Archive for 3月 4th, 2011

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「ロシグリタゾンについて」

金曜日, 3月 4th, 2011

 

KW:薬名検索・ロシグリタゾン・rosiglitazone・アバンディア・avandia・BRL-49653C・2型糖尿病治療薬

Q:アバンディアについて

A:アバンディア(avandia)は、英国のグラクソ・スミスクライン社が販売する糖尿病治療薬で、チアゾリジン系のロシグリダゾン(rosiglitazone)の製剤である。2型糖尿病薬治療薬。インスリン感受性の亢進。食事の有無に関係なく服用できる。活動性肝疾患を持つ患者に対しては禁忌とする報告が見られる。国内ではBRL-49653Cとして第III相試験が実施されていると報告されている。

但し、本薬に関しては米食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)が、2010年9月23日、『使用制限』について通知した。欧州では市場から回収、米国でも原則として使用を禁止する。回収あるいは禁止の理由は、心臓発作を起こし易くする副作用があると見られるためとされている。

その他、本剤に関して2007年11月21日に、使用上の注意に警告として『心筋虚血リスク』が追加された。

米国食品医薬品局(FDA)は11月14日、2型糖尿病治療薬ロシグリタゾン(商品名:アバンディア)の黒枠警告に心筋虚血リスクに関する項目を追加することに、製造販売元のGlaxoSmithKline社が同意したと発表した。今回の項目追加は、2007年7月に開催された諮問委員会における判断に基づくものだ。

FDAが発表した声明によると、GlaxoSmithKline社は、Avandiaの現行ラベルの注意書きに、心臓発作を引き起こす恐れについて追記することに同意したとしている。

1)読売新聞,第48347号,2010.9.24.
2)飯野靖彦・監訳:スカット・モンキーハンドブック-基本的臨床技能の手引き;MEDSi,2003
4)http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/

200711/504845.html,2010.10.
5)Avandia:http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/

2312452/2357413,2010.10.
6)http://www.medmk.com/mm/mailmg/1230_mg.htm,2011.2.

        [011.1.ROS:2011.2.11.古泉秀夫]     

「紅麹による肝機能障害」

金曜日, 3月 4th, 2011

 

KW:健康食品・有害作用・紅麹・肝機能障害・紅麹菌・Red Yeast・ロバスタチン・lovastatin・モナコリンK・Monacolin・γ-アミノ酪酸・GABA

Q:紅麹の有害作用として肝機能障害は在るか

A:紅麹菌(Monascus purpureus Went)は、英名をRed Yeastといい、不整子嚢菌綱(Plectomycetes)ベニコウジカビ科(Monascaceae) Monascus属。
基原:Monascus pilosus、M.purpureus、M.ruber、M.ankaなど。Monascus属の糸状菌及び蒸し米などに培養した麹米。

使用部位:麹菌全体もしくは抽出物。

有効成分:Monacolin J、K(=lovastatin;ロバスタチン;モナコリンK)、L、M、γ-アミノ酪酸(GABA)、色素(黄・赤を主とする10種以上の色素の混合物)。原料となる米に紅麹菌を植菌、培養、回収し失活させた物である。

作用機序:モナコリン類はmevalonic acidの合成酵素であるHMG-CoA reductase(還元酵素)を阻害する作用があり、コレステロール合成を減少させる。Monacolin Kをlead化合物にしてコレステロール合成阻害の医薬品(simvastatin)が開発された。

紅麹菌が産生するlovastatinが、コレステロールを合成するHMG-CoA還元酵素の作用を阻害することは既に述べたが、HMG-CoA還元酵素を阻害することにより血中のコレステロール値を下げる。同じスタチン系の薬剤が医薬品として利用されている。紅麹色素に含まれるγ-アミノ酪酸(GABA)が、交感神経の抑制、血管拡張及び抗利尿ホルモンの抑制により、血圧の正常化に作用する。
相互作用:紅麹はHMG-CoA還元酵素を阻害する作用が認められており、高脂血症治療薬の作用を強め、薬の必要量を減少させることが期待できるが、併用する場合には注意する。

有効成分含有量:紅麹粉末1g中にロバスタチン1.5mg、γ-アミノ酪酸0.2mg(計算値)。

有害作用:3ヵ月までの経口による使用では殆どの事例で有害作用は見られなかった。更に長期になった場合はnon dataのため判断不能。胃の不調、胸焼け、鼓腸、眩暈、肝機能障害を惹起する可能性。稀に重篤な肝障害。紅麹を吸い込んだ後、重篤なアレルギー反応を生じる可能性がある。18歳未満の小児については安全性未確認、摂取禁止。妊婦・授乳婦は摂取禁止。肝臓疾患の者は摂取禁止。紅麹摂取者はalcoholの飲用により肝機能障害の危険性上昇。コレステロール降下作用を有するStatin系薬剤を服用中の者では紅麹の摂取は禁止。

CYP3A4の基質となる医薬品は、肝臓における紅麹の代謝を抑制する可能性がある。このような医薬品の服用者が紅麹を摂取すると、紅麹の作用が増強され、有害作用が強く発現する可能性があり、医薬品服用中の者では、紅麹の使用前に、医師、薬剤師に相談する。

その他、紅麹の有害作用について次の報告がされている。

*紅麹の副作用として頭痛、胃炎、腹部不快感、筋肉痛、腎障害、肝臓酵素活性の上昇を惹起することがある。臨床試験ではその他に胸焼け、鼓腸、眩暈などの副作用はあったが試験を中止するほどではなかった。
*肝不全患者およびそのリスクのある人、肝機能検査で異常が見られた人は使用を避ける。
*紅麹に含まれるメビニン酸により、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(Statin系薬剤)と同様の横紋筋融解が起きることが考えられる。
*simvastatin(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)40mg/日の使用による筋障害の経験を有する高脂血症の女性(61歳)が、紅麹のハーブ製剤を1,200mg/日、約3ヵ月間摂取したところ、激しい広範囲の筋痛と血清クレアチンキナーゼ値の上昇を示したという報告がある。
*62歳女性がモンテルカストナトリウム(気管支喘息治療薬)とフルオキセチン(抗うつ薬)を併用し、さらに紅麹米600mg/カプセルを2カプセル/日、4ヵ月程度摂取したところ、吐き気、嘔吐、下痢、悪寒、発熱などの症状を10週間呈した後、症候性肝炎と診断された。症状は紅麹米の摂取中止により改善した。

1)吉川敏一・他編:医療従事者のためのサプリメント機能性食品ガイド;講談社,2004
2)北川 勲・他:食品薬学ハンドブック;講談社サイエンティフィク,2005
3)田中平三・他監訳:健康食品のすべて;同文書院,2006
4)「健康食品」の有効性・安全性情報;http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail62.html,2011.1.5.

    [015.9.MON;2011.1.5.古泉秀夫]