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「数珠玉と鳩麦について」

日曜日, 4月 29th, 2018

KW:植物・じゅずだま・数珠玉・はとむぎ・鳩麦・センコク・川穀・シコクムギ・朝鮮麦・唐麦・ヨクベイ・薏米・イベイ・苡米・イニン・苡仁・薏苡仁・ヨクイニン

Q:数珠玉と鳩麦の相違についてまた、数珠玉の毒性について

A:次の通りである。

ハトムギ(はとむぎ、鳩麦)


別名:センコク(川穀)、シコクムギ、朝鮮麦、唐麦。ヨクベイ(薏米)、イベイ(苡米)、イニン(苡仁)
漢名:薏苡仁(ヨクイニン=種子)
分類:イネ科ジュズダマ属。
学名:Coix ma-yuen Roman.。Coix lachryma-jobi var.ma-yuen。
ハト麦で鳩の食う麦の意とされる。インドシナ原産(ベトナム及び中国原産)。古くに渡来し、各地の畑で薬用、食用に栽培される1年草。茎は直立分枝(茎は叢生)し、高さ1-1.5m。葉は互生し細長い皮針形で先端は尖り、下部は鞘となる。夏から秋、葉腋から花穂数個を垂れ下げる。下部の1個の雌花穂は、硬質の包に包まれ、内に3花があり、うち2個は退化小穂。7-8月に葉腋の軸に数個の花穂を下向きに出す。雄花は花穂の先端に纏まって付く。果は楕円形で、熟すと鞘は褐色を帯び、縦に縞があり硬くなるが、数珠玉ほどではない。中に穎果(エイカ)が一つあり、噛むと甘く歯間に粘着する。
薬用部:薬用部分は種子の皮を除いた穎果、根。穎果には他の五穀との比較で最高に蛋白質の量が多く、有用なアミノ酸にも富んでおり、薬という形より栄養に富んだ穀物として、米と一緒に炊いたり餅等として食用とされた。
成分:種子、根に含まれるコイクソールは動物実験でアミノピリンに優る鎮痛・消炎・解熱作用が認められており、カフェインに拮抗し、中枢神経系を抑制する。また横紋筋弛緩作用があることから5-10%水煎液を神経痛、関節リュウマチの除痛に応用された。その他、コイクセラノイドには抗腫瘍作用があると云われている。その他、澱粉52%、蛋白質18%、脂肪7%、カンペステロール、スティックマステロール、脂肪酸エステルのコイキセノライドが含まれているとする報告も見られる。
中医学では適応として利尿、消炎、鎮痛、排膿の効果があるとして種々の処方に配合されている。
採取:9月から10月に刈り取り、果実だけを選別し、一番外側の苞皮、次いで果皮を手で剥いで種子だけにする。1週間ほど日干しで乾燥させたものが生薬の薏苡仁になる。
薏苡仁の効果:薏苡仁は健胃、解熱、利尿、解毒の効果があるとされる。慢性胃腸病、潰瘍、下痢、リウマチ・神経痛の痛み、またイボ取りと美肌保全効果があるとされる。
薏苡仁の用法:薏苡仁20-30gを1日量として水1Lで番茶を作るように煎じ、沸騰した後弱火で10分ほどに詰める。煎じ液は御茶代わりに随時飲用する。また、米でお粥を作るときに薏苡仁60-80gを加えてお粥を作り、1日1回半月程度続けて食べるとイボは取れる。但し、妊婦の場合、便秘がちになるので用いない。

数珠玉 (ジュズダマ)


別名:ズズゴ、トウムギ。
分類:イネ科ジュズダマ属。
学名:Coix lachryma-jobi L.
数珠玉で主に球形の実に基づくとされる。熱帯アジア原産。多年草で雌雄は同株上。ハト麦に極く近い品種であるが、果実が熟すと極めて硬いこと、雌花の穂が上向きであるので区別が出来る。栽培から野生化し、各地の水場などに群生する大形の多年草。茎は分枝し束生、高さ1-1.5m。葉は互生、細長い皮針形、硬い洋紙質、下部は大きな鞘となる。初秋、葉腋から長短不同の柄を持つ穂状花穂を出し、雌小穂は硬質の包に包まれ1花のみ、両側は退化小穂。雄小穂は2花からなる。
本品の穎果は貧弱で、ハト麦の代用にはならない。

1) 牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 I;北隆館,2003
2)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
3)水野瑞夫・他:くらしの薬草と漢方薬-ハーブ・民間薬・生薬-新日本法規,2014
4)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版株式会社,2011

                   [035.1.COI:2018.4.28.古泉秀夫]