日局 桂皮            3.0g
日局 木通            3.0g
日局 細辛            2.0g
日局 呉茱萸          2.0g
日局 甘草            2.0g
日局 芍薬            3.0g
日局 生姜            1.0g
日局 大棗            5.0g

上記の混合生薬より抽出した当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス粉末4,200mgを含有する。添加物として日局ステアリン酸マグネシウム、日局軽質無水ケイ酸、日局結晶セルロース、日局乳糖、含水二酸化ケイ素を含有する。
なお、『日局』とは、日本薬局方に収載されていることを意味する。

効能又は効果:手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなり易いものの次の諸症:しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛

用法及び用量:通常、成人1日7.5gを2-3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

使用上の注意[慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)]

1.著しく胃腸の虚弱な患者[食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等があらわれることがある。]
2.食欲不振、悪心、嘔吐のある患者[これらの症状が悪化するおそれがある。]

*重要な基本的注意

1.本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。

2.本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること。

3. 他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。

*相互作用[併用注意(併用に注意すること)]

薬剤名等

(1)カンゾウ含有製剤
(2)グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤
(3)ループ系利尿剤
フロセミド
エタクリン酸
(4)チアジド系利尿剤
* トリクロルメチアジド

臨床症状・措置方法:偽アルドステロン症があらわれやすくなる。また、低カリウム血症の結果として、ミオパシーがあらわれやすくなる。(「重大な副作用」の項参照)
機序・危険因子:*グリチルリチン酸及び利尿剤は尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が促進されることが考えられる。

副作用(副作用等発現状況の概要)

本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である。

重大な副作用

1.*偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

2. *ミオパシー:低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

*その他の副作用

過敏症注1) (頻度不明) : 発疹、発赤、そう痒等

消化器(頻度不明):食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等

注1) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。

高齢者への投与:一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与:*妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

小児等への投与:*小児等に対する安全性は確立していない[使用経験が少ない]。

投書者がいう『お腹が張ってきた』という表現に直接該当する表記は添付文書に見られないが、『胃部不快感』がそれに当たるものではないかと思われる。添付文書中の症状標記は、医療の現場で実際に発現した副作用を報告する医師の標記のまま書くことになっており、『胃部不快感』の一言で片付けている可能性が考えられる。

従って『胃部不快感』を単に気持ちが悪いと取るか、胃が重苦しく感じるとか、胃の中に何か入っているような感じとか、いわゆる抽象的な患者の訴えが、この一言で現されていると取るかで、添付文書には記載がないという判断になり、返事が出来なかったとも考えられる。

しかし、最初から行きつけの薬局で、対面購入していれば、このような問題は起こらなかったといえる。

1)カネボウ当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)エキス細粒添付文書, 2005年9月改訂 (第2版、薬事法改正に伴う改訂)

 

(2008.12.22.)

ネット販売団体

火曜日, 12月 23rd, 2008

    魍魎亭主人

改正薬事法の施行日が迫ってきたが、医薬品のインターネット販売を展開する業界団体『日本オンラインドラッグ協会』が、厚生労働省の提示した省令案に反発するコメント発表した[リスファックス,5192号,H20.9.18.]。

厚生労働省が省令案で、カタログ・インターネット販売を『郵便等販売』と定義づけ、第3類OTC薬の販売に限定した事による。更に郵便等販売を実施する場合は、予め店舗所在地や販売方法を都道府県知事に届け出る事になっている。

これに対し『日本オンラインドラッグ協会』は、「現在は可能な解熱鎮痛剤、風邪薬、胃腸薬など大半の医薬品は、今後一切(ネットで)購入できなくなることを意味する」と指摘。「実態にそぐわない規制強化で、協会としてとうてい納得できるものではない」としている。

『日本オンラインドラッグ協会』があること事態驚いたが、それ以上にネットで解熱鎮痛薬や風邪薬を販売することの意味が些か解り難い。解熱鎮痛薬も風邪薬も症状が出れば、直ちに服用しなければならない薬であって、ネットで発注して、例え次の日に入手できたとしても間に合わない。第一OTC薬とはいえ、解熱鎮痛薬も風邪薬も症状を確認して適切な薬を選択する助言をする役割を販売者は担っているのではないか。ネット販売では購入者の顔が見えない状況下で販売するのであって、如何にセルフメディケーションとはいえ、問題があるのではないか。

解熱鎮痛薬も風邪薬も全く副作用がないわけではない。更に通常の副作用以外に、場合によっては重篤な副作用が発現する可能性も完全に否定されているわけではない。そのような危険性のある薬を販売するのはあくまで“対面販売”が基本である。

ところで“対面販売”が原則であると書きかけて止めたが、何時頃から“原則”は守らなくてもいいことだというように解釈が変化したのか。原則は守ることが基本であり、原則が付いているからいい加減でいいというのは納得がいかない。

   (2008.12.22.)