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『海晏寺あたり』

木曜日, 3月 17th, 2011

鬼城竜生    

京浜急行の“鮫洲駅”から“青物横丁駅”の間、左側の車窓から大きな寺院がみえる。最初“沢庵和尚”が住職をしていたという“東海寺”だとばかり思っていたが、前回“東海寺”と“海蔵海晏寺-01寺”を廻った結果からいえば、全く別な御寺だったということである。

2010年4月13日(火曜日)前回撮した“海蔵寺”の写真を確認するために出かけた序でに、気になっていた御寺を見てくることにした。実際に門前に行ってみると“海晏寺”という御寺であった。

曹洞宗系単立の海晏寺は、補陀落山と号し、もと三田功雲寺末であると紹介されている。建長三年(1251)頃鮫洲に浮上がった大鮫の死体から正観音木像が出てきたことから、その正観音木像を安置するための堂宇として、建長寺開山大覚禅師を迎え創建された。戦国時代に荒廃したが、徳川家康の命により再建、文禄二年(1593)本多佐渡守正信を迎えて、臨済宗建長寺派から曹洞宗系単立として中興開山し、現在に至っているとされる。

南北四十町余、東西十町余の寺域を与え、土木の工事が成って建長寺開山大覚禅師を迎えて開山とし、寺領百貫の地を寄附し、別に八十貫文の地を与え、寺中に四院二庵及び堂宇二ヵ所等を建てた。また弘安の頃、相模守平時宗は新たに堂を作り、所持の阿弥陀像を安置し、供養料二十貫文の地を寄附する。その後関東は荒海晏寺-02廃し、堂宇も又兵火によって焼失し、什宝はことごとくを失うのである。その後再造されることになったが、わずかに十分の一にすぎなかった。
嘗ての海晏寺の境内は、楓樹が多く、元禄頃から紅葉の名所となり、時季になると文人墨客が集まり境内に宴をはって遊山の酒に帰るのを忘れる程であったという。当時の俗謡に「あれ見やしゃんせ海晏寺、真間や高尾や竜田でも、及びないぞえ紅葉狩り」というのが流行したと云われるの説明がされている。江戸時代には「御殿山の桜」とならび紅葉の名所として知られていた。

海晏寺には、宇和島藩の出身で維新後、大審院長となり、大津事件では司法権の独立を護ったとされる児島惟謙の墓があるとされる。他に岩倉具視、松平春嶽(幕末の福井藩藩主)、中根雪江、由利公正、山内豊信(土佐藩藩主)の墓があるが、一般には公開されていない。

今回は、携帯電話を持って出るのを忘れたため、歩行数の把握ができないので、海晏寺の写真を何枚か写し、そのまま帰ろうと思ったが、昼飯を食いに入った鮫洲駅の裏通りに八幡神社があるのを見つけ、序でに写真を撮らせて戴くことにした。

鮫洲八幡神社は古くは御林八幡宮と称せられていた。主神として誉田別尊(ホンダワケノミコト)を奉斎し、気長足姫尊(オキナガタラシヒメノミコト)を配祀、伊弉諾尊(イザナギノミコト)、伊弉海晏寺-04海晏寺-12海晏寺-18丹尊(イザナミノミコト)を合祀しているとされる。また、境内末社として出世稲荷神社、富士浅間大神、更に池の中に厳島(いつくしま)神社(通称 弁天社)と漁呉玉(なごたま) 神社(通称水神社)が祀られていると紹介されている。

創祀の年暦は定かではないとされるが、新篇武蔵風土記稿、府内場末沿革図書等に、既に記載が見られるとされている。寛文八年三月七日書上帳にも記載のあることから、寛文年間(1661-1672)以前の御林町草創より建立され、同村総鎮守であったものと推測されている。明治五年の神仏分離の制定前は、常林寺(来迎院)、来福寺が別当とされていた。元文三年修復遷宮し、文化十年(1813)再建されました。

境内には土地柄、猟師の寄進した嘉永二年(1849)造立の狛犬や安政三年(1856)造立の灯篭が見られる。また、境内を囲む古い石垣も猟師の寄進したものだとされる。現在の社殿は昭和四十七年(1972)に遷宮されたものだとされる。

鮫洲八幡神社のある鮫洲は、旧東海道沿いにあり、古くは御林町(おはやしまち)と呼ばれ、猟師(漁師)町であり、御菜肴八ヵ浦 (おさいさかなはちかうら)内のひとつに数えられていたとする紹介がされている。御菜肴八ヶ浦とは、新鮮な魚介類を将軍家に献上する義務を持たされた漁場であるとされる。また、江戸湾四十四ヵ浦の漁業上の元締めとなって、優先的な特権を持っていたとされる。八ヵ浦とは本芝・芝金浦・品川浦・御林・羽田・生麦・神奈川・新宿の各猟師町のことをいう。

更にウロウロしていたら“青雲稲荷神社”「この先左側です」とする矢印があったのでそれに連れて行ってみたところ、自動車の通行は無理という狭い道なりに暫く行くと、小さな社があり、左側の社務所の前に手水舎があり、信者と思われる人が掃除をしていた。社殿前の狐の写真を撮ろうとしたところ、網を外しましょうかと行ってくれたが有り難く御辞退し御賽銭を上げさせて戴き、写真を撮らせて戴いた。

    (2010.6.29.)