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「描く必要があったんですかね?」

金曜日, 9月 5th, 2014

            魍魎亭主人

2014年5月8日の読売新聞(第49665号,2014.5.8.)に『「美味しんぼ」表現に抗議福島・双葉町「県民への差別助長」』の記事が掲載された。

それによると「ビッグコミックスピリッツ」の4月28日発売号に掲載された「美味しんぼ」(作・雁屋哲、画・花咲アキラ)の作中で、福島県を取材してきた登場人物が、鼻血を出すなどの表現があった件を巡り、東京電力福島第一原発の立地自治体の同県双葉町は7日、県民への差別の助長につながるなどとして、雑誌発行元の小学館に抗議文を送った。

抗議文で同町は、「県産農産物は買えない」「福島方面への旅行は中止したい」といった電話が町役場に寄せられているとし、「復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせている」。

鼻血のシーンで、作中の前町長が「同じ症状の人が大勢いる」との内容の発言をしたことに対し、抗議文では、「原発事故直後から全町避難を強いられているが、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はない」とするもの。

最近でこそ購入しなくなったが、昔は発売される毎に購入して見ていた漫画である。新聞報道を見て、その漫画の収載されている号を購入しようとしたが、もう時期がずれていて、手に入れることは出来なかった。

しかし、その後発売された24号と25号と続く、後段の話を見る限り、為にする話で、作者や出版社が云うような、国民を啓蒙するとの意図があるとは思えなかった。現実問題として、現実に福島に住んでいる多くの人々がいる訳で、彼等の中には線量計を持ちながら外来者を案内してくれる人も居るが、別に鼻血が出るとは云っていなかった。

5月25日-26日に架けて、福島県東部の太平洋に面した浜通り地方のほぼ中央に位置し、北は富岡町、西は川内村、南は広野町・いわき市とそれぞれ接している“楢葉町”を主たる訪問地とし、更には富岡町の流されたままの駅、その先の夜の森駅まで行って、福島に一泊したが、誰も鼻血は出さなかったし、その間行き会った誰もが鼻血で悩んでいるという話は聞かなかった。

同じ取材して漫画を書くなら、地元の材料で美味い料理を創って、それを紹介する。地元の元気回復に役立つことをやったらどうだったのだろう。地元の鼻血の問題について、読売新聞に次の記事が出ていた。

☀連載漫画「美味おいしんぼ」の主人公が、福島県内を取材後に鼻血を出す描写が批判を受けている問題で、自民党環境部会は30日、原発事故と鼻血に因果関係はないとする調査結果を発表した。

東京電力福島第一原発から50キロ圏の相馬地方4市町村(相馬市、南相馬市、新地町、飯舘村)で、鼻血症状で医療機関を受診した患者数に、事故前後で大きな変化がなかったという。

調査は、相馬郡医師会が23日、4市町村の66医療機関を対象にアンケート形式で実施。事故後に鼻血の頻度が増えたと訴えた患者の有無を聞いた結果、回答した52機関のうち、49機関が「ない」と答えた。そのうち南相馬市の総合病院大町病院では、鼻血症状を訴えた患者の割合が、事故前の2010年度は0.42%だったのに対し、事故後の11-13年度は0.46-0.33%とほぼ変化はなかった。[読売新聞,第49687号,2014.5.30.]。

地元医師会が調査した結果である。実証的なものとして、理解することが必要だろう。

次の写真は"楢葉町"にある古刹『宝鏡寺』の天井絵である。住職の早川氏は、八体の仏像は勿体ないけど、住んでいるアパートの押し入れに仕舞っているという。なんせ昼間入ることは認imageめられているが、夜泊まることは出来ないとされており、置いておけば盗まれてしまうと云っていた。

10匹いた池の鯉は8匹は盗まれてしまったという。飼っていた鳥は、仕方が無いから逃がしたと云っていたが、鳥小屋で飼っていた鳥を放して果たして生き残ることが出来るかどうか。

しかし少なくとも、何事もなく暮らしていた生活が、地震・津波に続いて、原発が爆発したことによって、生活を奪われてしまったと云うことである。原発事故の結果については、まだ検証されていないが、あれだけ大きな事故にしてしまったのは、政治家、学者を始め、技術者の方々の想像力が欠如していたことに原因があるのではないかと思っている。もう少し地震や津波の危険性を認識し、原子炉冷却のための水回りを十分に検討し、準備しておきさえすれば爆発させることはなかったのではないか。

先日福島に出かけたとき、案内を御願いした馬上勇孝氏が頂いた写真が牛の写真である。富岡駅から夜の森駅までの立ち入り禁止区域、荊棘線で囲われた地域に丁度牛が出てきたとimage云うことで、撮した写真を頂いたが、この牛の姿を見る限り、原発爆発以降、既に3年が経っているが、牛が元気で生きている姿を見ると、体内の異常については分からないが、豊かな自然、牛が食べるのに困らないだけの草が確保できていると云うことが推測できる。

いずれにしろ事実ではない異常事態を書くことは、地元の人達に対して失礼極まりない話で有り、為にする話である。我々は現在、年に1回楢葉町を中心にして、地元病院の労働組合の協力を得て、一晩泊まりで出かけているが、将に貧者の一灯にしかならないが、地元の食材で、地元の酒を呑み、地元の食堂で飯を食うことで、風評被害に抵抗しているつもりでいる。

                         (2014.9.3.)