トップページ»

『ハハコグサについて』

金曜日, 7月 10th, 2015

 

KW:薬草・ハハコグサ・母子草・御形・ごぎょう・おぎょう・餅花・モチバナ・ホオコグサ・鼠麹草・ソキクソウ

Q:ハハコグサについて

A:ハハコグサ(母子草)は、きく科ハハコクサ属の越年草である。学名:Gnapalium multiceps Wall. Gnaphalium affine。春の七草の一つ『御形』でも有り、茎葉の若い葉を食用(七草粥)にする。冬は根出葉がややロゼット状に育ち、春になると茎を伸ばして花を付ける。

[分布]北海道から沖縄及び亜細亜(中国、インドシナ、マレーシア、印度)に分布し、原野や人家の近くなどに普通に見られる。日本では全国的に見られるが、古い時代に朝鮮半島から伝来されたものとする意見が見られる。

image[形態]草丈は20-30cm、茎は基部から分枝して直立し、葉と共に白軟毛を被る。葉は線状倒皮針形で縁はやや波状。花期は4-6月。茎の頂きに散房状に淡黄色の小頭花が密集する。

[別名]御形(ごぎょう・おぎょう)、餅花(モチバナ)、ホオコグサ(母子草)。

[漢方名]鼠麹草<ソキクソウ>と云う生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使用されない。

[薬用部分]全草(鼠麹草<ソキクソウ>)。開花期の頃、全草を採集し、水洗い後、日干しにして乾燥させる。

[成分]全草にルテオリン(luteolin)、モノグルコサイド、フィトステロール(phytosterol)、無機物の硝酸カリを含有する。

*luteolin:フラボンの1つ。他のフラボノイドと同様、黄色の結晶状になる。抗酸化物質活性、炭化水素代謝の促進、免疫系の調整、2型糖尿病の治療等の作用を持つ可能性示唆。
*phytosterol:又は植物ステロール(plant sterol)は、sterol(ステロイドアルコール)に分類される一群の化合物。植物に含まれるフィトケミカルの一種である。特有の臭気のある白色固体で、水に溶けないがアルコールには可溶である

[薬効・薬理]西洋医学では未開発であるが、中医学では去痰剤とする文献もある。主に鎮咳、去痰に有効で、他に利尿作用などがある。花にはジギタリス葉に含まれるルテオリンやカリウム塩が含まれる。

[用法・用量]咳止めには1日10gに200mLの水を加え、半量になるまで煎じて3回に分けて服用する。また乾燥した全草を細切りにして1回量20gを火にくべて立ち上がる煙を吸ってもよい。急性扁桃腺炎には全草10gを煎じて含嗽するとよい。急性腎炎(浮腫)には煎液(5-10%水煎液を作り1日200mLを服用)を食間3回に分割して服用すると利尿に効果があるとされる。
田虫、白雲、畑毛等の皮膚病には、全草を適当に切り、塩を混ぜて濡らした和紙に包み、これを炭火の中に入れて黒焼きにし、黒焼きを擂り潰して胡麻油で練り合わせたものを患部に塗布する。

[その他]鼠麹草<ソキクソウ>は、葉に毛があって鼠の耳のような形をしていることと、花が粒状で黄色の麹に似ていることから名付けられた。嘗ては草餅(母子餅)の材料に使われたが、色が薄いので蓬が使用されるようになった。

1)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
2)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
3)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版,2011

            [11.141.AFF:2015.5.3.古泉秀夫]