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「メチルフェニデート塩酸塩について」

土曜日, 8月 29th, 2015

 

KW:薬名検索・ADHD・注意欠陥・attention-deficit ・多動性障害・hyperactivity disorders・コンサータ錠・メチルフェニデート塩酸塩・methylphenidate hydrochloride・ストラテラカプセル・アトモキセチン塩酸塩・atomoxetine hydrochloride

Q:ADHDの薬について。学校の先生から服用を勧められているが、子供に薬を服ませるのは心配があるので。

A:『小児期における注意欠陥(attention-deficit )/多動性障害(hyperactivity disorders)(AD/HD) 』を適応とする薬として「コンサータ錠(ヤンセン)」・「ストラテラカプセル(イーライリリー)」が市販されている。
コンサータ錠(ヤンセン)

1錠中にメチルフェニデート塩酸塩(methylphenidate hydrochloride)18mg・27mgを含有する製剤である。

本品の小児投与量は18mgを初回服用、18-45mgを維持量として、1日1回朝(適宜増減)服用する。
本品の服用上の注意として「増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。但し、1日用量は54mgを超えないこと。」の記載がされている。

AD/HD患児を対象として国内で実施した第II相試験、第III相試験及び長期投与試験の総症例216例中、副作用(臨床検査値異常を含む)は174例(80.6%)470件に認められた。その主なものは、食欲不振72例(33.3%)、初期不眠症29例(13.4%)、体重減少26例(12.0%)、食欲減退19例(8.8%)、頭痛18例(8.3%)、不眠症13例(6.0%)、腹痛12例(5.6%)、悪心12例(5.6%)、チック11例(5.1%)、発熱11例(5.1%)であった。(承認時)

ストラテラカプセル (イーライリリー)

1Cap.中にアトモキセチン塩酸塩(atomoxetine hydrochloride)5mg・10mg・25mgを含有する製剤が市販されている。

本品の小児投与量は1日0.5mg/kgより開始し、その後1日0.8mg/kgとし、更に1日1.2mg/kg迄増量した後、1日1.2-1.8mg/kgで維持。
投与に関連した注意事項として、「1.6歳未満の患者における有効性及び安全性は確立していない。2.AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM*)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。」の記載がされている。

小児を対象とした国内臨床試験における安全性評価対象例278例中209例(75.2%)に副作用が報告され、主なものは頭痛(22.3%)、食欲減退(18.3%)、傾眠(14.0%)、腹痛(12.2%)、悪心(9.7%)であった。
日本人及びアジア人の成人を対象とした臨床試験における安全性評価対象例392例(日本人患者278例を含む)中315例(80.4%)に副作用が報告され、主なものは悪心(46.9%)、食欲減退(20.9%)、傾眠(16.6%)、口渇(13.8%)、頭痛(10.5%)であった。(成人適応追加時)

コンサータ錠には次の警告が指示されている。「警告 本剤の投与は、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の診断、治療に精通し、薬物依存を含む本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ行うとともに、それらの薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤を行うこと

また、適応上の注意として次の指示がされている。
1)6歳未満、13歳以上の小児及び成人における有効性及び安全性は未確立。
2)18歳未満で本剤での治療を開始した患者において、18歳以降も継続して投与する場合は、治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に、定期的に有効性・安全性を評価し、有用性が認められない場合には中止を考慮し、漫然と投与しない。
3)AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM*)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。
                                    *Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders

その他、用法・用量に関する注意事項として、次の指示がされている。
1.本剤は中枢神経刺激作用を有し、その作用は服用後12時間持続するため、就寝時間等を考慮し、午後の服用は避けること。
2.初回用量:本剤投与前に他のメチルフェニデート塩酸塩製剤を服用している場合には、その用法・用量を考慮し、本剤の初回用量を18-45mgの範囲で決定する。ただし、本剤若しくは他のメチルフェニデート塩酸塩製剤の服用を1ヵ月以上休薬した後に本剤を服用する場合は、18mgを初回用量とすること。
3.本剤は徐放性製剤であるため分割して投与することは適切でなく、本剤は18mg錠と27mg錠の2種類のみで18mgが最小単位であるため、9mg単位の増減量が必要な場合には錠剤の種類を変更して投与すること。

本品の使用に際し、禁忌として次の事項が指示されている。
1.過度の不安、緊張、興奮性のある患者[中枢神経刺激作用により症状を悪化させることがある。]
2.緑内障のある患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]
3.甲状腺機能亢進のある患者[循環器系に影響を及ぼすことがある。]
4.不整頻拍、狭心症のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]
5.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
6.運動性チックのある患者、Tourette症候群(トウーレット症候群)又はその既往歴・家族歴のある患者[症状を悪化又は誘発させることがある。]
7.重症うつ病の患者[抑うつ症状が悪化するおそれがある。]
8.褐色細胞腫のある患者[血圧を上昇させるおそれがある。]
9.モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤を投与中又は投与中止後14日以内の患者[「相互作用」の項参照]

