『テトロドトキシンについて』

 

KW:薬名検索・テトロドトキシン・ tetrodotoxin・フグ毒・河豚・コリン作動性線維・トリウムチャンネル・sodium channel

 

Q:テトロドトキシンについて

A: tetrodotoxin(TTX)は、フグ毒の本態となる毒物である。 tetrodotoxinの吸収は早く、状は潜伏期0.5時間から4.30時間で発現し、知覚鈍麻、四肢麻痺、呼吸筋麻痺が起こるが中枢神経系には障害は生じないとされる。

口唇・舌及びその周辺、指先の痺れから始まり、悪心・嘔吐、頭痛、腹痛などが生じる次第に痺れは麻痺に移行し、四肢から全身に広がり、運動障害が生じる。麻痺が重度でっても、意識は障害されない。流涎、筋攣縮、発汗、胸痛、嚥下困難、言語障害、痙攣不整脈を生ずる例もある。

重症の場合、角膜反射の消失、散瞳、呼吸困難、呼吸停止、血圧低下、徐脈等が生ずる。
死因の多くは、摂取後4-8時間で生じる呼吸停止である。殆どの場合、12時間までに状が消失する。治療が奏効すれば、後遺症無く回復する。

tetrodotoxinはコリン作動性線維の興奮膜にあるNa-channel(sodium channel)と結合しNa-ionの流入を妨げる。このため神経伝達、更には神経・筋接合部でのアセチルコリの遊離が阻害されため骨格筋の麻痺が生じる。健常成人の致死量:0.5-2mg。

抗コリンエステラーゼ薬(カーバメイト等)は神経・筋接合部でのアセチルコリンの分を妨げるため、筋力回復に有効とする報告もある。

1964年カリフォルニアイモリにフグ毒に類似の毒がふくまれているとの報告がされたがその後、この毒は tetrodotoxinであることが判明した。

1970年代に入るとツムギ鯊、ヒョウモンダコ、カエル、ウモレオウギカニにも tetrodotoinが確認された。更にボウシュウボラ、バイ貝、オオナルトボラ等の巻貝やアオブダイナンヨウブダイ等の魚類からも tetrodotoxinが確認されている。

これらの事実から河豚が tetrodotoxinを造るのではなく、ある種の細菌(Alteromonasやibrio属菌)がこの毒を産生ること。そしてこれらがプランクトンに取り込まれ、更にの“毒化プランクトン”を食べた河豚に毒が吸収・蓄積され、有毒になるものと考えらている。いわゆる食物連鎖の結果として、河豚の毒化が起こると考えられている。

 

1)相馬一亥・監修:イラスト&チャートで見る 急性中毒診療ハンドブック;医学書院2005
2)船山信次:毒と薬の科学;朝倉書店,2007
3)本田武司:食中毒学入門-予防のための正しい知識;大阪大学出版会,1999

[011.1.TTX:2008.11.17.古泉秀夫]

 

食安監発第0816003号平成19年8月16日

     都  道  府  県

各 保健所設置市    衛生主管部(局)長 殿
     特     別     区

厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長

   

ムシロガイ科キンシバイ(巻貝)での食中毒の発生事例について

 

長崎市内の農水産物直売所で販売されたムシロガイ科キンシバイ(学名:Alectrion glas)で、テトロドトキシンによる食中毒の発生事例がありました。長崎市では本事例をけ、当該巻貝を喫食しないよう注意喚起するとともに、採取及び販売を中止するよう漁関係者に指導しているところです。
ついては、水産担当部局と連携し、貴管内の水産及び魚介類販売等の関係者に対し、念ため、当該巻貝の採取及び販売を控えるよう指導方お願いします。
なお、農林水産省とは協議済みであることを申し添えます。

(参考)ムシロガイ科キンシバイ(学名:Alectrion glans)

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