Archive for 4月 29th, 2011

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「ブホテニンについて」

金曜日, 4月 29th, 2011

 

KW:薬名検索・ブホテニン・ブフォテニン・bufotenine・幻覚作用・幻覚剤・バナナ・serotonin・セロトニン

Q:バナナに含まれているとされるブホテニンについて。本品に幻覚作用があるのか

A:ブホテニン(bufotenine)は、serotoninのN,N-ジメチル体で、マメ科植物あるいは茸類から得られるが、初めガマ(Bufo sp.)の皮膚分泌物として見出されこの名前が付いた。

その他、N,N-dimethylserotonin。C12H16N2O=204.27。両棲類、特にヒキガエル(蝦蟇:Bufo vulgaris Laur.)の皮膚分泌物の成分。また豆類や南アフリカ産の灌木、ある種の茸にも含まれている。化学的には、インドールアルキルアミン、tryptamine誘導体と見なすこともできる。メチル基がHに置換されたものがserotonin(5-hydroxytryptamine)である。茸のうちindolealkaloidに属するbufotenineを成分として含むのは、テングダケ属及びヒカゲダケ属であるとする報告が見られる。

ガマ毒の主な成分は強心性ステロイド類とインドール系alkaloid類である。indole系alkaloidの成分としては、serotoninやbufotenineなどが含まれ、これらの化合物には平滑筋収縮、血圧上昇、呼吸興奮、抗利尿作用がみられる。その他、頻脈、瞳孔散大などの交感神経興奮様の症状も現れる。bufotenineの合成品も出回っており、喫煙摂取により乱用される。ヒトでは中枢神経障害を起こす。

bufotenineは幻覚作用を呈し、薬理学的には幻覚薬とされる。その他、serotonin類似物質(serotoninのN-メチル体)として幻覚作用を示す等の報告も見られる。

以上の調査の結果からbufotenineに幻覚作用があることは確認されたが、バナナの成分としてbufotenineが含まれるという確証は得られなかった。

1)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
2)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005
3)今堀和友・他監修:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
4)長沢栄史・監修:フィールドベスト図鑑-日本の毒きのこ;学習研究社,2003
5)船山信次:毒と薬の科学-毒から見た薬・薬から見た毒-;朝倉書店,2007

 

  [011.1.BUF:古泉秀夫.2010.6.12.]    

「ロートコンの薬理作用と副作用」

金曜日, 4月 29th, 2011

 

KW:薬名検索・OTC薬・ロートコン・薬理作用・副作用・莨

「ブロッコリーの肝毒性」

金曜日, 4月 29th, 2011

KW:健康食品・ブロッコリー・broccoli・緑花野菜・グルコシノレート・glucosinolate・アブラナ科・sulphoraphane・スルフォラファン・フィトケミカル・phytochemica・植物化学物質

Q:ブロッコリージュースによる肝障害

A:ブロッコリージュース飲用による肝障害の報告は次の通り見られる。
『肥満改善を期待して摂取したブロッコリージュースによる肝毒性の症例報告』[EurJ Gastroenterol Hepatol. 2010 Jul;22(7):898.]。
報告されている症例は『肥満の56歳女性(トルコ)が、肥満改善を期待してブロッコリージュースを800mL/日、4週間摂取したところ、ALT値、AST値、γ-GTP値が上昇した。摂取中止により改善したため、摂取したブロッコリージュースとの因果関係が疑われる肝毒性と診断された』とするものである。

学名:Brassica oleracea botrytis L.あるいはBrassica oleracea botrytis cymosa。英名:broccoli。和名:緑花野菜。分類:アブラナ科アブラナ属。原産地:地中海東部、イタリアと考えられている。
可食部100g当たりエネルギー33kcal・水分89.0g・蛋白質4.3g・炭水化物5.2g。
無機質(カリウム360mg・カルシウム38mg・鉄1.0mg)。
vitamin A(β-carotene当量)810μg・vitamin B1 0.14mg・vitamin B2 0.20mg・葉酸210μg・パントテン酸1.12mg・vitamin C 120mg・食物繊維4.4g。