本品の副作用として、次の事項が添付文書に記載されている。

重大な副作用


1.剥脱性皮膚炎(頻度不明):広範囲の皮膚の潮紅、浸潤、強いそう痒等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2.狭心症(頻度不明):症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
3.悪性症候群[Syndrome malin](頻度不明):発熱、高度の筋硬直、CK(CPK)上昇等があらわれることがあるので、このような場合には体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。
4.脳血管障害[血管炎、脳梗塞、脳出血、脳卒中](頻度不明):症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用
1.感染症:(5%未満)鼻咽頭炎、鼻炎、胃腸炎、ヘルペスウイルス感染、インフルエンザ、麦粒腫、中耳炎、咽頭炎。(頻度不明):上気道感染、副鼻腔炎。
2.血液障害:(頻度不明)白血球減少症、汎血球減少症、血小板減少症、血小板減少性紫斑病。
3.免疫系障害:(5%未満)季節性アレルギー。免疫系障害(頻度不明):アナフィラキシー反応、過敏症反応、耳介腫脹、水疱形成、表皮剥脱。
4.代謝障害:(5%以上)食欲不振、食欲減退。(5%未満):体重増加不良、食欲亢進。
5.精神障害:(5%以上)初期不眠症、不眠症、チック。(5%未満):気分変動、神経過敏、無感情、抑うつ気分、抜毛、早朝覚醒、中期不眠症、睡眠障害。(頻度不明):攻撃性、不安、感情不安定、うつ病、気分動揺、怒り、激越、過覚醒、涙ぐむ、錯乱状態、失見当識、幻覚、幻聴、幻視、躁病、落ち着きのなさ、リビドー減退、パニック発作、歯ぎしり、緊張。神経系障害:(5%以上):頭痛。(5%未満):浮動性めまい、体位性めまい、自律神経失調、ジスキネジー、鎮静、緊張性頭痛。(頻度不明):傾眠、精神運動亢進、振戦、痙攣、大発作痙攣、錯感覚、嗜眠。
6.眼障害:(5%未満)アレルギー性結膜炎、近視、眼そう痒症、結膜充血。(頻度不明):霧視、複視、散瞳、視覚障害、ドライアイ。
7.耳障害:(5%未満)耳痛。(頻度不明):回転性めまい。
8.心臓障害:(5%未満)上室性期外収縮、徐脈。(頻度不明):頻脈、動悸、狭心症、期外収縮、上室性頻脈、心室性期外収縮。
9.血管障害:(5%未満)血圧変動。血管障害(頻度不明):高血圧、レイノー現象、ほてり。
10.呼吸器障害:(5%未満)咳嗽、アレルギー性鼻炎、喘息、上気道の炎症、咽頭紅斑、鼻漏。(頻度不明):咽喉頭疼痛、呼吸困難。
11.胃腸障害:(5%以上)腹痛、悪心。(5%未満):嘔吐、下痢、胃不快感、上腹部痛、異常便、便秘、口内炎、歯肉腫脹。(頻度不明):口内乾燥、口渇、消化不良。
12.皮膚障害:(5%未満)発疹、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、そう痒症、接触性皮膚炎。(頻度不明):脱毛症、斑状皮疹、紅斑、多汗症。
13.筋骨格系障害:(5%未満)関節痛、四肢痛。(頻度不明):筋痛、筋攣縮、筋緊張、筋痙縮。
14.生殖系障害:(5%未満)精巣上体炎、陰茎癒着。(頻度不明):勃起不全。
15.全身障害:(5%以上)発熱。(5%未満):易刺激性、倦怠感。(頻度不明):疲労、胸痛、胸部不快感、異常高熱、無力症。
16.臨床検査:(5%以上)体重減少。(5%未満):血圧上昇、最低血圧上昇、脈拍異常、QT延長、QTc延長、異常Q波、白血球数減少、好中球数減少、好酸球数増加、血中アミラーゼ増加、CK(CPK)増加、ALT(GPT)増加、AST(GOT)増加、肝機能異常、トリグリセリド増加、血糖増加、血中尿素増加、血中尿酸増加、蛋白尿、尿中ケトン体陽性、尿潜血。(頻度不明):心雑音、ALP増加、血中ビリルビン増加、肝酵素上昇、血小板数減少、白血球数異常。
17.傷害、中毒:(5%未満)足骨折、手骨折。

また『重要な基本的注意』として、次の指示が添付文書中に見られる。
1.本剤を投与する医師又は医療従事者は、投与前に患者及び保護者又はそれに代わる適切な者に対して、本剤の治療上の位置づけ、依存性等を含む本剤のリスクについて、十分な情報を提供するとともに、適切な使用法について指導すること
2.小児に中枢神経刺激剤を長期投与した場合に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。中枢神経刺激剤の小児の成長への影響は確立していないが、本剤の投与が長期にわたる場合には患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくない時は投与を中断すること。[「小児等への投与」の項参照]
3.本剤を長期間投与する場合には、個々の患者に対して定期的に休薬期間を設定して有用性の再評価を実施すること。また、定期的に血液学的検査を行うことが望ましい。
4.患者の心疾患に関する病歴、突然死や重篤な心疾患に関する家族歴等から、心臓に重篤ではないが異常が認められる、若しくはその可能性が示唆される患者に対して本剤の投与を検討する場合には、投与開始前に心電図検査等により心血管系の状態を評価すること。
5.心血管系に対する影響を観察するため、本剤の投与期間中は、定期的に心拍数(脈拍数)及び血圧を測定すること。
6.まれに視覚障害の症状(調節障害、霧視)が報告されている。視覚障害が認められた場合には、眼の検査を実施し、必要に応じて投与を中断又は中止すること。
7.めまいが発現するおそれがあるため、自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。
8.攻撃性はAD/HDにおいてしばしば観察されるが、本剤の投与中にも攻撃性の発現や悪化が報告されている。投与中は、攻撃的行動の発現又は悪化について観察すること。
9.通常量の本剤を服用していた精神病性障害や躁病の既往がない患者において、幻覚等の精神病性又は躁病の症状が報告されている。このような症状の発現を認めたら、本剤との関連の可能性を考慮すること。投与中止が適切な場合もある。

尚、小児への投与に関し、次の注意が指示されている。
小児等への投与
1.低出生体重児、新生児、乳児、6歳未満の幼児、並びに国内では13歳以上の小児に対する安全性は確立していない。[6歳未満の患者及び国内では13歳以上の患者を対象とした試験は、実施されていない。]
2.長期投与時に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。

Tourette症候群:トゥーレット障害又はトゥーレット症候群とは、チックという一群の神経精神疾患のうち、音声や行動の症状を主体とし慢性の経過をたどるものを指す。小児期に発症し、軽快・増悪を繰り返しながら慢性に経過する。
Tic障害:チック症とは、ピクピクっとした素早い動きなどが、本人の意思とは関係なく、繰り返しおきてしまうものをいう。一番多いのは瞬きで、そのほかにも、肩をぴくっと動かす、頭をふる、顔をしかめる、口を曲げる、鼻をフンフンならす等、種々の状態が見られる。また声を出すチックも見られる。

ストラテラカプセルの投与禁忌として次の指示が見られる。
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者。
3.重篤な心血管障害のある患者[血圧又は心拍数を上昇させ、症状を悪化させるおそれがある。
4.褐色細胞腫又はその既往歴のある患者[急激な血圧上昇及び心拍数増加の報告がある。]
5.閉塞隅角緑内障の患者[散瞳があらわれることがある。]

用量・用量に関する注意として次の指示がされている。
1.CYP2D6阻害作用を有する薬剤を投与中の患者又は遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、本剤の血中濃度が上昇し、副作用が発現しやすいおそれがあるため、投与に際しては忍容性に問題がない場合にのみ増量するなど、患者の状態を注意深く観察し、慎重に投与すること。
2.中等度(Child-Pugh Class B)の肝機能障害を有する患者においては、開始用量及び維持用量を通常の50%に減量すること。また、重度(Child-Pugh Class C)の肝機能障害を有する患者においては、開始用量及び維持用量を通常の25%に減量すること。

