牛乳アレルギーについて

KW:副作用・アレルギー・牛乳アレルギー・カゼイン・蛋白質・乳漿蛋白・ラクトアルブミン

 

Q:牛乳アレルギーについて

A:牛乳アレルギーについて、次の報告がされている。

*牛乳アレルギーの発生頻度について、0.3?7.5%と、大きく差の見られる報告がされているが、本邦では 0.5?1.0%とする報告がされており、新生児期では32.8%とする報告も見られる。

牛乳アレルギーの発症時期について、本邦では約1/3は生後1カ月以内に発症するとしており、国外の報告では平均日齢66日で発症し、生後10カ月以上で発症するものは見られないとしている。

また、牛乳アレルギーは、家族歴を有することが多く、牛乳アレルギー患者の60%に牛乳に対する過敏症の家族歴があり、更に母親の17%に牛乳の摂取で過敏性反応が見られた。乳児の牛乳アレルギーの頻度は、2.8%で、その65%にアトピーの家族歴があり、また主症状は胃腸(50%)、皮膚(31%)、呼吸器症状(19%)が認められた。

牛乳抗原の感作方法としては、経腸管感作、経胎盤感作、経母乳感作が挙げられている。

新生児期の感染後に続発した牛乳アレルギーに関する報告が散見されるが、新生児期は腸管の通過性が亢進しているため、牛乳抗体を生成しやすく、腸管及び腸管外感染時に牛乳、卵白等の異種蛋白質の吸収亢進があり、感作し易いとされている。

食物アレルギーの治療は、抗原除去が原則である。牛乳アレルギー例では、牛乳蛋白を消化酵素を用いて吸収し易い形のアミノ酸に分解した加水分解乳(MA -:森永乳業)が用いられる。また、大豆蛋白乳(ボンラクト)も有用であるが、牛乳アレルギーの32%に大豆アレルギーの合併があり、注意が必要である。

乳児の牛乳アレルギーの予後は良好で、1歳の終わり頃には牛乳アレルギーの17?85%が牛乳の飲用が可能になると報告されている。その頃にも30%以上の患児が牛乳抗原に対する抗体を依然として持っているが、胃腸症状を呈さなくなる。

牛乳の主要蛋白質の性状

蛋白質 総蛋白中の% 分子量 抗原性

カゼイン(casein)

57%(全) ? +++
α-casein 42 23,612-25,228  
β-casein 25 23,980  
κ-casein 9 19,005  
γ-casein 4 11,557-20,520  
乳奬蛋白(whey protein) 20%(全)    

β-lactglobulin
(βLG)

9% 18,623 +++

α-lactalbumin
(αLA)

4% 14,174 ++
proteose・ peptone 4%   ?

血液蛋白:アルブミン(bovine serum albumin;BSA)

1%  
immunoglobulin 2%  

*牛乳アレルギーの成立にはcaseinよりβ-lactglobulinが重要。

[065.BOV:2000.4.20.古泉秀夫]


  1. 宮崎 文・他:腸炎罹患後に牛乳アレルギーを発症した新生児の1例;アレルギーの臨床,18(9):759-763(1998)
  2. 小林 登・他:小児医学大系21B-小児アレルギー病学II;中山書店,1981
  3. 小林 陽之助・監:食物アレルギーの治療と管理;診断と治療社,2004