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「ミヤマエンレイソウの毒性」□□□□□□□□□

土曜日, 7月 14th, 2018

対象物□□□□□□□□□□□□□□□□image

対象:ミヤマエンレイソウ(深山延齢草)。
学名: Trillium tschonoskii Maxim.
分類:ユリ科エンレイソウ属又は[シュロソウ科エンレイソウ属]。
英名:
別名:ヤマミツバ、タチアオイ(立葵)、シロバナエンレイソウ(白花延齢草)。延齢草根(中薬)。

成 分□□□□□□□□□□□□□□□□

ステロイド系saponin。ジオスゲニンのグリコンド類。saponinによる催吐作用がある。その他、トリリン(trillin)。

一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□

太く短い根茎から、高さ20-40cmの茎が1本伸び、その先端に3枚の葉を輪生する。葉は葉柄を持たず、茎から直接生ずる。葉の形状は丸みを帯びたひし形で、直径は10-20cm程度。3枚の葉の中心から短い花柄が伸び、3枚の外花被片と3枚の白い花弁状の内花被片、6本の雄蕊をもつ花を生じる。内花被片は外花被片より長く、外花被片の先端がとがる。花期は5月~6月。発芽してから花が咲くまでに10年は懸かるという成長の遅さから『延齢草』の命名がされたという。image
日本各地、特に国内では北海道に分布し、本州、四国、九州にも分布、山林の樹陰に生える多年草。外国ではサハリン、朝鮮に分布朝鮮、中国、樺太に分布する。

毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□

有毒なサポニン等を含む。また、根及び茎の根元に毒がある。毒の成分はトリリン(trillin)等で、良く茹でて十分に水に晒すことで、毒性を低下させられる。また、多食しないことが重要である。
根茎を採り、乾燥したものを延齢草根という。漢薬として、高血圧・神経衰弱・健胃・腹痛・食あたりに利用する場合もあるが、民間治療薬として使用するのは非常に危険なので絶対に使用しない。
saponinには界面活性作用があるため細胞膜を破壊する性質があり、血液に入った場合には赤血球を破壊(溶血作用)したり、水に溶かすと水生動物の鰓の表面を傷つけたりすることから魚毒性を発揮するものもある。saponinはヒトの食物中で必要な高比重リポタンパク-コレステロールの吸収を阻害する。こうした生理活性を持つ物質の作用の強いものにはしばしば経口毒性があり、蕁麻疹や多形滲出性紅斑を起こす。特に毒性の強いものはサポトキシンと呼ばれる。構造の類似した物質でも、強心配糖体(ジギタリスのジギトキシン、ジゴキシン等)や植物ステロール配糖体は、普通saponinには含めない。

症 状□□□□□□□□□□□□□□□□

食べ過ぎると嘔吐、下痢を起こすが、口にしても苦いので吐き出して、大事に至ることは少ない。若芽を擬宝珠類と誤食する可能性がある。image

処 置□□□□□□□□□□□□□□□□

基本的処置として、牛乳・卵白を投与する。対症療法。

事 例□□□□□□□□□□□□□□□□

食用利用の機会が少ないためか、中毒例の報告は多くない。

備 考□□□□□□□□□□□□□□□□

中国では、民間薬として用いられていて、漢名では、延齢草根(えんれいそうこん)といい、高血圧、神経衰弱、健胃、腹痛、食あたりに、乾燥した根茎(こんけい)を、1日量3~5グラム程度煮出して服用する。
熟した果実は甘く、生のままでも食べれる。 甘み成分の元はエライオソームと呼ばれる蟻が好む物質で、蟻は種を巣に運びエライオソームを食べて、種を捨てる。その結果、種は遠くに運んで貰える上「蟻のゴミ捨て場」に植えて貰う事が出来る。

文 献□□□□□□□□□□□□□□□□image

1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 II;北隆館,2000
2)川原勝征:毒毒植物図鑑;南方新社,2017
3)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988

調査者 古泉秀夫 分類 63.099.tri 記入日2018.6.24.