グルコシノレート(glucosinolate)類はアブラナ科、フウチョウソウ科、トウダイグサ科、ヤマゴボウ科、モクセイソウ科、ノウゼンカズラ科の多くの植物に見出されており、潰した組織にある刺激臭味の性状の要因となっている。その濃度は葉の組織よりも種子に高い。glucosinolateは青酸配糖体と幾つかの点で共通の性質を持っている。glucosinolateは分子内に硫黄(S)と窒素(N)を含んだ水性アニオンである配糖体である。損傷を受けた植物組織に於いて酵素的に加水分解を受け、強い毒性を持つ物質を生成し、植物内でのその生成に関しては青酸配糖体生合成経路の初期段階が共通である。これらの化合物とその分解産物は捕食者を忌避させるが、実際には誘引する場合もある。

アブラナ科のキャベツとその類縁作物につく毛虫がいる。食物に含まれるglucosinolate由来の加水分解産物を摂取することにより甲状腺腫を誘導したり、甲状腺が肥大化するという証拠がある。菜種油中のprogoitrinは加水分解によりオキサゾリジン-2-チオンであるgoitorinを生成する。これは強力な甲状腺腫誘発物質であり、ヨウ素の取り込みとチロキシン生成を阻害する。glucosinolateの甲状腺腫誘発活性は単にヨウ素を投与するだけでは軽減されない。この事実が菜種油の搾り滓が動物の飼料として経済的に利用することに対する制限となっており、glucosinolateが非常に低い株しか用いられない。
broccoli由来のsulphoraphane(スルフォラファン)の前駆体はglucosinolateである。glucoraphanin(グルコラファニン)は医薬用としての利点を持っており、癌誘発剤の解毒化酵素を誘導し、生体異物の除去を加速する。栽培期間の短い芽生えは、成熟した植物体よりも10-100倍のglucoraphaninを含んでおり、broccoliは食事療法上重要な野菜と位置づけられる。

glucosinolateは植物の苦味成分である。料理したbroccoliに含まれる配糖体であるシニグリン(sinigrin)も苦味成分の一つである。また、アブラナ属植物は、酵素ミロシナーゼ(myrosinase)を保有する。myrosinaseは、中性で水の存在下でglucosinolate類を開裂し、グルコース残基を産生する。その時、残りの分子は素早く変換し、イソチオシアネート(S=C=N-R)、ニトリル(?C≡N)、あるいはチオシアネート(N=C-S-R)を生成する。これら三種類の化合物類は、植物自身を保護するために役立つ活性成分である。植物自身が損傷から予防するために酵素myrosinaseとglucosinolate類は細胞の分離した隔室に貯蔵されている。この両成分は生理的損傷の状態の時に、互いに放出し、植物自体を損傷から防御する。

上記報告以外にもbroccoli中に含まれるphytochemical(植物化学物質)には多様なものがあり、植物組織損傷防御物質も含まれていることから、それらのphytochemicalが肝毒性を発揮したと考えられる。broccoli juice 800mL/日を4週間連続摂取というのはある意味で過剰摂取ではないかと考えられるので、野菜juiceとはいえ、摂取する際には、摂取量に注意することが必要である。

1)独立行政法人国立栄養・健康研究所:http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail1585.html,2011.1.15.
2)白鳥草奈英・他監修:もっとからだにおいしい野菜の便利帳;高橋書店,2009
3)海老塚豊・監訳:医薬品天然物化学 原書第2版;南江堂,2004
4)本橋 登:シリーズ・生物活性フィトケミカル(38)ブロッコリーの健康効果(1)-免疫増強、ガン予防、糖尿改善-;薬事新報,No.2648:1019-1022(2010)

  [015.9.BRO:2011.1.16.古泉秀夫]