重要な基本的注意
1. **本剤を投与する医師又は医療従事者は、投与前に患者(小児の場合には患者及び保護者又はそれに代わる適切な者)に対して、本剤の治療上の位置づけ及び本剤投与による副作用発現等のリスクについて、十分な情報を提供するとともに、適切な使用方法について指導すること。
2.本剤を長期間投与する場合には、必要に応じて休薬期間を設定するなどして、定期的に有用性の再評価を実施すること。
3.臨床試験で本剤投与中の小児患者において、自殺念慮や関連行動が認められているため、本剤投与中の患者ではこれらの症状の発現について注意深く観察すること。
4.攻撃性、敵意はAD/HDにおいてしばしば観察されるが、本剤の投与中にも攻撃性、敵意の発現や悪化が報告されている。投与中は、攻撃的行動、敵意の発現又は悪化について観察すること。
5.通常量の本剤を服用していた精神病性障害や躁病の既往がない患者において、幻覚等の精神病性又は躁病の症状が報告されている。このような症状の発現を認めたら、本剤との関連の可能性を考慮すること。投与中止が適切な場合もある。
6.眠気、めまい等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
7.心血管系に対する影響を観察するため、本剤の投与開始前及び投与期間中は定期的に、血圧及び心拍数(脈拍数)を測定すること。
8.本剤は血圧又は心拍数に影響を与えることがあるので、本剤を心血管障害のある患者に投与する際は、循環器を専門とする医師に相談するなど、慎重に投与の可否を検討すること。また、患者の心疾患に関する病歴、突然死や重篤な心疾患に関する家族歴等から、心臓に重篤ではないが異常が認められる、若しくはその可能性が示唆される患者に対して本剤の投与を検討する場合には、投与開始前に心電図検査等により心血管系の状態を評価すること。
9.小児において本剤の投与初期に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。本剤の投与中は患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくないときは減量又は投与の中断等を考慮すること。

また慎重投与として、次の指示が添付文書に記載されている。
1.肝機能障害のある患者[血中濃度が上昇するおそれがある。]
2.腎機能障害のある患者[血中濃度が上昇するおそれがある。]
3.痙攣発作又はその既往歴のある患者[痙攣をおこすことがある。]
4.心疾患(QT延長を含む)又はその既往歴のある患者[症状を悪化又は再発させるおそれがある。]
5.先天性QT延長症候群の患者又はQT延長の家族歴のある患者[QT延長を起こすおそれがある。]
6.高血圧又はその既往歴のある患者[症状を悪化又は再発させるおそれがある。]
7.脳血管障害又はその既往歴のある患者[症状を悪化又は再発させるおそれがある。]
8.起立性低血圧の既往歴のある患者[本剤の投与による起立性低血圧の報告がある。]
9.下記の精神系疾患のある患者[行動障害、思考障害又は躁病エピソードの症状が悪化するおそれがある。]-精神病性障害、双極性障害
10. 排尿困難のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]

重大な副作用として、次の事項が添付文書に記載されている。
1.肝機能障害、黄疸、肝不全(頻度不明):肝機能検査値の上昇を伴う肝機能障害、黄疸、肝不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
2.アナフィラキシー様症状(頻度不明):血管神経性浮腫、蕁麻疹等のアナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

その他の副作用[副作用が認められた場合には、必要に応じ、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと。]次の記載が添付文書に見られる。
消化器:(5%以上)悪心、食欲減退、腹痛、嘔吐、便秘、口渇。(1-5%未満):下痢、消化不良、口内乾燥。(頻度不明):鼓腸。
精神神経系:(5%以上)頭痛、傾眠、浮動性めまい。(1-5%未満):体位性めまい、睡眠障害、易刺激性、不快気分、不眠症。(1%未満):早朝覚醒型不眠症、気分変化、振戦、抑うつ気分、錯感覚、不安、感覚鈍麻、幻覚を含む感覚障害、うつ病、攻撃性、リビドー減退、チック、激越、落ち着きのなさ。(頻度不明):びくびく感。
過敏症:(1-5%未満)そう痒症。(1%未満): 発疹、蕁麻疹 。
循環器(5%以上):動悸。(1-5%未満):頻脈、血圧上昇、心拍数増加 。(1%未満):心電図QT延長、失神。(頻度不明):レイノー現象、潮紅。
皮膚:(1-5%未満)多汗症。(1%未満):皮膚炎。
泌尿・生殖器:(1-5%未満)排尿困難、勃起不全。(1%未満):生殖器痛、尿閉、月経困難症、射精障害、不規則月経、前立腺炎、頻尿。(頻度不明):持続勃起、勃起時疼痛、射精不能、精巣痛、オルガズム異常、尿意切迫。
その他:(5%以上)体重減少。(1-5%未満):胸痛、無力症、疲労、ほてり、悪寒、味覚異常。(1%未満):擦過傷、結膜炎、胸部不快感、末梢冷感、冷感、筋痙縮。その他(頻度不明):散瞳。
国内外における臨床試験の併合解析より、以下のような結果が得られた。
CYP2D6活性欠損(PM)患者において、2%以上かつCYP2D6通常活性(EM)患者に比べ2倍以上の発現率が認められ、かつ統計学的有意差をもって多く認められた事象:早朝覚醒、振戦、失神、擦過傷、結膜炎、散瞳。

methylphenidate hydrochlorideの作用機序 methylphenidate hydrochlorideの作用機序
メチルフェニデートは、ドパミン及びノルアドレナリントランスポーターに結合し再取り込みを抑制することにより、シナプス間隙に存在するドパミン及びノルアドレナリンを増加させて神経系の機能を亢進するものと考えられているが、AD/HDの治療効果における詳細な作用機序は十分に解明されていない。 臨床における有用性には神経終末のノルアドレナリントランスポーターに対する選択的阻害作用が関与していることが可能性としては考えられるものの、明確な機序は不明である。

AD/HDの病態

前頭前野・眼窩野や線条体におけるdopamine作動系神経細胞の機能問題により実行機能や報酬系機能に障害を生じ、注意のコントロールと統合や自己の行動を抑制する機能に問題を来していると考えられる。

AD/HDの診断

DSM-IV-TRの診断基準

A.(1)か(2)のどちらか
(1)以下の不注意の症状のうち六つ(又はそれ以上)が少なくとも6ヵ月間持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しいもの:
<不注意>
(a)学業、仕事、又はその他の活動において、しばしば綿密に注意することが出来ない、又は不注意な間違いをする。
(b)課題又は遊びの活動で注意を集中し続けることがしばしば困難である。
(c)直接話しかけられた時にしばしば聞いていないように見える。
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、又は職場での義務をやり遂げることが出来ない(反抗的な行動、又は指示を理解できないためではなく)。
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
(f)(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、又は嫌々行う。
(g)課題や活動に必要なもの(例:おもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、又は道具)をしばしばなくしてしまう。
(h)しばしば外からの刺激によって直ぐ気が散ってしまう。
(i)しばしば日々の活動で忘れっぽい。

