アルカリイオン水での薬の服用について

KW:物理化学的性状・相互作用・アルカリイオン水・酸性水・陽イオン・陰イオン・水酸化イオン・水素イオン・陰極反応・陽極反応

 

Q:現在、アルカリイオン水を飲用しているが、アルカリイオン水で薬を服用することに差し障りはないか

 

A:アルカリイオン水の性状について、次の通り報告されている。電解槽にカルシウムイオン(乳酸カルシウム)を含む原料水を入れ、水に直流電圧を放電すると、直流電流が流れ、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン等の陽イオンは陰極に引き寄せられ、塩化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンは陽極に誘引される。両極間に掛かる電圧が十分に大きければ、電極表面において接触している水は電気分解され、下記の反応が生じる。

  • 陰極反応:2H2O + 2e? → H2 + 2OH?
  • 陽極反応:2H2O → O2 + 4H+ + 4e?

陽極側では水酸化イオン(OH?)、陽イオン及び溶存水素(H2)が多くなり、pH値の高いアルカリイオン水が生成され、陽極側では水素イオン(H+) 、陰イオン及び溶存酸素(O2 )等が多くなり、pH値の低い(弱)酸性水が生成される。

生成水 pH 酸化還元電位 陽イオン 陰イオン 溶存気体
アルカリイオン水 9-10程度 低い 増加 減少 水素
(弱)酸性水 4-6程度 高い 減少 増加 酸素、(塩素)

 

医療用具としての承認を受けているアルカリイオン整水器は、次の効能・効果が承認されている。

  • アルカリイオン水:飲用して慢性下痢、消化不良、胃腸内異常醗酵、制酸、胃酸過多
  • 酸性水:弱酸性のアストリンゼントとして美容に用いられる。

アルカリイオン水の作用機序については、現段階で明確に解明されていないが、カルシウムを添加してpHが弱アルカリ性となることから『水酸化カルシウム[Ca(OH)2]』が含まれていることになり、水酸化カルシウムに由来する薬理作用の発現が予測される。

以上の各報告を受けてアルカリイオン水飲用時の注意事項について、次の報告がされている。

(1)アルカリイオン水を飲用するときには、次のことに注意する。
[1]医薬品服用時の水としてアルカリイオン水を使用しない.
[2]無酸症の診断をされた者ではアルカリイオン水を飲用しない。
(2)アルカリイオン水を飲用して異常を感じたとき、又は飲用を続けても症状の改善が見られない場合は、医師又は薬剤師に相談する。

(3)持病を有する者又は身体の弱っている者では、アルカリイオン水を飲用する前に医師又は薬剤師に相談する。

なお、アルカリイオン水での薬の服用については、『薬を服用するときは常水でおのみ下さい。アルカリイオン水そのものが効能・効果の認められる水ですので、他の薬と同時に服用することは避けてください』の注意が求められている。

その他、calcium製剤の相互作用として、

  1. テトラサイクリン系抗生物質とカルシウム製剤の併用により、テトラサイクリン系抗生物質の吸収を阻害することがある。
  2. カルシウム製剤の服用により消化管内・体液のpH上昇、併用薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある。
  3. カルシウム製剤とビタミンDとの併用により、高カルシウム血症が現れやすくなる。
  4. カルシウム製剤は、ジギタリスの作用増強の可能性があるとされており、ジギタリス中毒症状発現の可能性。
  5. リン酸エストラムスチンナトリウムではカルシウムイオンとの間に、不溶性の複合体形成の報告。

等の報告がされており、注意が必要である。

[014.4.ALK:2003.6.24.古泉秀夫]


  1. アルカリイオン水整水器協会:http://www.3aaa.gr.jp/wa/index.html.,2003.6.24.
  2. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  3. エストラサイトカプセル添付文書,2001.9.改訂