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『トロポミオシンについて』

金曜日, 4月 2nd, 2010

KW:語彙解釈・トロポミオシン・tropomyosin・TM・魚介類・シーフード・軟体動物・アクチン・actin・トロポニン・troponin・仮性アレルゲン・仮性allergen・海老・蟹・烏賊

Q:トロポミオシンについて

A:トロポミオシン(tropomyosin)について、次の報告が見られる。

*tropomyosin。略号:TM。分子量6.6万。長さ40nm、幅1.5nmの棒状の分子でK.Bailey(1946)により発見された。3.3万のサブユニットからなり、それぞれほぼ完全なα-ヘリックス鎖からなる二重螺旋構造をなし、互いに捻れ合って分子となる。troponinと共にアクトミオシンATPアーゼのCa2+ 感受性を回復させる。細い筋フィラメントはactin、tropomyosin、troponinを7:1:1分子比で含む。筋肉のみならず真性粘菌、血小板、脳からも得られる。

actin:筋収縮を発現する筋肉細胞内の筋原繊維を構成している二つのフィラメントのうち細いフィラメントを構成している筋肉蛋白質。

troponin:筋原線維の収縮にかかわる物質。

その他、tropomyosinについて、次の報告も見られる。

筋肉細胞内の筋収縮を発現する筋原繊維を構成する二つのフィラメントのうち細いフィラメントを構成している筋肉蛋白質。低塩濃度では重合体であり、塩を加えると単分子で存在する。分子量6万、2本のα-ヘリックス鎖からなる二重螺旋構造で、長さ40nmの棒状分子である。アクチンフィラメントがtropomyosinを囲んで配列し、更にその長さの方向に40nmの間隔でtroponinが結合して細いフィラメントが形成されている。troponinに結合したCa2+イオンはtropomyosinを通じて、ミオシン、actinの相互作用に影響を与えていると考えられている。

魚介類(魚、甲殻類、軟体動物)のうち魚や甲殻類に対するアレルギーについては各種の報告がされている。また軟体動物については、海水、淡水、陸上に棲む多くの生物からなり、ある種の軟体動物は重要な食料である。軟体動物の中には、巻貝、牡蠣、アサリ、イガイ、烏賊、アワビ、蛸など食物アレルギー反応の症例報告が示されているものがある。

軟体動物の主要allergenは、筋蛋白質(tropomyosin)である。tropomyosinは甲殻類やチリダニ、ゴキブリ、その他の昆虫などにも見られるallergenである。研究が進んでいる軟体動物及び別の甲殻類のtropomyosinでは、類似性もあるが、アレルギーを示す構造部分で、重要な違いもある。軟体動物にはtropomyosinの他にも多数のallergenがあるが、詳細は不明である。

血清学的・臨床的に軟体動物と甲殻類やハウスダストのダニとの交差反応性が報告されている。軟体動物allergenは、魚allergenとは交差反応性はないが、アニサキスが寄生している魚に軟体動物アレルギーの患者が反応する可能性はある。軟体動物のアレルギー誘発性は、食品の加工により余り減少しない。tropomyosinのアレルギー誘発性は耐熱性である。他の軟体動物allergenのアレルギー誘発性は、加熱で消失するものもあるが、逆に加熱によりアレルギー誘発性が増加するものもある。臨床症状を誘発する最低用量についての情報は殆ど無い。一種類の乾燥巻貝による二重盲検プラセボ対象食物投与試験では、反応は数百mgの範囲で観察されている。

その他、tropomyosinについて、actinの働きを調節する繊維状のactin結合蛋白質である。2本のα-ヘリックス鎖からなるコイルドコイルの構造をとり、特に筋収縮を行う上で重要な働きをしている。troponin複合体が筋繊維中のtropomyosinに結合し、ミオシン結合を調節することで、筋収縮を調節している。tropomyosinは種毎に違いが大きい蛋白質であるため、アレルギー源となることもある。例えばエビやハウスダスト中のチリダニ類などのtropomyosinが原因で、アレルギーを発症する人もいるの報告も見られる。

またtropomyosinは、海老、蟹、烏賊等の仮性アレルゲンの一つであると考えられている。

1)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998

2)国立医薬品食品衛生研究所安全情報部;食品安全情報,No.7/2006.3.31

3)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999

4)小林陽之助・監修:食物アレルギーの治療と管理;診断と治療社,2004

   [615.8.TRO:2009.12.28.古泉秀夫]