(2)以下の多動性-衝動性の症状のうち六つ(又はそれ以上)が少なくとも6ヵ月間持続したことがあり、その程度は不適応で、発達水準に相応しない:
<多動性>
(a)しばしば手足をそわそわと動かし、又は椅子の上でもじもじする。
(b)しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
(c)しばしば、不適切な状況で、余計に走り回り高いところへ上ったりする(青年又は成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない)。
(d)しばしば静に遊んだり余暇活動につくことが出来ない。
(e)しばしば“じっとしていない”、又はまるで“エンジンで動かされるように”行動する。
(f)しばしば喋りすぎる。
<衝動性>
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう。
(h)しばしば順番を待つことが困難である。
(i)しばしば人の話をさえぎったり、割り込んだりする(例:会話やゲームに干渉する)。
B.多動性-衝動性又は不注意の症状の幾つかが7歳以前に存在し、障害を引き起こしている。
C.これらの症状による障害が二つ以上の状況[例:学校(又は職場)と家庭]において存在する。
D.社会的、学業的、又は職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。
E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、又は他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安障害、解離性障害、又はパーソナリティ障害)ではうまく説明されない。

(診断基準の詳細はその他ICD-10を参照)。

AD/HDの治療方針[心理社会的対応と薬物療法の二つから成る]。

心理社会的対応では、環境調整と子供への対応を行う。環境調整では、子供に対する周囲の人の対処能力を高めることと、不適切な対応状況の改善を行う。具体的には、保護者や学校教師に対してAD/HDに関する知識やAD/HDのある子供への対応スキルを習得して貰うよう助言や指導を行う。

子供への対処スキルの基本は応用行動分析による行動変容技法である。AD/HDに限らず行動面の問題を示す発達障害のある子供に対応する上で、応用行動分析の知識とスキルは不可欠である。そうしたスキルを体系立てて保護者が学習するものとしてペアレントトレーニングという方法があり、その解説書は保護者・教師への助言に有用である。

子供への対応では、子供自身の対処能力の向上と心理面の安定を行う。AD/HDの特性を説明し自身に対する子供の理解を高める。特性をカバーする方法の習得、問題行動が起こりやすい場面での適切な行動の習得、年齢相当の集団活動の保障、学習が楽しいと感じられる体験の保障、気持ちを聞いて貰える場の設定などに関して、保護者や学校教師に助言、指導を行う。子供が適切な対人行動・集団行動を体系立てて学習する方法としてソーシャルスキルトレーニングがあり、地域の教育機関や学校の特別支援教育の中で行っている所があれば、そうした場を紹介する。

薬物療法は、心理社会的対応だけでは問題の改善が不十分な場合や、他児とのトラブルが絶えないなど早急に子供の行動の改善が望まれる場合に行われる。現在、我が国でAD/HDへの適応が承認されている薬は2剤のみで、コンサータ錠では食欲不振、頭痛、腹痛、不眠が、ストラテラカプセルでは頭痛、悪心、眠気、頭痛が生じやすい。

薬物療法は、心理社会的対応を行った後で、考えるべき手段である。従ってAD/HDの診断や治療に精通し、薬物依存のリスクなどについても十分に管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局で対応すべしとされており、医師の資格のない教師が、簡単に薬の服用を勧めるような発言をするのは、安易すぎると言わざるを得ない。

1) 高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012
2)コンサータ錠添付文書,2011.8.改訂
3)ストラテラカプセル添付文書,2012.8.改定
4)山口 徹・他総編集:今日の治療指針;医学書院,2011
5)高橋三郎・他訳:DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版;医学書院,2010

                   [011.1.ADHD:2012.12.13.古泉秀夫]

「フィゾスチグミン(エゼリン)について」

土曜日, 8月 29th, 2015

 

KW:薬理作用・エゼリン・フィゾスチグミン・physostigmini・eserine・カラバル豆・

Q:フィゾスチグミン(エゼリン)の性状及び毒性等について-特に後遺症について

A:フィゾスチグミン(physostigmini)について、次の報告がされている。
サリチル酸フィゾスチグミン(salicylate physostigmini):『毒薬』。[別名]サリチル酸エゼリン。乾燥した本品を定量するときサリチル酸フィゾスチグミン97.0-102.0%を含む。C15H21N3O2・C7H6O3=413.47。本品は白色-微黄色の結晶性又は結晶性の粉末で、臭いはない。本品はクロロホルムに溶け易く、エタノールにやや溶け易く、水にはやや溶け難く、エーテルに溶け難い。本品の水溶液(1→100)のpHは5.0-6.0である。本品は光又は空気によって徐々に赤色を呈する。融点:180-185°。極量:1回1mg、1日3mg。貯法:遮光した気密容器。水溶液中ではやや不安定で、長時間放置すると液は赤色を帯びる。特に熱、アルカリによって分解し易い。従って容器からアルカリが溶出するとき、液の着色は著しく速められる。
[本質]acetylcholinesterase阻害薬。
[来歴]フィゾスチグミンは1864年Jobst Hesseがアフリカ産Physostigma venenosum Balfourの種子のカラバル豆(Calabar bean)中に発見し、翌1865年Vee、Leveneは同原料から結晶を得、eserineと名付けた。両者は同一物で有り、現在においても二つの名称が用いられている。カラバル豆にはphysostigminiはは0.08-0.1%含有されているが、この他にgeneserine、eseramineの含有が報告されている。
[代謝]本品は胃腸管、粘膜及び皮下注射部位から速やかに吸収され、体内ではコリンエステラーゼにより加水分解される。皮下注射した場合、2時間後でその大部分が分解され、尿中に未変化体として殆ど排泄されない。
[薬効]コリンエステラーゼを可逆的に阻害してアセチルコリンの分解を阻止する。従って末梢では副交感神経興奮、自立神経節興奮、副腎髄質エピネフリン分泌増大、運動神経興奮時に現れる効果が重なって現れる。中枢神経系の興奮及び呼吸麻痺をも起こす。
[症状]唾液、胃液、気管支液などの分泌増大、縮瞳(長時間持続する)、眼内圧低下、調節痙攣(cyclospasm)、腸管運動亢進、少量では血圧上昇、大量では心機能の抑制と血圧低下等が見られる。骨格筋の線維性痙攣を起こす。クラーレの骨格筋弛緩作用には競合的に拮抗する。
[副作用]アレルギー性結膜炎、眼瞼縁炎などの過敏症、一過性の眼圧上昇が現れることが有り、吸収作用として、悪心、嘔吐、噯、胃腸障害、頭痛、発汗、発疹を起こすことがある。大量では心臓抑制、血圧降下、呼吸困難、痙攣を起こす。
[適用]本品の広範な薬理作用に基づき、治療用の用途も広い。筋肉内注射後局所から速やかに吸収され、消化管や膀胱の平滑筋を収縮させるので、術後の腸麻痺や排尿困難時に3mg
迄用いられる。重症筋無力症にも有効であるが、用量を増すと副作用も増大するため、眼科以外の適用はネオスチグミンに代わってきている。眼科においては0.2-1.0%溶液又は軟膏を緑内障の診断と治療、調節麻痺などに1日1-4回点眼薬として用い、虹彩炎には虹彩後癒着を防ぐためにアトロピンと交互に用いられる。

