Archive for 4月 17th, 2018

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「サクラソウの毒性」□□□□□□□□□□□□□

火曜日, 4月 17th, 2018

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対象物□□□□□□□□□□□□□□□□

和名:桜草(サクラソウ)
学名:Primula ieboldii
別名:ニホンサクラソウ(日本桜草。桜に似た花形に基づく)。
分類:サクラソウ科サクラソウ属。
漢名:桜草根(オウソウコン)。

成 分□□□□□□□□□□□□□□□□

全草に桜草サポニン、フラボンを含む。ベンゾキノン系化合物であるprimin。
saponinに利尿、去痰、鎮咳作用が有り、去痰・鎮咳薬として用いられる。またflavoneには消炎作用が有り、創傷、浮腫等に外用するが、桜草saponinには溶血作用もあるため、連用する場合には専門家の指導の下に使用する。
[使用方法]去痰・鎮咳には桜草根1日量10-15gに300mLの水を加え、半量になるまで煮詰め、3回に分けて服用する。

一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□image

分布:桜草はプリムラの仲間で、北海道南部、本州、九州及び朝鮮半島、中国、ダフリア、アムール、ウスリー、ウダに分布し、原野、低湿地に生え、広く栽培される多年草。主に北半球の温帯・寒帯や高地に約200種があるとされ、日本には14種が自生し、その代表種が桜草である。学名はプリムラ・シーボルディといい、我国では四国と沖縄を除いて各地に分布している。
形態:根茎は短く、匍匐する。葉は根元に集まり、長柄で卵形から卵状広楕円形、長さ4-10cm、鈍頭で縁に浅い欠刻と不整歯牙がある。花期は4-5月。葉間から高さ15-40cmの花茎を直立し、淡紅色花を7-20個、散形状に着花。
薬用部分:根、根茎。開花中の地下部を刈り取り、水洗いして日干しにする。

毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□

有毒部位:葉・花柄・萼片。葉や茎等の線毛に含まれる。
桜草皮膚炎:有毒部位に触れると、痒みや水脹れ等のかぶれ、皮膚炎になることがある。また、桜草は高率に接触性皮膚炎(かぶれ)を惹起する。接触性皮膚炎を惹起する桜草としてトキワサクラソウ(学名:プリムラ・オブコニカ:Primula obconica)と西洋サクラソウ(プリムラ・マラコイデス:Primula malacoides)の両種が挙げられており、原因物質としてベンゾキノン系化合物であるpriminの含有が云われている。

症 状□□□□□□□□□□□□□□□□image

接触性皮膚炎は、接触物質の毒性によって発現する。常磐桜による接触性皮膚炎はpriminによるとされている。急性型の発症は、灼熱感、疼痛等の強い自覚症状を伴い、紅斑、浮腫、水疱の形成が見られる。慢性型は表皮の肥厚が著明で、苔癬化の傾向を示し、経過が長い。痒みが強いが、表皮内浮腫や水疱形成は見られない。

処 置□□□□□□□□□□□□□□□□

充分な問診により接触原を調査・推定し、原因物質を避けることが重要である。薬剤は外用剤療法が主となり、掻痒に対しては、止痒薬を塗布する。症状が強い場合は、副腎皮質ステロイド外用薬のvery strongないしstrongestを用いる。

事 例□□□□□□□□□□□□□□□□

接触性皮膚炎に分類される昭和55年以降数年間の植物性皮膚炎の急激な増加は園芸ブームによるトキワザクラの栽培を反映していると考えられる。

備 考□□□□□□□□□□□□□□□□

荒川流域の桜草は、元は秩父山中などから流れ着き、繁殖したものだと考えられている。この地は江戸時代から浮間ヶ原と呼ばれ、現在の戸田、志村、川口、田島ヶ原等とともに桜草の自生地として有名であったが、嘗て荒川沿岸の各地に大群落を造っていた桜草も、現在ではさいたま市の田島ヶ原に昔の面影を僅かにとどめるのみとなっている。image
荒川の堤防に立って浮間を一望すると、昔荒川の本流があった浮間ヶ池を除いては宅地、工場地に変わってしまい、江戸時代に桜草の群生地であったと云うことは、想像することは難しい。
桜草は、江戸時代に育種が進み、数百に及ぶ品種が作られたと云われる。2005(平成17)年時点で、297品種が認定されているとされる。江戸時代の中ごろから、荒川の原野に野生する桜草から本格的な栽培が始まり、種子まきを繰り返すうちに、白、桃、紅、紫、絞りなどの色変わりや、大小さまざまな花形の変わり品種が生まれ、名称が付けられた。
トキワサクラ(常葉桜)。学名:プリムラ・オブコニカ:Primula obconica。原産地:中国西部-ヒマラヤ。主な開花期:12月-3月。別名:しきざきさくらそう(四季咲き桜草)。通称:オブコニカ。和名:化粧桜。桜草の中には局所刺激作用の強いものとして本種が知られている。本種は中国産で開花期が長いので好んで観賞植物とされる。本種はその腺毛に含まれるプリミンという物質のため、刺激性を発揮する。本種は葉の表面に白い粉状の物質がついていることがある。これがかぶれの原因物質で、ベンゾキノン系化合物であるプリミン(primin、2-methoxy-6-pentylbenzoquinone)である。葉の毛などに触れると皮膚の弱い人はかぶれる(サクラソウ皮膚炎)ことがあるので注意が必要である。

文 献□□□□□□□□□□□□□□□□

1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 I;北隆館,2000
2)浮間ヶ原桜草圃場;東京都北区/浮間ヶ原桜草保存会,刊行物登録番号25-3-027image
3)藤井伸二・監修:色で見わけ五感で楽しむ-野草図鑑;ナツメ社,2014
4)手塚千史・訳:大地の薬-ヨーロッパの薬用植物の神話、医療用途、料理レシピ-;あすむく,1996
5)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
6)大塚恭男:東西生薬考;創元社,1993
7)舟山信次:毒と薬の科学-毒から見た藥・薬から見た毒;朝倉書店,2007
8)接触皮膚炎診療ガイドライン:日皮会誌,119(9):1757-1793(2009)(平成21年)
9)山内俊一・監修:主要疾患・治療と薬剤ハンドブック;薬事新報社,2009

調査者:古泉秀夫 分類:63.099PRI 記入日:2018.2.18.