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『デングウイルスの脅威』

木曜日, 10月 2nd, 2014

             魍魎亭主人

2014年10月1日、厚生労働省は国内におけるデング熱発症者は計153人、18都道府県の広域にわたると発表した。いずれも海外渡航歴はなく、今回の事例は、その意味では輸入感染症と云うのではなく、国内の感染居住者からの感染、70年経過後の感染-復興感染症の様相を呈してきたといえるのではないか。厚労省の最初の報告では、誰か帰国者が代々木公園で蚊に刺され、その蚊が他の人を刺すことで、感染者が増えたという話だった。

しかし現状を見ると、一人の感染者を2-3匹の蚊が、刺したという単純なことではなく、団体で入国した人達の中に何人かのvirus保有者がおり、その人達が代々木公園内であまたの蚊に刺され、発病者が出たと考える方が分かり易いのではないか。

今、我が国は、財政的な理由から海外からの旅行者を大量に受け入れている。当然virus保有者が入国して来る可能性は否めない。この政策を推し進めるのであれば、同時に輸入感染症の対策を強化することが必要ではないか。従来に比べ、我が国も温暖化が進んでおり、その意味では、従来は国内で棲息出来なかったvirus媒介生物である、熱帯蚊などが国内に入ってくることが可能になる状況も考えられる。

今回のdengue virusは、感染者を介して人から人への感染はなく、蚊-ヒト-蚊とサイクルを取ることからこの程度の広がりで済んでいるが、もしヒト-ヒトの感染が起こるvirusであれば、今回のような呑気な対応は不可能だったはずである。今後海外からの来訪者が増えれば、増えるほど我が国では経験のない病原体の侵入が考えられる。その時になって慌てまくっても手遅れである。観光客の導入計画のみならず、招かざる客の対策を同時並行的に調えておくことが重要である。

先ず最初にやるべき事は、輸入感染症の検査手技の導入と確立、初期症状の公開である。更に国内未開発のワクチンの導入、新ワクチンの開発に全力を挙げるべきである。更にvirusに効果のある薬の開発を急ぐべきである。勿論、現在確認されている病原体だけではなく、新たな病原体が出てくる可能性も否定できない。

更にvirusを運ぶ運び屋に対する対策も必要である。公園等の池を整備し、水流のある水の綺麗な池とし、少なくともメダカが住めるだけの環境を整えるべきである。メダカは蚊の幼虫であるボウフラを捕食する。そうすれば水があっても蚊が増えることはあり得ない。勿論病原体を運ぶのは蚊だけではなく、他の昆虫であることもあるが、取り敢えず公園内において、蚊を運び屋とするvirusを蔓延させることはなくなるはずである。

最早鎖国は不可能である。ならば不測の事態に対応できるあらゆる準備をすることが重要である。公園や催し物をする広場は、人が集まる事を規制したのでは意味がない。更には症状のないvirus保有者を見分けることも出来ない。だとすれば環境整備も重要である。

人を受け入れる体制の整備だけでなく、病原体の侵入を防ぐ体制の強化も必要である。

                      (2014.10.1.)