硫酸フィゾスチグミン(sulfate physostigmini):『毒薬』。[別名]硫酸エゼリン。乾燥した本品を定量するとき97.0%以上を含む。(C15H21N3O2)2・H2SO4=648.77。本品は白色-微黄色の結晶性の粉末で、臭いはない。本品はサリチル酸フィゾスチグミンに比し、著しく吸湿性である。十分に乾燥し、速やかに操作することが必要である。本品は又はethanolに極めて溶け易く、クロロホルムにやや溶け易く、エーテルに殆ど溶けない。本品の水溶液(1→100)のpHは4.0-5.5である。本品は吸湿性で光又は空気により徐々に赤色になる。融点143-146°。
[本質]副交感神経作用縮瞳薬。
[代謝]本品は胃腸管、粘膜、皮下注射部位から容易に吸収される。体内でコリンエステラーゼによりエステル結合が加水分解される。皮下注射すると2時間で大部分が分解し、尿中に排泄される未変化体は僅かである。
[配合変化]本品の水溶液は放置すると赤色を帯びる。桃色程度であれば、全く無効ではない。しかし、それ以上色が濃くなるに従って急速に効果を失う。溶出するアルカリにより遊離塩基が析出する。
physostigminiは副交感神経の興奮作用と骨格筋の収縮を起こす。これはコリンエステラーゼ(ChE)阻害作用によって、アセチルコリン(ACh)の分解を阻害するので、作用は可逆的である。このためコリン作動性効果を来たし、強い縮瞳作用及び眼圧の低下を来すため、緑内障の治療及びアトロピン散瞳の拮抗薬に用いる。一方、骨格筋においても主として運動神経末端において、AChの分解を阻止するため、骨格筋の収縮を起こし、d-tubocurarineによる筋弛緩に拮抗する。中毒症状は、意識に影響しないが、嘔吐、胃腸障害、縮瞳を起こし、更に大量の摂取は心臓抑制、血圧低下、呼吸困難、痙攣を来たし、呼吸麻痺によって死亡する。解毒薬としてはatropinが用いられる。
[吸収・排泄]胃腸管や粘膜、注射部位等より容易に吸収される。血漿コリンエステラーゼにより、エステル連鎖で加水分解される。尿中排泄は限られている。2時間以内に完全に代謝される。
[毒作用]振戦、蠕動亢進、括約筋の調節消失、極めて縮小した瞳孔、嘔吐、失神、四肢の冷え、筋肉攣縮、徐脈と呼吸困難、仮死又は心臓停止による死亡、致死量は経口投与で約6mg
症例1.成人男性が実験室から持ち出したサリチル酸フィゾスチグミン 1gを服んで自殺を図った。10分後に悪心と激しい腹痛を来たし、続いて縮瞳、幻覚を来した。顔色は灰色で、半昏睡状態と発汗と酷い流涎が有り、瞳孔が散大して光にゆっくり反応し、また全身の痙攣があった。最初に少量のatropin 1.05mgを与えて、脈拍は毎分200に上昇し、心電図は心室の異所性拍動を示した。そのためアトロピン投与は中止された。過マンガン酸カリウムを8L中1g を入れて胃洗浄し、胃内のアルカロイドを完全に酸化し、またアルカリによる強制的利尿が始められた。その治療を開始して半時間経過後痙攣発作が有り、10%グルコン酸カルシウム10mLの静脈注射によって痙攣が停止した。チアノーゼは機械的喚起と気管支呼吸で促した。筋肉の攣縮は更に酷くなり、更に痙攣はグルコン酸カルシウムに反応しなくなった。tubocurarineでクラーレ麻酔をするのに更にジアゼパムの静注を追加しなければならなかった。更にアトロピンの投与の試みは、頻脈と心臓異所性拍動を促進することに也、再度中止された。メチルスルホニルプラリドキシ 500mgを5分間隔で2回静脈注射され、筋緊張は改善し、攣縮は消失した。改善は遅かったがその後回復した[G.Cumming,L.K.Hanrding and K.Prowse,Lancet,1968.2.147.]

報告中の症例は、救急治療により救命した事例で有り、その後この患者の状態がどうであったのか、あるいは初期治療終了後の後遺症について報告した資料の入手は出来なかった。いずれにしろ現在本剤は治療用の薬物としては販売されて居らず、eserineによる事故があるとすれば実験用等における使用によるものと考えられるが、ドラフトチャンバーを用いてゴーグル・活性炭入りマスク・手袋等の完全防御で作業をすることで、頻発する事故とはならないと考えられるので、治療例の報告は少ないものと考えられる。

1)第10改正日本薬局解説書;廣川書店,1981
2)舟山信次:アルカロイド-毒と薬の宝庫-;共立出版株式会社,1998
3)白川 充・他共訳:薬物中毒必携 第2版原著第4版;医歯薬出版株式会社,1989

                    [63.099.ESE:2015.7.18.古泉秀夫]

「脂質異常症(高脂血症)治療薬の発癌性について」

土曜日, 8月 29th, 2015

 

KW:副作用・脂質異常症・高脂血症・cholesterol・コレステロール・高密度リポ蛋白・低密度リポ蛋白・LDL・HDL・アテローム動脈硬化症

Q:高脂血症治療薬「ロバスタチンカルシウム(rosuvastatin calcium)」を服用して3年目になる、最近の検査で胃癌の発生が指摘された。コレステロールを下げると癌が発生するから下げるべきではないとする本を頂いたが、ロバスタチンカルシウムの服用を中止した場合、何か問題があるか

A:コレステロール(cholesterol)は「胆汁から生じた脂肪」の意味だとされる。cholesterolは細胞膜、ステロイド、胆汁酸、及びシグナル分子の普遍的な構成成分である。全ての脂質は疎水性で大半は血液に溶けず、従ってリポ蛋白と呼ばれる親水性の球体構造に取り込まれ、輸送される必要があり、リポ蛋白の表面蛋白(アポ蛋白)は脂質を処理する酵素の補因子及びligandである。リポ蛋白は、大きさ及び密度によって分類され、低密度リポ蛋白(LDL)高値及び高密度リポ蛋白(HDL)低値はアテローム動脈硬化性心疾患の主要な危険因子であることから重要とされる。

