「メチロシンについて」

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Q:メチロシンについて

 

A:メチロシン(metirosine)[INN,35]。別名:metyrosine、L-588357-O、α-MPT、MK-781、CAS-672-87-7。メチロジン。

[効]降圧(悪性褐色細胞腫)、tyrosinehydroxylase阻害剤。褐色細胞腫(手術適応例の術前短期治療、又は手術不適応例の長期治療)。

[作用]チロシンヒドロキシラーゼの阻害。

[用]手術前5-7日間、1日2-3g内服。成人小児(12歳?)1回250mgを1日4回の内服から開始し、1日250-500mgずつ増量(1日最高量4g迄)。維持量として1日2-3gを4回に分服。

[規格]250mg/Cap.

[註]少なくとも術前5-7日前に服用のこと。

[商]Demser.(Merck)。

tyrosinehydroxylase阻害薬としてのmetirosineは、チロシンのDOPAへの変換を妨げ、カテコールアミン合成を50-80%減らす。metirosineは主として褐色細胞腫の患者の術前に投与され、手術が行えない時には治療に役立つかもしれない。

治療に用いる量は、毎日600mgから3,500mgであり、極量は4000mg(4g)/日である。平均投与量は1500mgで、投与量に相関して尿中catecholamine減少が起こり、これは高血圧を抑制してcatecholamine過剰による他の症状を抑制するために十分な量である。metirosineの結晶が尿中に排出される可能性があるため、経口的に多量の水を摂取する必要があるかもしれない。今日までの経験では、長期投与により良好な治療効果をもたらし得ることが示唆されている。metirosineに耐性が生じ得るかどうかは不明である。

[副]不安・鎮静、振戦、下痢、乳汁分泌過多等が報告されている。治療中止後に少数の症例で不眠症が起こり得る。
殆どの患者が気付く本剤の最も一般的な副作用は、鎮静作用である。低用量、高用量の両者に発現し、服用後24時間以内に始まり、2-3日後に最大に達し、次の何日間かに衰退していく傾向が見られる。鎮静は増量しなければ通常1週間経過後に消失するが、2000mg/日より多い量ではある程度の鎮静か疲労感を感じるかもしれない。

錐体外路系の徴候として妄言、多弁、振戦が10%程度報告されている。これらは時に咬痙やパーキンソン症候群を伴っている。
憂鬱、幻覚、見当識障害、錯乱状態等。これらの発現は用量依存性の可能性があり、適量に調節することで消失するかもしれない。
下痢は約10%の患者に起こり、激しい場合がある。止瀉剤の併用投与が必要な場合がある。

稀に胸部に腫れ物が出来たり、乳漏症、鼻閉、唾液分泌減少、口渇、悪心、腹部痛、陰萎、射精不能が起こるかもしれない。結晶尿症(要注意)、一時的排尿障害、血尿が数人の患者で認められた。血液系統として好酸球増多、貧血、血小板減少症、血小板増加症、またS-GOT増加、末梢における浮腫、過敏反応、蕁麻疹、咽頭の浮腫等が見られる。

 

1)薬名検索事典;薬業時報社,1991
2)飯野靖彦・監訳:スカット・モンキーハンドブック-基本的臨床技能の手引き;MEDSi,2003
3)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.415,1992.9.30.
4)Demser添付文書,1985

 

[011.1.DEM:2009.1.1.古泉秀夫]