牛乳アレルギー患者への乳糖の使用

KW:副作用・牛乳アレルギー・乳糖・lactose・哺乳動物

 

Q:牛乳アレルギーの患者に乳糖が使用されることに問題はないか

 

A:乳糖(lactose)の性状については、「本品は白色の結晶、粉末又は造粒した粉末で、臭いはない。本品は水に溶け易く、エタノールに殆ど溶けない」とされている。

乳糖は他の糖に比べ甘味が少なく、水に対する溶解度も小さい。3種の形態があり、α-含水乳糖、α-無水乳糖、β- 無水乳糖で、これらは光化学的に比旋光度により区別される。通常、乳糖と称するものは、1分子の結晶水を持ったα-含水乳糖で、これは水溶液から93℃以下で結晶させるとき得られる。常温で安定である。

乳糖は哺乳動物の乳汁中に遊離又は乳糖部を持つオリゴ糖の形で存在している。牛乳中に約4.5?5.5%。人乳中に約5?7%含まれる。

乳糖は哺乳動物の乳汁中より製する。乳汁には乳糖、脂肪、カゼイン、無機塩などが含まれる。乳汁に凝乳素を加えて 60度に熱するとカゼインは凝固し、脂肪も析出して乳清には乳糖及び無機塩が残る。この乳清に少量の石灰乳を加えて残余の蛋白質などを沈殿させ、ろ液を蒸発して結晶させる。

粗製乳糖は水に溶かし、骨炭(脱色操作)、0.2%-酢酸(蛋白質沈殿操作)及び0.2%-硫酸マグネシウム(リン酸沈殿操作)を加え、煮沸してろ過する。ろ液を真空蒸発して結晶化させる。乳糖は工業的にはバター、チーズ、カゼイン等の製造の副産物として得られる。乳糖は中性で反応性が少ない。

本品は乳汁より製造されるので、混在の可能性が予想される蛋白質などの紫外部に吸収を持つ物質を、光吸収物質として紫外部領域の波長における吸光度で試験する。

  • 光吸収物質:本品1.0gを取り、水に加えて100mLとし、試料溶液とする。試料溶液につき、水を対照とし、吸光度測定法により試験を行う。
波長 吸光度
210?220nm 0.25以下
270?300nm 0.07以下

 

  • 副作用:ラクターゼを欠如しているヒトでは、下痢、嘔吐、腹痛、鼓腸等の消化器症状をきたす(乳糖不耐症)。ガラクトース血症、ブドウ糖・ガラクトース吸収不全、ラクターゼ欠乏症には禁忌。

工業的に生産される乳糖は、バター、チーズ、カゼイン等の製造の副産物として得られるとされているため、製品として市場に存在する乳糖は牛乳由来の乳糖であると考えられる。乳糖は母乳中にも存在するとされ、製剤の賦形剤・増量剤としても広汎に使用されており、従来の経験から見て純品の乳糖であれば、牛乳アレルギーのある患者の場合でも、特に影響しないと考えられる。

局方乳糖では、純度試験により「混在の可能性が予想される蛋白質など」についても試験しており、その製造工程等から考えて、蛋白質の残留は考えにくいので、問題ないものと考える。

又、乳糖は加工食品中に甘味剤として添加されており、相当広範囲に使用されていることから疫学的に見ても、質問に関連する問題の指摘はないものと考える。

[065.LAC:2000.5.9.古泉秀夫]


  1. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996