コンテナサイズの小さいものは密度が大きく、高密度リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)と云われ、主として組織から肝臓にcholesterolを運ぶ。これに対して低密度リポ蛋白(low density lipoprotein:LDL)は、肝や腸で造られるcholesterolを末梢組織へ輸送するやや大型のコンテナである。

cholesterolの大部分は食事に由来するのではなく、体内で合成され、血漿に含まれるリポ蛋白と呼ばれる粒子を媒体として輸送される。cholesterolはそれを生産する臓器や細胞膜や小胞体のような膜組織が密集している細胞で構成される臓器、例えば肝臓、脊髄、脳に高濃度に分布している。成人の体内cholesterol量である100-150gのうち約1/4が脳に集中し、約1/3が脳を含めた神経系に集中している。動脈硬化叢に形成されるアテローム(血管の内側に詰まるカスのようなもの)にも高濃度で存在する。また、cholesterolが胆汁中で結晶化すると胆石の原因となる。

脂質及びリポ蛋白は、密接に関連する二つの経路で代謝される。リポ蛋白の合成、処理及びclearance(浄化率)の経路に欠陥が生じると血漿及び内皮にアテローム生成性脂質が蓄積するので、これらの経路は臨床的に重要である。

LDL(低密度リポ蛋白)は超低密度リポ蛋白(VLDL)及び中間密度リポ蛋白(IDL)の代謝産物であり、全てのリポ蛋白の中で最もcholesterolに富んでいる。全LDLの約40-60%は、アポB及び肝LDL受容体の媒介する過程を介して肝臓で除去される。HDL(高密度リポ蛋白)は、腸細胞及び肝臓の両方で合成され、初期にはcholesterolを含まないリポ蛋白である。HDLの全体的な役割は末梢組織及び他のリポ蛋白からcholesterolを受け取り、他の細胞やリポ蛋白、肝臓(除去目的)等、それが最も必要とされている場所まで輸送することである。全体的な作用は抗アテローム生成性である。

①高LDL-cholesterol血症の治療の目的は、動脈硬化性疾患の初発・再発の予防である。
②禁煙に加えて食事の改善、有酸素運動を含めた生活習慣の改善を継続的に行う。
③生活習慣の改善をはかってもLDL-cholesterolが高値の場合は、リスクに応じて薬物治療を開始する。
④スタチンは高LDL-cholesterol血症を改善させ、心血管イベント抑制効果が最も確立している。
⑤横紋筋融解症や肝機能異常などの副作用のチェックを定期的に行う。

脂質異常症:スクリーニングのための診断基準(空腹時採血)[日本]image

 

 

 

*トリグリセライド(triglyceride:TG:中性脂肪)の主要な機能は、脂肪細胞及び筋細胞にエネルギーを貯蔵することである。

[米国]

HDL-cholesterol:空腹時30-70mg/dL(女性30-90mg/dL)。冠動脈疾患(CAD)の発症とよく相関する。男性ではHDL-cholesterolの減少は危険性の増加となる。<45mg/dLはCADの危険率の増加を伴う。
LDL-cholesterol:<50-190mg/dL。増加は食事中の飽和脂肪酸過剰、心筋梗塞、高リポ蛋白血症、胆汁性肝硬変、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症)。

成人における望ましい脂質値[米国]
脂質の種類 目標値(mg/dL)
  総コレステロール         200mg/dL未満
  LDLコレステロール       100mg/dL未満
  HDLコレステロール        40mg/dL超
  中性脂肪                 150mg/dL未満

cholesterolのうちHDL-cholesterol及びLDL-cholesterolの値での日・米の比較を検討すべく文献から引用した数値を並べたが、日本の数値がやや低く抑えられていると感じられる数値となっている。

健康なヒトのコレステロール値は性別や年齢によって異なる[日本人間ドック学会の基準範囲(中間報告)

■総コレステロール 男性 女性 image

 

 

 

 

 

 

 

■LDL-cholesterol                 男性                       女性image

 

 

cholesterolが生体の種々の分野で重大な役割を果たしており、極端に低下させた場合、生体の各部に影響が出ることは考えられるが、発癌性を直接指摘する報告は確認できなかった。

一方でcholesterolが高値に保たれることはアテローム動脈硬化性心疾患の主要危険因子とされており、これはある意味“地雷”みたいなもので、必ずしも踏むとは限らないが、踏む可能性が有り、前もって避けておくことは賢明であると考える。更に厳密な食事管理(飽和脂肪酸の摂取制限)、1日3000歩以上の歩行等の運動療法が確実に可能であれば、cholesterolのコントロールが可能とされるが、この辺の判断は飽く迄も主治医と相談の上で決定することが求められる。

1)長谷川榮一:カラー版医学ユーモア辞典 改訂第3版;エルゼビア・ジャパン,2008
2)山口 徹・他監修:今日の治療指針-私はこう治療している-;医学書院,2014
3)福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第18版;日経BP社,2006
4)飯野靖彦・監訳:スカッド・モンキーハンドブック-基本的臨床技能の手引;MEDSi,20035)浜 六郎:コレステロールに薬は要らない!;角川oneテーマ21,2006
6)福島雅典・監訳:最新メルクマニュアル医学百科(家庭版);日経BP社,2004
7)読売新聞,第49975号,2015.3.15.

          [015.4CHO:2015.3.5.古泉秀夫]

『健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会』

火曜日, 8月 4th, 2015

        魍魎亭主人

厚生労働省は2015年6月18日に、地域の健康情報拠点に相応しい薬局の基準作りの前提となる『拠点薬局の定義』について、大筋で合意が得られたと公表したの報道がされた[薬事日報;第11588号,2015.6.22.]。

それによると“かかりつけ薬局の基本的な機能を持った上で、一般薬の適正使用に関する助言や健康に関する地域住民からの相談を幅広く受け付けて専門の職種や機関に繋ぐ等、健康サポート機能も併せ持つ薬局”と位置づけている。次回以降、この定義に基づいて、拠点薬局の基準や名称などについて議論を深めていくとされている。

拠点薬局の定義は、患者情報の一元化や、24時間対応・在宅対応等、かかりつけ薬局としての基本的な機能を備えた上で、►要指導薬・一般薬・機能性食品等の適正使用に関する助言を行う。►地域住民のファーストアクセスの場としての健康に関する相談を幅広く受け付け、必要に応じかかりつけ医を始め適切な専門職種や関係機関に紹介する。►健康に関する情報提供を積極的に行うこと等を例示し、「地域包括ケアの一員として、国民の病気の予防や健康づくりに貢献する薬局」と位置づけた。

