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「アダラートの副作用-歯肉肥厚」

水曜日, 10月 3rd, 2012

 

KW:副作用・歯肉肥厚・アダラート錠・nifedipine・カルシウム拮抗剤・Ca拮抗剤

Q:高血圧の治療目的でアダラートを服用中、歯科医師から歯茎が腫れているので中止するように云われた。どのように対応したらよいか

A:アダラート錠[nifedipine(バイエル)]は、第一世代のジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗剤である。
カルシウム拮抗剤(calcium channel blocker, CCB)とは、血管の平滑筋にあるカルシウムチャネルの機能を拮抗(阻害)し、血管拡張作用を示す薬剤である。適用症例として主に高血圧、狭心症があげられる。なお、カルシウム拮抗薬にはCYP3A4で代謝される薬剤が多く、腸管内のCYP3A4活性を阻害すると薬物血中濃度が過剰に上昇する事が知られている。このため、CYP3A4活性阻害作用を持つフラノクマリン類を多く含むグレープフルーツジュースとの飲みあわせは一般的に行うべきではない。但し、肝初回通過効果の影響が小さいアムロジピンなど一部の薬剤では、グレープフルーツジュースによるCYP3A4活性阻害作用の影響が比較的少ないことが知られている。

カルシウム拮抗薬の副作用としての歯肉肥厚は、次の薬剤で報告されている。

amlodipine besilate[アムロジン錠(大日本住友)]口腔(連用により歯肉肥厚)→中止。
amlodipine besilate・atorvastatin calcium hydrate[カデュエット配合錠(ファイザー)]消化器(連用により歯肉肥厚)。
aranidipine[サプレスタカプセル(大鵬)]-記載無し-
azelnidipine[カルブロック錠(第一三共)]消化器(歯肉肥厚)。
barnidipine hydrochloride[ヒポカカプセル(アステラス)]口腔(歯肉肥厚)。
benidipine hydrochloride[コニール錠(協和醗酵キリン)]口腔(歯肉肥厚)。
cilnidipine[アテレック錠(味の素)]消化器(歯肉肥厚)。
diltiazem hydrochloride[ヘルベッサー錠(田辺三菱)その他(歯肉肥厚)。
efonidipine hydrochloride ethanolate[ランデル錠(日産化学)]口腔(歯肉肥厚)。
felodipine[スプレンジール錠(アストラゼネカ)]口腔(歯肉肥厚)→中止。
nicardipine hydrochloride[ペルジピン錠(アステラス)]口腔(歯肉肥厚)→中止。
nifedipine[アダラート錠(バイエル)]口腔(歯肉肥厚)。
nilvadipine[ニバジール錠(アステラス)]口腔(歯肉肥厚)→連用により発現・中止。
nisoldipine[バイミカード錠(バイエル)]口腔(類薬:歯肉肥厚)。
nitrendipine[バイロテンシン錠(田辺三菱)口腔(歯肉肥厚)。
manidipine hydrochloride[カルスロット錠(武田)]口腔(歯肉肥厚)→中止。
verapamil hydrochloride[ワソラン錠(エーザイ)]口腔(連用により歯肉肥厚)→中止。

カルシウム拮抗薬の内aranidipine[サプレスタカプセル(大鵬)]については、2009年6月改訂の添付文書中に『歯肉肥厚』の記載はされていないが、他の薬剤の添付文書中には全て記載されている。

歯肉肥厚(歯肉組織過形成)について次の報告がされている。

歯肉組織の過形成は炎症を伴わず、様々な薬物、特にフェニトイン、シクロスポリン、ニフェジピン又はあまり一般的ではないが、その他のカルシウムチャネル拮抗薬への反応として起こることがある。過形成は、瀰漫性で、比較的無血管の平滑性又は結節性歯肉肥大が特徴で、幾つかの歯を殆ど覆ってしまうことがある。肥大した組織は、しばしば切除される。可能な場合は、原因薬物を中止し、代替薬物の投与がされる。綿密な口腔衛生は、再発を最小限にする。

calcium拮抗剤による歯肉肥厚について、発症機序は不明とされているが、1種類のcalcium拮抗剤を除いて、他の全てのcalcium拮抗剤に報告されており、本剤の薬理作用に関連する物と考えられる。カルシウム拮抗剤の使用により細胞内へのcalcium流入が減少するため、歯肉の線維芽細胞でコラーゲンの分解が抑制され、歯肉肥大が起こるのではないか、又は末梢動脈と静脈の拡張バランスが崩れ、鬱血や浮腫が発現し、ブラッシングなどの刺激で炎症が起こるためではないかと考えられている。

1)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012
2)福島雅典・総監修:メルクマニュアル第18版日本語版;日経BP社,2007
3)アダラート錠インタビューフォーム,2010.5.
4)バイミカード錠インタビューフォーム,2012.2.
5)アムロジピン錠インタビューフォーム,2010.11.

                      [065.CAL:2012.7.12.古泉秀夫]