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『疑義照会は分業の根幹』

水曜日, 12月 25th, 2013

      魍魎亭主人

1回2錠とする処方せんの記載に対して、実際の調剤は1回1錠になっていたとして薬局の窓口で、苦情を申し入れたところ、『字が読みづらかったので、薬剤師同士で相談し管理薬剤師が1錠と判断した』との回答だったという[薬事新報No.2806:1070(2013)]。

ところでその管理薬剤師なる方に、「貴方は本当に薬剤師なのですか?」とお訊ねしたい所である。日本医師会のみならず患者からも、疑問の声が上がりつつある院外処方箋の発行、いわゆる医薬分業の本来の意味は、医師の発行する処方せんに対し、薬剤師が鑑査し、患者の薬物療法に対して適正な医薬品が出されていることを確認することなのである。そのために薬剤師がしなければならないのは、曖昧な根拠に基づいて勝手な判断をして間違った調剤をするのではなく、医師に『疑義照会』をして不明な点を正した後、調剤することなのである。

『疑義照会』については、薬剤師法24条に「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されている。

今回の事例の如く判断に迷った場合、眼の利かない薬剤師同士が相談して結論を出す話ではないのである。自分勝手に、訳の解らない判断をするのではなく、疑義照会をしなければならなかったのである。24条の違反には、罰則規定(第32条)があり、50万円以下の罰金が科されることになっている。調剤薬局の薬剤師は、調剤過誤の恐ろしさを知らないとでも云うのであろうか。

最近、薬剤師の方々は、調剤は助手に任せて鑑査だけすればいいのではないか。本来の薬剤師の業務である病棟業務-服薬指導を充実させる等と宣う方をお見受けするが、薬剤師の業務で、法律で守られているのは調剤業務のみであり、調剤した薬を正しく服用して戴くために、服薬指導は、調剤業務の一つとして存在しているに過ぎない。

調剤を止めて服薬指導だけを実施したとすれば、他人が調剤した薬の服薬指導をすることになってしまう。その時に調剤された結果が間違っていたとすれば、誰が責任を取ることになるのか。目の前に患者がいて、薬剤師が持っている薬に調剤ミスがあり、自分が調剤した薬ではないとすると、調剤を実施した助手の責任を追求する気なのか、あるいは鑑査を行った薬剤師の責任だとでも云うのでろうか。

いずれにしろ薬剤師である以上、調剤を大切にする思いを忘れてはならない。院内全体の薬の管理をする。それが薬剤師の役割であり、病棟だとか、外来だとか、仕事の上で区分けする必要はないのではないか。

        (2013.12.17.)