『後発医薬品の試験・検査』

     魍魎亭主人

 

国立医薬品食品衛生研究所の「ジェネリック医薬品品質情報検討会」は2008年7月10日初会合を開催した。後発医薬品の品質に疑問を呈した論文をもとに議論した結果、抗真菌剤「イトラコナゾール」、慢性腎不全用剤「クレメジン」などの品質を検証対象にすることに決めた。具体的な検証方法は、事務局を務める国立衛研が組み立て、試験を実施する。早ければ半年後に開催する次回の検討会に結果を提出し、何らかの方向性を出すと報告されている。

国立衛研は、検討会に、後発品の品質を問題視した44本の論文を提示。議論の結果、試験方法に問題があると思われるものを含めた18本の論文で取り上げられた成分を、品質試験を行う候補として選定した。その中でもイトラコナゾールとクレメジンは、以前から品質が疑問視されていた「典型的な例」のため試験を実施する。

検討会は厚生労働省予算で国立衛研内に設置。政府の後発品使用促進の追い風に煽られ、後発医薬品市場が拡大する中、医療現場からは品質に対する疑問の声が止まらないため、疑惑の品目について検証することになった[リファックス,第5147号,平成20年7月11日]。

これは厚生労働省医政局経済課が、2008年7月9日に公表した「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」の実施状況についての中で『品質確保に関する事項』として挙げている次の事項を実践するものの一部と思われる。

*品質に関する研究論文等を踏まえ、後発医薬品の注射剤10成分94製品を対象に、国立医薬品食品衛生研究所及び地方衛生研究所において製剤中に含まれる不純物に関する試験検査を実施。現在、公表に向けて試験結果のとりまとめを進めている。

*後発医薬品の内服固形剤に係わる溶出試験の結果等については、(独)医薬品医療機器総合機構のホームページにおいて公表中。

現在、『後発医薬品』の使用は、予算の縮少を目的とした医療費抑制策の主柱の一つとして、重要政策に位置付けられている。従って厚生労働省は無闇に後発品への切換えを推奨しているが、しかし本来は、上記の報道に見られるように、品質に疑問がありとして公開されている論文を集約すると共に、全て公表し、更にその実証試験を行い、製品の品質を確認する作業を先に実施すべきだったのである。医薬品の有効性と安全性に対する疑念を払拭する、例え時間が掛かったとしても、そこの手順をしっかりすることが、不安解消のための最善の策であり、後発医薬品使用促進の早道だったと思っている。

処方する医師が、疑念を持ったまま処方し、何らかの問題が発生した場合、その責任は誰がとるのか。やはり処方医が確信を持って処方変更できるよう、疑問点を氷解させるために必要な情報の提供を先行させるべきであり、処方せんの形式変更や療担規則の改正等、姑息な行政的手法の導入を先行させるべきでは無かったのではないか。急がば回れである。

臨床現場で日常的に医薬品が使用され、その薬で患者の症状が安定している状況の中で、薬の変更を行うことは、医師にとっても患者にとっても迷惑なことなのである。後発品の同等性が頻りにいわれるが、それはあくまで概念の上でのことであり、実証的な証明がされている訳ではない。地に足の付いた変更の努力をすべきである。

   (2008.8.17.)