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『後発医薬品』

水曜日, 5月 6th, 2015

                魍魎亭主人

後発医薬品を推奨する厚労省のいい分は、先発品に比べて値段が安いということであった。しかるに今回、薬価を精査している段階で、8成分9品目が先発品を上回る見込みであるとの報道があった[RISFAX,第5528号,22.2.4]。所謂薬価の『逆転現象』が起こった原因は、商品に付加価値を付けようとする企業努力、その結果、製剤的な工夫がされ、それを評価した結果だと思われるが、先発品の剤形と異なる剤形の製剤を、後発品として扱うことに問題があるのではないか。

あるいはたかが製剤上の工夫ということにして、先発品を越える薬価は付けないということにしてしまうか。少なくとも後発品は先発品との比較で安くなければいけない訳で、僅か9品目とはいえ、先発品より高い後発品があったのでは、国民に嘘をついたことになる。

更に患者の立場からいえば、後発品を推奨したいために、医療機関での取扱に、色々点数を附加することは、その分患者の個人負担が増えることになるため、有り難くも何ともないということになる。兎に角、後発品は安いということが売りで、TVの宣伝等も専ら安いを振りかざしている。

ところで厚労省は、苦心惨憺、何でこれほど後発品を推奨しているのか。医療費の総枠抑制のため、少しでも安くあげられるものはあげたいという、御国の政策に由来すると云うことである。

それならこの際、製薬企業に協力を仰ぎ、特許期限を過ぎた医薬品については、その時点で後発品並みに薬価を切り下げさせて戴いたらどうか。何れにしろ後発品が出れば売り上げは下がる。それならば薬価を切り下げてでも、使用の継続を保証された方がいいのではないか。更にいわせて戴ければ、無闇に後発品の製造がされているが、それはある意味、資源の無駄遣いに繋がるのではないか。売れそうな薬の後発品には、甘いものに参集する蟻の如く叢がってくるが、医療の現場ではその全ての薬が万遍なく売れるわけでは無い。結局値段を下げて薬価差で稼げるようにと云うことになるのかもしれないが、薬を持っているのは調剤薬局で、処方を書く医師には何の恩典もない。

最近、後発品の薬品名を記載して、変更不可に印の入った処方せんが出回り始めたと云うが、これなどは自社製品の囲い込みをしようとする企業の意図が覗える。後発品は全て一般名と含有量の記載に統一し、企業の影を窺い知れないようにすることが必要ではないか。更に後発品の薬価収載は2-3品目にするぐらいの思い切った手立てを講じないと、後発品使用の推奨が瓦解しかねない問題が起こる可能性が考えられる。

            (2015.5.4.)