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「間違いは間違いでしょう」

火曜日, 12月 4th, 2012

            魍魎亭主人

2012年9月20日に厚生労働省が開催した『医薬品・医療機器等対策部会』で、望月真弓委員(慶応義塾大学薬学部教授)が、「医師が処方箋の後発品への変更不可欄にチェックしたにもかかわらず、薬剤師が後発品に変更調剤した」との事例報告について「中身(成分)も剤形も同じ。間違いと云えるだろうか」との疑問を呈した。処方箋様式が頻繁に変更される中で、変更不可欄の記載や後発品のメーカー指定などを「守ろうとするがために、調剤が煩雑になり(後発品に関わる)ミスを招いている可能性がある」と指摘。結果として、薬剤師が勝手に変更調剤したことについて、リスクとベネフィットを踏まえて「どう考えるべきか」と投げ掛けたという報道がされていた[リスファックス,第6171号,平24.9.21.]。

医師の書く処方箋は、患者に対する薬物療法に関する医師の意思表示である。その意味では、医師が「処方箋の後発品への変更不可欄にチェックした処方箋」を受け取った場合、それは後発品への変更はしてはならないと云うことで、その表記を無視して調剤した場合、誤調剤になることは間違いない。それに対し「中身(成分)も剤形も同じ。間違いと云えるだろうか」との疑問が呈されたと云うが、この発想を推し進めると、本体の医薬品についても同様の事が云えると云うことになる。

ゾロ(後発品)の使用促進を図るためには、少しぐらい規定を緩めてもよいという発想は間違いである。後発品の使用を促進するために、処方箋の記載内容を勝手に判断してよいと云うことがまかり通ることになれば、医師と薬剤師との間の信頼関係は失われることになる。

尤も薬剤師が薬について判断してよいと云う考えであるなら、思い切って処方箋の記載は全て一般名で記載すると決めたらどうか。その結果、どの薬を選択し、調剤するかは薬剤師の責任において行う。勿論、薬剤師が選択する薬は何でも良いという訳にはいかない。選択の根拠を明確に示すことが必要であり、医師や患者にも明確に説明出来ることが必要である。その結果、薬を選択した薬剤師の眼が信頼されるということであれば、医師や患者との信頼関係はより強固なものになるはずである。

何時の間にかゾロ(後発品)を使用することが正義だといわんばかりの妙な雰囲気が醸し出されている。しかし、本来の薬の選択は、安ければどれでも良いという話ではなく、処方をする医師が、納得した薬であることが重要なのではないか。つまり患者に投与して安全だという保証が必要だと云うことである。医師は自分の使用経験からこの保証を手に入れる。その経験に代わるものとして、薬剤師が根拠に基づいて選択した薬を処方してもらおうと云うことであり、一般名処方にすることによって、色々面倒な手品を使うことも無しに、ゾロ(後発品)の使用が増えるのではないか。

本来的に云えば、医薬分業の実行を追求することが医療費抑制の早道であるはずである。一般名処方の推進により、薬の選択に薬剤師がより前面に出る仕組みを導入すれば、自動的に医薬分業が進むのではないかと考えるが、如何であろうか。

          (2012.10.18.)