「かかりつけ薬局と健康情報拠点薬局の関係」では、かかりつけ薬局の機能に上乗せする形で、一般薬・衛生材料の提供や健康相談応需等によって、病気の予防や健康づくりに貢献する「健康サポート機能」を持つ一方で、抗癌剤や免疫抑制剤等の選択、投与量の調整支援といった「高度薬学管理機能」を備えた薬局を健康情報拠点と位置づけている。更に医療機関との連携を通して、疑義照会や処方提案、副作用・服薬情報のフィードバック、受診勧奨等を行うことをあげているという。

これに対し羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は、薬局によっては薬剤師が頻繁に異動するケースも見られるため、かかりつけ薬局を増やすのではなく、「かかりつけ薬剤師を増やすことが望ましい」と指摘。休日・夜間対応についても「医師だったら、声を聞くだけで患者のことがだいたい想像がつく」とし、「薬局も強い覚悟を持ってほしい。商売優先になってしまうと残念」と述べたという。名称に「拠点」という言葉が使われていることに対しても「健康情報拠点が薬局である必要は全くない。違和感がある」と主張。「窓口ぐらいがいいのでは」と提案したという。

『地域の健康情報拠点に相応しい薬局の基準』については、まだ論議の途中であり、最終的にどこに着陸する気か解らないが、現在論議されている中身がそのまま残ると考えた場合、個人経営の薬局が、これの要件に全て対応するのは甚だ難しい。少なくとも地域別に『かかりつけ薬局をグループ化し、そのグループの頂点に期待される薬局?』を配置し、地域内のネットワーク化を図るということが必要ではないか。そのためには地域を統轄する行政機関は当然のこととして、薬剤師会、医師会、看護師会等々がそれぞれ意見を持ち寄り、その地域の医療をどう構築するのかを考え、その中で全体的なシステムを作るという考え方に立つことが必要なのではないのか。

いずれにしろ今の医薬分業は異常である。門前に大型チェーンの調剤薬局が並びあたかも大謀網で魚を掬うようなことがされている。これでは従前の病院薬局と同じで、十分な患者サービスは出来ていない。特に患者に対する情報提供などは、調剤する患者数が多ければ多いほど、十分な対応は出来ない。紙に抽出した情報を抜き出して印刷し、手渡すということがされているが、毎回同じ内容の説明書を手渡し、説明が済んでいるとして技術料を取るのは詐欺に等しい。更にOTC薬については、殆ど扱っていない。

その意味では「薬局」として、街中の薬局を中心にして、調剤とOTC薬=患者が使用する薬の全てを薬局で管理するという考え方は、薬局の在り方を本来の意味に戻そうと云うことであり、間違ってはいない。更に今後の在宅指向の中で街の薬局の果たすべき役割は重要なものがあり、情報発信機関として整備されることは重要である。

しかしその際、医療の中心は飽くまで医師であるという発想は捨ててもらわなければならない。医療の中心に置くべきは患者であり、その患者の望むべき医療はいかにあるべきかという観点から対応を決めていくべきではないか。

               [2015.8.3.]

§蹌々踉々[6]

日曜日, 8月 2nd, 2015

                                                                        鬼城竜生

                              『水準を測る物差し』

薬科大学の6年制移行に伴う実務実習が、いよいよ現実の問題として身近に迫ってきた。現在までに、教育に携わる薬剤師の水準問題について、色々論議され、専ら実習指導者としての薬剤師の適正を論ずるものが多く見られたが、不思議なことに、実習受け入先である病院の水準についての論議は、あまり見られなかったような気がする。しかし、実際的な問題として云えば、人の問題もさることながら、教育現場としての施設(病院薬局)の業務水準がより問題なのではないか。例えば、350床の病院であれば、全国どこでも同じ水準の医療を提供していると考えていいのか。また全ての病院の薬局は全く同じ設備を保有していると考えていいのか。例えば製剤室を保有しているのか。その製剤室は、湿性と乾性に区分されているのか。あるいは無菌製剤室はあるのか。注射薬調剤室はあるのか等々、受け入れ施設の水準を測る物差しを明確にすることが必要ではないのか(呑)。

 

                        『副作用にならない薬の服み方』

高脂血症の治療薬を服用し始めた。その程度の検査値なら薬の服用はいいのではないかと申し上げたのだが、年齢的な問題もあるからというのが処方した医師の御宣託である。院外処方せんが出されたため、調剤薬局で調剤して貰ったが、御多分に漏れずお仕着せの薬の説明書を渡された。その説明書を拝読しているうちに、記載されている横紋筋融解症の前駆症状に引っかかった。筋肉痛、脱力感の記載がされているが、何処の筋肉が痛むのか、筋肉痛の痛みの程度はどの程度なのかの判断の基準については何の記載もなく、貰った側には不満が残った。例えばキーボードの叩き過ぎで出る筋肉痛と、前駆症状としての筋肉痛の区別がつかなければ、判断のしようがないということである。脱力感についても、どういう状態になるのかの具体的な説明がされていない。それ以上に、今度は是非、横紋筋融解症にならない服み方について、説明を求めたいと思っているが、どうであろうか(呑)。

 

                                  『時の流れ』
                                       
日本薬剤師会雑誌の判型がA4判に変わったのは、2003年1月号からと記憶している。従来、我が国で多用されてきたB5判という判型は、和紙の判型であり、貿易障壁の一つとして、米国から強硬な苦情が出された。つまり官庁への提出書類をA4からB5に書き換えるのが大変だということである。そこで官庁への提出書類の判型はB5からA4に変更された訳だが、それに伴って、今後、官庁で使用する用紙は、全てA4判とすることが決められた。従来、我が国で発行される雑誌は、B5判であったが、その後A4版に移行するものが増えてきた。雑誌が移行するのは、何等かの規制があるからではなく、B5判に比べてA4判の方が割付がし易いという実務的な問題であり、特に横組みで写真や図を多用する雑誌の場合には出来上がりがいいということである。ただし、未だにB5版の判型を守っている雑誌もあるが、時の流れに抵抗するの意識でやっているのかどうか(呑)。                                               

                                             

                          『患者に求められる薬剤師』

薬剤師である以上、本来所持していなければならない機能を専門特化することが流行のようである。勿論、仕事として望まれるから専門特化を考えるのであろうが、その希望が患者の期待と一致しているのかどうか。本来薬剤師の仕事は、裏方的仕事であり、医師抜きで直接患者の治療に手を出すことはできない。癌専門薬剤師にしろ、感染専門薬剤師にしろ、チームの中の一員として、治療に協力するということであり、薬剤師としての存在感は、チームの中に埋没する。しかし、専門特化は結構だが、全ての薬剤師が特化される必要はないだろう。医師が専門特化しすぎて、一般診療ができない医師が増えたことが問題とされてきた。薬剤師も万遍なく何事でもこなせる薬剤師は必要であり、患者と話せる人間的に円満な薬剤師も必要なのである(呑)

                                                                      [2015.8.1.]

