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「利尿剤の効力比較」

日曜日, 6月 23rd, 2013

 

KW:臨床薬理・薬効薬理・利尿剤・効力比較・ラシックス・furosemide・ループ利尿薬・フルイトラン錠trichlormethiazide・thiazide系利尿薬

Q:ラシックス錠40mgを服用中の患者が頻繁に排尿を訴える。フルイトラン錠に変更することで、排尿頻度を下げることは可能か。

A:次の通り報告されている。
ラシックス(サノフィ)は、1錠中にfurosemideを10・20・40mgを含有する製剤と1g中に40mgを含有するラシックス細粒4%の製剤が存在する。
furosemideはループ利尿薬に分類される薬で、利尿効果を目的とする場合は、ループ利尿薬を使用する。ループ利尿薬は、利尿効果は強力であるが、降圧効果は比較的弱い。うっ血性心不全、他の浮腫あるいは体液貯留等利尿効果の期待される疾患では第一選択薬である。ループ利尿薬はヘレン係蹄の上行脚髄質において管腔側より作用し、Na、chlorideの再吸収を抑制する。

利点:①強力な利尿効果がある。②多用量まで直線的な用量-効果関係にある。③増量によって効果が増強する。④腎機能低下例でも有効である。
欠点:①利尿効果が強すぎ、脱水、電解質異常、血栓塞栓症等を惹起することがある。②薬剤間で利尿効果に大きな差はないが、furosemideが用いられることが多い。
等の報告が見られる。また、利尿効果を期待する場合にはループ利尿薬が主に用いられるが、利尿効果が強力すぎる場合には、サイアザイド系利尿薬を用いる。

§健常人に40mgを経口投与したとき、血中濃度のピークは1-2時間目に最大、半減期は3.54±0.77時間。経口投与後1時間以内に効果発現、約6時間持続する。大部分が代謝を受けずに未変化体として尿と糞便中に排泄される。健常人に経口投与時、24時間後には尿中排泄はなくなり、蓄積作用は認められない。蛋白結合率:91-99%(主にalbumin)。

§本剤の利尿効果をラットの尿中Na排泄量でみると、その最大Na排泄量はチアジド系薬剤の約3倍を示し、最小有効量10mg/kgから最大有効量100mg/kgと幅広い薬用量を持つ

フルイトラン錠(塩野義)は、1錠中にtrichlormethiazideを1・2mg含有する製剤が存在する。
trichlormethiazideはthiazide系利尿薬に分類される薬で、降圧効果を目的とする場合は、thiazide系利尿薬を使用する。遠位尿細管でのNa再吸収を抑制することにより、短期的には循環血液量を減少させ、長期的には末梢血管抵抗を低下させる。但し血清クレアチン2.0mg/dL以上では無効であり使用を避ける。腎機能低下例ではループ利尿薬を用いる。少量(1/4-半錠)を使用することにより、降圧効果を損ねずに、低K血症、耐糖能悪化、高尿酸血症等代謝系への悪影響を最小化することが出来る。

§thiazide系利尿薬は降圧薬として高血圧症に対する第一選択薬の一つである。最近では、使用量を少量にとどめ、他剤との併用が行われている。angiotensin受容体阻害薬との合剤が使用可能となっている。

利点:①有効率が高い、②至適用量の個人差が小さい、③効果の発現が緩徐で、過度の高圧を来さない、④起立性低血圧がない、⑤薬剤耐性になり難い、⑥1日1回の服用で済む、⑦他の降圧薬による体内水分貯留傾向を解消することにより降圧効果を増強する、⑧安価である、⑨豊富な使用経験と、長期投与の実績がある、⑩Ca再吸収を促進し、骨粗鬆症等の骨疾患に有益である可能性がある。
欠点:①有効量の幅が狭く、それ以上に増量しても効果は増大しない、②腎機能低下例(血清クレアチニン2mg/dL以上)では効果が弱い、③副作用、特に代謝面への影響がある(常にチェックする必要がある)。

§thiazide系利尿薬は遠位尿細管におけるNa、chlorideの再吸収を抑制する。trichlormethiazideは約2時間で作用が発現し、約6時間で最高に達し、約24時間持続する。消失半減期は6時間、作用持続時間は約6時間。24時間後までの尿中累積排泄率は68.2±4.3%(mean±S.E.)であった。蛋白結合率:85%。

§furosemideの効能又は効果は『高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、末梢血管障害による浮腫、尿路結石排出促進』とされており、心性浮腫を治療目的としていたとすれば、簡単にtrichlormethiazideに変更することは難しいと考えられる。患者は現在furosemide 40mg錠の投与を受けており、取り敢えず半量の20mg錠の投与を検討してはどうかと考える。

1)ラシックス錠添付文書,2012.10.
2)フルイトラン錠添付文書,2011.2.
3)大阪府病院薬剤師会・編:全訂医薬品要覧;薬業時報社,1984
4)高久史麿・他監:治療薬マニュアル2013;医学書院,2013
5)大内尉義・他編:疾患と治療薬-医師・薬剤師のためのマニュアル-改訂第5版;南江堂,2003

         [015.4.FUR:2013.4.30.古泉秀夫]