Archive for 12月 21st, 2012

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「セレニカR錠の吸湿性について」

金曜日, 12月 21st, 2012

 

KW:物理化学的性状・吸湿性・セレニカR・バルプロ酸ナトリウム・sodium valproate・徐放性製剤・吸湿性

Q:セレニカR錠の吸湿性について。一包化した状態で錠剤がガバガバになったと云うが。これの服用は可能か

A:セレニカR錠(田辺三菱)は1錠中にバルプロ酸ナトリウム(sodium valproate) 200mg・400mg含有する製剤である。本剤は核錠に水不溶性高分子を二重コーティングした膜制御型の徐放性製剤である。本品の貯法は、「気密容器・室温保存」とされている。
本品の「適用上の注意」として、

1. 保存時:本品は徐放性製剤であり、製剤の吸湿により溶出が加速されることがあるので、吸湿しないように保存させること。
2. 服用時:(1)本品は徐放性製剤であり、製剤をかみ砕くことにより溶出が加速されることがあるので、薬剤をかみ砕かないで服用させること。(2)錠剤の嚥下能力が低いと考えられる小児等には、事前に本剤が服用可能なことを確認して十分注意し服用させること。また、本剤(錠剤)の服用が困難な小児等には、本剤以外の剤型を選択すること。(3)本剤投与後に白色の残渣が糞便中に排泄されるが、これは賦形剤の一部である等の注意事項が記載されている。

また本品原薬の性状について「白色の結晶性の粉末である。水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)又は酢酸(100)に溶けやすい。吸湿性である」の記載がされている。

その他、本品の過酷試験として25℃・60%RH(未包装)48時間保存で、経時的な溶出率の増加が認められ、12時間保存品は適合、24時間及び48時間保存は不適合であった。また、急速な乾燥減量の増加が認められた。それ以外の測定項目は、変化が認められなかったとする報告がされている。

以上の報告からセレニカR錠はPTP包装から取り出し、他の錠剤等と一包化することは避けるべきである。吸湿により本品の製剤設計が破綻し、期待される効果が得られない可能性が考えられるので、外観変化が見られる本品は使用しない。

1)セレニカR錠添付文書,2012.8.改訂
2)セレニカR錠IF,2009.4.

   [014.4.VAL:2012.10.1.古泉秀夫]

「ラシックス注とソルデム3の配合変化について」

金曜日, 12月 21st, 2012

 

KW:物理化学的性状・配合変化・ラシックス注・ソルデム3輸液・フロセミド・furosemide

Q:ラシックス注をソルデム3輸液の管側から投与してもよいか

A:ラシックス注の性状及び用法・用量について次の報告がされている。
ラシックス注20mg・100mg/管[サノフィ-日医工サノフィ]
成分:1管2mL中日局フロセミド(furosemide)20mg・10mL中100mg含有。
添加物:塩化ナトリウム・pH調節剤:適量。 
pH:8.6-9.6。(変化点pH:6.32で白濁→沈殿)
褐色アンプル入り、無色澄明な液体。
浸透圧比:約1(0.9%生理食塩液に対する比)。本品は希水酸化ナトリウム試液に溶ける。本品は光によって徐々に着色する。
用法・用量:通常、成人にはフロセミドとして1日1回20mgを静脈注射又は筋肉内注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。腎機能不全等の場合にはさらに大量に用いることもある。
適用上の注意:静脈注射時:緩徐に投与すること。特に、大量静脈注射の必要がある場合には、毎分4mg以下となるよう投与速度を調節すること。[大量を急速に静脈注射した場合に難聴があらわれやすい。]
貯法:遮光・室温保存。

