オキシコンチンとMSコンチンの効力比較

KW:臨床薬理・オキシコンチン徐放錠・塩酸オキシコドン・oxycodone hydrochloride・MSコンチン錠・硫酸モルヒネ・morphine sulfate・効力比較・体内動態

 

Q: オキシコンチンとMSコンチンの臨床的な相違点について

 

A:両剤の薬効薬理作用について、次の通り報告されている。

一般名 oxycodone hydrochloride
(塩酸オキシコドン)
morphine sulfate
(硫酸モルヒネ)
商品名(会社名)

オキシコンチン徐放錠
(塩野義)

MSコンチン錠
(塩 野義)
含有量(1錠中) 5mg・10mg・ 20mg・40mg 10mg・ 30mg・60mg
適応症 中等度から高度の疼 痛を伴う各種癌における鎮痛 激しい疼痛を伴う各 種癌における鎮痛
用法・用量 通常、成人 oxycodone hydrochloride無水物として1日10-80mgを2回に分割投与。適宜増減。 通常、成人 morphine sulfateとして1日20-120mgを2回に分割投与。適宜増減。
作用機序 morphine同 様にμ-オピオイド受容体を介して鎮痛作用を示すものと考えられる。

μ-オピオイド受容 体を介して作用を示す。大脳皮質知覚領域の痛覚域値を上昇させるほか、痛覚伝導路のうち脊髄以上の部位に作用し、脳幹の下降性抑制系の賦活や視床及び脊髄後角を抑制する。

鎮痛作用 morphine sulfateの3-6倍(ED50値)・3-4倍 (効力比)。鎮痛活性:0.1-2.0。 morphine hydrochlo-rideとの比較で、ほぼ同等の効力(ED50値)。鎮痛活性:1。
疼痛コントロール率 90%(オピオイド 系鎮痛剤非使用例及び使用例共に) 94.3-96.9% (MSコンチン錠投与例10mg-60mg製剤)
最高血漿中濃度 oxycodone として23.3ng/mL 29.9ng/mL(10mg 錠×3錠)
Tmax oxycodone として2.5時間 2.7時間
AUC0-48 303.5ng・ hr/mL 165.5ng・ hr/mL(AUC0-12計算値)
t1/2 5.7時間 2.58時間
血漿蛋白結合率 45-46% 約35%
体組織移行率 速やかに全身に分布 し、殆どの組織で投与約1時間後に最高濃度を示し、その後速やかに低下。作用部位である脳内消失は他の組織に比べ緩徐(ラット)。  
代謝 代表関与酵素
CYP2D6(→oxymorphone)、CYP3A4(→noroxycodone)
morphineは 主としてグルクロン酸抱合を受け、morphine-3-glucuro-nide及びmorphine-6-glucuronideに代謝される。
肝障害時投与 肝障害者に oxycodone hydrochloride徐放錠20mgを空腹時単回投与した結果、AUCは健康成人の約2倍、Cmaxは約1.5倍と有意に高値。 morphine-6 -glucuro-nideの蓄積によると考えられる遷延性の意識障害あるいは遷延性の呼吸抑制惹起の報告。
腎障害時投与

Ccr:10-60mL/min 、oxycodone hydrochloride徐放錠20mgを空腹時単回投与した結果、AUCは健康成人の約1.6倍、Cmaxは1.4倍。T1/2は1時間延長。腎障害者の鎮静作用は健康成人に比べ増加傾向。

 
食事の影響 oxycodone hydrochlo-ride徐放錠の体内動態に食事の影響は殆ど見られない。但し、160mgを抗脂肪食摂取後に投与したとき、空腹時との比較で oxycodoneのCmaxが25%増加の報告。 殆ど受けない。
バイオアベイラビリティ oxycodone hydrochlo-rideの生体利用率は健康成人で約60%、癌患者では平均87%。 生物学的利用率は 22.4%(初回通過効果受ける)
男女差

oxycodone hydrochlo-ride徐放錠20mgを空腹時単回投与した時、女性ではAUC及びCmaxが、男性より約1.4倍高値を示した。

 
高齢者 吸収、薬力学的評価 項目で、65歳以上と45歳以下の成人間に有意差無。  
母乳中移行 oxycodone hydrochlo-rideとacetaminophenの合剤経口投与時oxycodone hydrochlo-rideの乳汁/血漿中濃度の平均比率3.4(投与0.25-12時間後)。 ヒト母乳中に移行す ることがある。
排泄 尿中排泄:未変化体 として投与量の5.5±2.5%がoxycodone複合体として2.3±5.5%が排泄(24時間)。 MSコンチン錠1回 30mg、1日2回投与時の定常状態における24時間尿中総排泄率は、29.1%。
呼吸抑制 発現の可能性-息切 れ、呼吸緩和、不規則な呼吸、呼吸異常等発現→投与中止等適切処置。本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗薬(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する。 発現の可能性-息切 れ、呼吸緩和、不規則な呼吸、呼吸異常等発現→投与中止等適切処置。本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗薬(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する。
副作用 眠気 (53.0%)・便秘(38.4% )・嘔気(38.4%)・嘔吐(18.5%)・食欲不振(4.0%)・眩暈(3.3%)・掻痒感(3.3%) 眠気 (12.67%)・便秘(16.24%)・悪心(13.66%)・嘔吐(6.14%)・食欲不振(2.57%)・眩暈(0.40%)
作用発現時間 1時間 1時間30分
作用持続時間 12時間 12時間

 

以上、両剤を比較対照したが、必ずしも期待する項目が両剤で整備されているわけではなく、報告された資料の範囲内で類推する部分が多いのではないかと思われる。

[015.4.OXY:2005.1.25.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. オキシコンチン錠添付文書,2003.10.改訂
  3. MSコンチン錠添付文書,2004.2.改訂
  4. 金 素安・他:薬の情報No.5 オキシコンチン錠;薬局,55(7):2211-2219(2004)
  5. 川股知之・他:新しい鎮痛薬と疼痛管理;日病薬誌,39(10):1229-1233(2003)
  6. 金沢賢也・他:鎮静・鎮痛薬投与による呼吸抑制;medicina,41(7):1181-1183(2004)
  7. MSコンチン錠IF,2001改訂5版
  8. オキシコンチン錠IF,2003.6.改訂第2版