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「ギラン・バレー症候群について」

火曜日, 8月 24th, 2010

KW:語彙解釈・ ギランバレー症候群・Guillain-Barré syndrome・GBS・急性多発神経炎・手袋感覚障害・靴下型感覚障害・自己免疫疾患

 

Q:ギラン・バレー症候群について

 

A:ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は、下肢から上行する運動麻痺を主徴候とする急性多発神経炎である。手袋・靴下型の感覚障害、顔面神経麻痺、外眼筋麻痺などの脳神経麻痺、更に呼吸筋麻痺や致死的な血圧変動、不整脈などの自律神経障害も呈する。

ランドリー(Landry JPO)によって最初に記載され(1859)ギラン(Guillain G)、バレー(Barré JA)、ストロール(Strohl A)によって再び注目された(1916)とする報告が見られる。

GBSは感染症の先行が多くの患者で認められ、特にCampylobacter jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)による腹痛・下痢、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV)、EBウイルス、Mycoplama pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ)による咽頭痛・呼吸器症状が多い。GBSでは発症当初から末梢神経の構成成分のガングリオシド(Ganglioside)に対する抗体が血清中に検出されることから、抗体媒介性の自己免疫疾患説が有力である。

GBSは従前は予後良好な脱髄性多発神経炎と見なされていたが、抗ガングリオシド抗体の発見により

(1)軸索が障害される機序、予後が不良な型の存在(特にCampylobacter jejuni感染先行例)
(2)Fisher症候群*(外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失)・対麻痺型・咽頭・頸部・上腕限局型などの亜型がある

ことが判明した。

感染症が先行し、下肢から上行する運動麻痺を主徴とする急性多発神経炎ではGBSを考える。四肢の左右対称性の弛緩性麻痺と腱反射消失及びラセーグ徴候を認める。髄液で蛋白細胞解離(蛋白が増加)、運動神経伝導速度測定で遅延やMRIで馬尾に造影効果陽性を認めるが、GBSに特異的な異常ではない。特異的異常は、抗GM1抗体などの抗ガングリオシド抗体を血清で認めることである。

GBSの治療に関しては、日本神経治療学会/日本神経免疫学会の「GBS治療ガイドライン」に沿う治療を行う。

*フィッシャー症候群(Fisher’s syndrome)は、1956年Miller Fisherが、小脳性失調、深部腱反射の消失、外眼筋麻痺を呈した剖検例を経験し、脳幹あるいは小脳病変が無くとも、これらの症状が出現することを示し、GBSの変異型と位置付けた。本症ではガングリオシドに対する血清の抗GQ1b抗体が高率に上昇しており診断に役立つ。

*ガングリオシド(ganglioside=シアロ糖脂質(sialoglycolipid)):シアル酸含有のスフィンゴ糖脂質の総称。脳から最初に分離されたが、全身臓器に分布。細胞膜表面に存在し、ホルモンなどの受容体として、また細胞相互の識別などに関与する。

 

1)医学書院医学大辞典第2版;医学書院,2009
2)山口徹・他総編集:今日の治療指針2009;医学書院,2009
3)最新医学大辞典 第3版;医歯薬出版株式会社,2005

                                                [615.8.GBS:2010.6.16.古泉秀夫]