<ラシックス注は以下の薬剤との配合により混濁を生じた>
アクラシノン注射用(pH:5.0-6.5→pH7以上の注射液とは配合不可) 、アプレゾリン注射用(pH:3.5-5.0)、アリナミンF25mg・50mg・100mg注(pH:3.3-4.3)、ケタラール静注用(pH:3.5-5.5)、サイレース静注(pH:3.5-5.5)、注射用サイメリン(pH:4.0-6.0)、セファランチン注10mg(pH:2.5-3.5)、タガメット注射液(pH:4.5-6.0)、ダカルバジン注用(pH:3.0-4.0)、テラルビシン注射用(pH:5.0-6.5→pH6付近が最も安定、酸性側(pH5以下)及びアルカリ性側(pH8以上)で経時的に力価低下)、ドイル静注用(pH:6.8-7.8)、ドルミカム注射液(pH:2.8-3.8→本剤は酸性溶液で安定、pHが高くなると沈殿や白濁を生ずることがある。アルカリ性注射液との配合は避ける)、ニトログリセリン注(pH:3.5-6.0)、ネオラミン・スリービー液(pH:3.0-5.0)、ノバントロン注(pH:3.0-4.5)、パントシン注(pH:4.2-5.2)、ピノルビン注射用(pH:5.0-6.57→pH6付近が最も安定で、酸性側 (pH5以下)及びアルカリ性側 (pH8以上) で経時的に力価低下)、ファルモルビシン注射用(pH:4.5-6.0) 、フェロン注射用(pH:4.5-5.5)、プロタノールL注(pH:3.5-5.0)、ペルサンチン静注(pH:2.5-3.0) 、ミノマイシン点滴静注用(pH:2.0-3.5)、メイセリン静注用(pH:4.5-6.0)、メタボリン注射液(pH:2.5-4.5)、モダシン静注用(pH:5.8-7.8)、注射用ルシドリール(pH:3.5-4.5)、ロヒプノール静注用(pH:3.5-5.5→アルカリ性側で黄変)

ソルデム3輸液(200mL・500mL)[テルモ]
-ブドウ糖-電解質液 (維持液)-
組成:1袋 200mL中

ブドウ糖 5.4g
塩化ナトリウム 0.350g
塩化カリウム 0.30g

L-乳酸ナトリウム液
(L-乳酸ナトリウムとして)

0.896g
(0.448g)

〈電解質量〉1袋 200mL中

Na+ 10mEq
Cl? 10mEq
K+ 4mEq
L-Lactate? 4mEq

〈熱量〉:1袋 200mL中21.6kcal。
pH:4.5-7.0 。浸透圧比:約0.9 (生理食塩液に対する比) 。
用法・用量:通常成人1回500-1000mLを点滴静注する。投与速度は通常成人1時間あたり300-500mL、小児の場合、1時間あたり50-100mLとする。なお、年齢、症状、体重により適宜増減する。
貯法:室温保存。
<ソルデム3>

配合薬剤
(会社名)
含量 輸液量 配合変化
ファンギゾン
(ブリストル)
50mg 500mL 配合直後黄色混濁
ドイル注射用
(田辺三菱)
2g 500mL 24時間以内に力価低下
ソルダクトン静注用(ファイザー) 200mg 500mL 1時間以内に混濁
ソルダクトン静注用(ファイザー) 200mg 500mL 配合直後に沈殿混濁
アレビアチン注
(大日本住友)
250mg 500mL 1時間以内に混濁

ラシックス注のpHは8.6-9.6で、変化点pH:6.32で白濁→沈殿の変化を起こすと報告されている。ソルデム3輸液のpHは4.5-7.0であり、pH7.0の製品であれば、両剤間に配合変化は起きないと考えられるが、pH4.5の製品ではあるいは変化を起こす可能性が予測されるが、側管から投与する場合、接触面が少ないことが考えられるので、変化は見られない可能性がある。またラシックス注の大量投与時以外、注射速度の規定はないので、側管からの投与は問題ないと考える。但し、製品のpHによって変化が見られる場合も考えられるので、注入終了時までの観察が必要である。

1)ラシックス注添付文書,2012.10.
2)ソルデム3輸液添付文書,2011.12.
3)日本薬局方フロセミド注IF,2012.3.
4)ソルデム3輸液IF,2006.3.

           [014.26FUR:2012.10.6.古泉秀夫]