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医薬品販売制度の改正

土曜日, 6月 28th, 2008

医薬品情報21
古泉秀夫

2009年度になると改正薬事法が全面的に施行される。

その中で新しい一般用医薬品(OTC薬)の販売制度も施行されるが、今回の医薬品販売制度改正のポイントは、リスクの程度に応じた患者(生活者)への情報提供・相談体制の整備が求められるということである。

「現行」ではリスクの程度に係わらず、情報提供について一律の扱いとされていたものが、今回の改正では、リスクの程度に応じて3グループに分類し、情報提供を重点化することとされている。

リスクの区分は

『第一類医薬品』:特にリスクの高い医薬品
『第二類医薬品』:リスクが比較的高い医薬品
『第三類医薬品』:リスクが比較的低い医薬品

の3種に分類し、『第一類医薬品』は薬剤師以外の販売は認めない。『第二類医薬品』と『第三類医薬品』の販売については、新たに導入される『登録販売者』という新たな資格制度を導入し、資格試験の合格者にのみ販売を担当させることになっている。

情報提供に関しては、『質問がなくても行う積極的な情報提供』を行うとしており、

『第一類医薬品』では、『文書による情報提供を義務付け』
『第二類医薬品』では、情報提供は『努力義務』
『第三類医薬品』では不要(薬事情法上定め無し)

とされている。

但し『相談があった場合の応答』については、『第一類医薬品』・『第二類医薬品』・『第三類医薬品』とも『義務』があるとされている。

また、この区分について、当初厚生労働省は外函の目立つ部分に『A類医薬品・B類医薬品』などの記載をすることの提案をしたようであるが、最終的には『第一類医薬品』・『第二類医薬品』等の法規上の分類名を記載することにしたようである。当初の提案の理由は、外函に印刷する隙間の問題で、アルファベットの方が印字空間が少なくて済むという、企業側の希望だったようである。しかし、どの様な場合でも一物二名称にならない配慮は必要である。特にOTC薬の場合、一般人に情報の伝達をしなければならないので、法律の規定と異なる表記を考慮すること自体、安易すぎる。物は医薬品である。箱の見かけの意匠に拘るよりは、正確な情報を提供できるものにすべきである。

最低限『服用禁忌』購入後に添付文書を見なければ判らないでは問題にならない。購入した薬の『服用禁忌』に該当した場合、開封した薬を店で引き取るということがない限り、購入者自身が前もって判るように情報の提供をすべきである。

2008年から『登録販売者』の試験が始まる。『第二類医薬品』・『第三類医薬品』は比較的安全な薬だという理屈で、薬剤師の管理から外してしまったが、嘗て我が国はただの風邪薬で何人かが死亡したという薬害を経験している。

その経過は次の通りである。

*1959年以降1965年までの間に合計38人が死亡。[アンプル入りかぜ薬によるショック死事件(大衆薬)]。
2月16日千葉県下でアンプル入り風邪薬服用の老人と15歳の少女が死亡報道(朝日新聞)。
*2月17日静岡県の伊東で39歳の女性死亡。
*2月18日静岡県の伊東で28歳の女性死亡。
*2月20日千葉県八千代市で22歳の女性死亡。新聞報道されただけでも、3月4日迄に11名の死亡報道。
*3月1日杏林製薬の同種製剤服用による死亡。
*3月2日田辺製薬の同種製剤服用による死亡。
*3月4日大正製薬の製品服用者が死亡。製品回収の不備による死亡事故。

*アンプル剤という剤形の問題-他の剤形に比較して吸収が速く、毒性の発現が著しく強いことが国立衛生試験所での動物試験の結果から判明したとする事故原因を中央薬事審議会答申に記載。主成分であるアミノピリン・スルピリンの含有量が、1回の常用量を超える製品が市販されていた。

OTC(Over the Counter)薬は、Self-Medicationを建前として販売している。使用者が自ら選択する薬であり、あまり差し出がましい口出しをしない方がよいと考える薬剤師が、従来は見られた。その意味で今回の『第一類医薬品』は、文書による情報提供が義務付けられており、判りやすい情報提供がされることを期待している。最も心配なのは『第二類医薬品』で、通常の風邪薬などはこの分類に入ると思われるので、情報提供が努力義務でいいのかという点に疑問を持つのである。

医薬品販売制度改正のポイント

リスク区分 質問がなくても行う積極的な情報提供 相談があった場合の応答
第一類医薬品:特にリスクの高い医薬品 文書による情報提供を義務付け 義務
第二類医薬品:リスクが比較的高い医薬品 努力義務 義務
第三類医薬品:リスクが比較的低い医薬品 不要(薬事法上定め無し) 義務

(2008.3.15.)