『恐れ入谷の鬼子母神』

日曜日, 8月 2nd, 2015

                                                                        鬼城竜生

入谷に富士講の作った御山を見るために出かけることにしたが、さてどう行くかということで頭を悩めてしまった。目的の御山は小野照崎神社の境内にあるが、ついでに予て念願の「入谷の鬼子母神」によってみたいと考え、地図を見ると日比谷線の入谷駅の2番口か近いということになっていたので、蒲田から京浜急行の特急に乗り都営浅草線の人形町駅で日比谷線に乗り換え、入谷駅で降りるという行程をとることにした。入谷駅二番口から外に出て、鬼子母神を探したが、至近の距離にあるはずの鬼子母神が見当たらなかった。交差点で見回しているうちに、お寺より先に、交差点の向かい側に昔懐かしい『三富』という飲み屋の看板が目についた。

現役の頃加盟していたい東京医労連の上部団体、日本医労連の会館は入谷にある。現役の頃会議で何度か訪れたことが有り、会議の終了後、御多分に漏れず酒になるが、その時に何度か吞んだことの在る店が『三富』で、それが交差点の向側に見えたと云うことは、現役の頃周りを見てさえいればその当時行けたと云うことである。

今回ここに来たのは、小野照崎神社の境内にある富士山の御山開きが6月30日と7月1日の両日行われ、普段は閉めている御山に登れると云うことで、その写真を撮りに来たのだが、序でに兼ねて耳にしていた入谷の鬼子母神が近いというので、寄ってみようという気になimageっていた。所で『恐れ入谷の』の入谷は、場所の話しではなく「恐れいりやした」という江戸言葉と「入谷」の地名を掛けた物でimage、入谷(台東区下谷)の真源寺に祀られている「鬼子母神」を続けて云ったしゃれで、特段意味があるわけではないが、江戸時代には流行っていたのかもしれない。

真源寺は、法華宗本門流の寺院で、山号は仏立山である。万治二年(1659年)光長寺20世・日融が、当地に法華宗本門流の寺院を開山したことによるとされている。鬼子母神を祀っていることで、入谷鬼子母神の名称で有名な寺院である。鬼子母神(きしもじん・きしぼじん)は、インドで訶梨帝母(カリテイモ)とよばれ、王舎城の夜叉神の娘で、嫁して多くの子供を産んだが、その性質は暴虐この上なく、近隣の幼児をとって食べるので、人々から恐れ憎まれていたという。これがお釈迦様の教えを受け、改心して出産・育児の神となったという。雑司ヶ谷にも祀られているが、人によく知られているのはこの『恐れ入谷の鬼子母神』という俗諺で知られているこちらの方ではないのか。更に7月6日-7日に行われる朝顔市でも知られている。

何処にあるのか見回しているうちに三富の斜め向かいに寺院が見えた。しかし、あまり広いとも思えないお寺で、半信半疑横断歩道を渡ったところ、朝顔市の準備が盛んに行われていた。2-3枚写真を撮って邪魔になるといけないので早々に失礼した。しかしこの広さで、どうやって朝顔市をやるのか、興味のあるところである。

小野照崎神社は、小野篁(たかむら)を主祭神とし、相殿に菅原道真を祀る。852年(仁寿2年)この地の住民が上野照崎の地に小野篁を奉斎したのが起源と伝わる。寛永年間(1624年-1643年)、寛永寺の建立のため幕府より移転を命じられ、現社地に遷座した。江戸末期、回向院より菅原道真自刻と伝わる像を迎えて相殿に祀り、「江戸二十五天神」の一つに数えられた。樋口一葉の「たけくらべ」に「小野照さま」の名で出ていると云う。

小野照崎神社の境内に聳える富士山は、江戸に富士信仰を布教した「南沢正兵衛」の門人である「山本善光」が、氏子はもとより江戸八百八町に広く浄財を募り、富士山より岩石を船積みして運び、隅田川より荷車にて当imageimage地まで陸送し、天明年間(1782年)に築山されたものであるという。大変な時間と大勢の労力と、更には当時の人達の信仰心の篤さには驚かされるものがある。冨士浅間神社の例祭である御山開きは例年6月30日・7月1日の2日間に斎行される。開山式として御仮屋での神事の祓主を先頭に斎主・祭員、氏子崇敬者が列立し、『六根清浄』を唱えつつ一合目から頂上まで登る。頂上では四方祓いをし、天下太平・五穀豊穣と平和の祈りを捧げて、本山である富士山に向かい遙拝をした後に下山し、登拝を終えるとされている。

1年間で2日間のみ山門を開け、登拝を許し、龍神守り等の授与品もこの時だけの頒布とされている。その他、お山開きの御朱印、蛇土鈴・朝顔土鈴・茅の輪守りを頒布している。
築山されて220年にならんとする月日が流れ、登拝が年に2日間だけであることから蔦や草の根がしっかりと土に張り巡らされ、土を強固にし、風雨に堪えて昔のままの姿を維持している。昭和五十四年国の重要有形民俗文化財の135号として指定されている。

小野照崎神社には茅の輪が飾られていた。茅の輪神事、輪越祭、茅の輪くぐり等と云われる神事で、1年の丁度半分を過ぎた旧暦6月 30日の夏越祓 (なごしはらえ) に用いられる。茅とは、茅萱(ちがや)、菅(すげ)、薄(すすき)などの総称で、この輪を潜り抜けることで、罪やけがれを取り除き、心身が清らかになるようにお祈りするもので、神事である以上潜り抜け方には約束事がある。かつては茅の輪の小さいものを腰につけたり首にかけたとされる。

この神事の起こりは、素盞鳴尊(すさのおのみこと)が、旅の途中で、蘇民将来(そみんしょうらい)、巨旦将来(こたんしょうらい)という兄弟のところで宿を求めた。弟の巨旦将来は、豊かな生活をしていたのにそれを断り、兄の蘇民将来は、貧しい暮らしをしていたにも係わらず、素盞鳴尊を泊めて、しかも厚いもてなしをしたという。その後何年かたって素盞鳴尊は再び蘇民将来の家を訪れて、「もし悪い病気が流行することがあったら、茅で輪を作って、腰につけておれば病気にかからないですむでしょう」と教えたという。

それ以降「蘇民将来」と書いた紙を門に貼っておくと災いを免れるという信仰が生まれたという。茅の輪も、最初は人々が腰につけるほどの小さなものであったが、時代がたつにつれて大きくなり、現在のような神事になったとされる。

                                                                    (2015.7.10.)