健食茶による副作用-CPK値の上昇

KW:副作用・健康食品・ハーブ茶・大陸痩健茶・茶葉大陸痩献茶・CPK値上昇・CPK値上昇原因・ドクダミ・魚腥草・十薬

 

Q:『大陸痩健茶』に『ドクダミ茶』をブレンドして飲用している患者のCPK値が上昇した。原因としてこれらのお茶は考えられるか。

A:CPK(creatine phosphokinase;クレアチンホスホキナーゼ)の基準値は男性で57?197 IU/L、女性で32?180 IU/Lとされている。

通常CPK値の異常は、心筋と骨格筋の障害で上昇する。日常臨床では、急性心筋梗塞の診断に有用で、診断と治療を急ぐ。小さい梗塞巣や不安定狭心症では、経時的に繰り返しの測定が必要な場合がある。心筋と骨格筋ではアイソザイムが異なるので鑑別に有用である。

上記疾患以外の上昇原因として

  1. 激しい運動、筋肉注射、注射液の漏洩、手術後、分娩後、てんかん大発作後、カウンターショック後、小児では採血時の騒擾、筋電図後、こむらがえりがある。運動後は数日間高い。運動選手は高値が続く場合もある。
  2. 溶血でやや高値。
  3. 男性は女性よりも若干高い。
  4. β-遮断剤、クロフィブレート等で上昇することがある。

またCPK値の軽度上昇(基準上限?500 IU/L)では、可能性として急性心筋梗塞、心筋炎、心外膜炎、進行性筋ジストロフィー(Duchenne型、肢帯型)、多発性筋炎、皮膚筋炎、アルコール多飲者、甲状腺機能低下症、周期性四肢麻痺、神経原性ミオパチー、筋強直性ジストロフィー、脳外傷、脳梗塞、β-ブロッカー等が挙げられている。

『茶葉大陸痩健茶』の成分として、次の成分・配合量が紹介されている。

成分 比率(%) g/包 原料の特徴
センナ茎 35 1.05 腸の働きをよくし、宿便を除く。
杜仲茶 19 0.57

中国の落葉樹。茶樹。鎮静・降圧効果。

ギムネマ・シルベスタ 4 0.12

印度、東南アジアに自生する多年草。糖の腸管通過を妨げる作用があり肥満度の高い人ほど効果がある。

キャックロウ 10 0.30

免疫系を刺激する作用があり、抵抗力を高める。

ハブ茶 9 0.27

熱帯アジア原産のマメ科の1年草。便通をよくし、宿便を除く。血圧降下・強壮作用があり、肝臓・腎臓を強化する。

羅漢果 3 0.09

カロリー制限糖尿病患者、ダイエット中の甘味料。

グァバ茶 4 0.12

整腸・血糖降下作用があり血糖の急激な上昇を抑制

紅茶 9 0.27  
シナモン(桂皮) 3 0.09

非常に穏やかな熱の放散と発汗作用。

ジャスミン花 1 0.03 精神安定作用、過剰油分排泄作用
カミツレ
(カモミール)
3 0.09

月経痛緩和、不眠・緊張・不安解消作用。

合計 100% 3g ?

 

ドクダミ(和名)はドクダミ科に属する多年草(学名:Houttuynia cordata Thunb.)で、別名として十薬(重薬)、漢方名『魚腥草(ギョセイソウ)』。その他『臭菜(シュウサイ)』、『臭草』等の異名がある。根の付いた全草を使用する。

  • [成分]:全草に精油が含まれるが、その中には抗菌成分としてのデカノイル-アセトアルデヒド(decanoylacetaldehyde)、ラウリルアルデヒド(laurinaldehyde) 、メチル-n-ノニルケトン(methylnonyketone)、α-ピネリン(α-pinene)、リナロール(linalool)及びカンフェン、 d-リモネン(d-limonene)、ボルニル-アセタート、カリオフィレン、ミルセン(myrcene)、leaf alcohl、citronellal、citronellol、citral、1,8-cineol、ocimene、o-cresol、m- cresol、p-cresol、carvacrol、thymol等を含む。またコルダリンも含まれる。
    花穂及び果穂にはイソクエルシトリン(isoquercitrin:血圧調節作用)が含まれ、葉にはクエルシトリン(血圧調節作用)が含まれる。花・葉・果実のフラボノイドは同じで、アゼリン、クエルシトリン(quercitrin:利尿作用)、クエルセチン(quercetin)、 isoquercitrin、レイノウトリン(reynoutrin)、ヒペリン(hyperin)、ルチン(rutin)を含むの報告もある。根茎の精油にもdecanoylacetaldehydeが含まれる。また、カリウム塩を含む。また、無機物約2.7%を含有し、主成分はカリウム塩で、硫酸塩、塩酸塩として存在するとする報告も見られる。
    魚腥草の悪臭の元凶はdecanoylacetaldehyde、laurinaldehydeで、これには抗菌力がある。乾燥するとこの悪臭は消失し、抗菌力も消滅するとする報告が見られる。
  • [薬理]
    1.抗菌作用:有効成分であるdecanoylacetaldehydeはin vivoでカタル性球菌・インフルエンザ桿菌・肺炎球菌・黄色ブドウ球菌などに対し明らかな抑制作用を持つが、赤痢菌・大腸菌・腸チフス菌に対してはやや劣る。魚腥草から抽出される一種の油状物質は、多くの酵母・真菌に対して成長を抑制する作用を持つ。またin vitroでquercitrinは抗菌活性を示し、oxymethylenemethyl nonyl ketomeには2万倍希釈でAspergillus nigerに対し抗真菌活性が認められるなど、抗微生物活性があるとするのが一般的である。2.抗ウイルス作用:魚腥草はインフルエンザアジアA型京科 68-1株に対して抑制作用を持ち、更にエコーウイルスの成長を遅延させることができるとされている。インフルエンザウイルスに対する抗菌性は弱いとする報告も見られる。3.利尿作用:魚腥草剤は蛙による実験において、毛細血管を拡張し、血流量と尿液分泌を増加し、利尿作用を発揮する。その利尿作用は、おそらく有機物によるもので、カリウムは利尿作用に対し相加的な作用を果たすのみであろうとされている。また、quercitrin の血管拡張作用も影響しているであろうとしている。

    4.その他の作用:魚腥草には鎮痛、止血、漿液分泌抑制、組織再生促進等の作用もある。また動物実験で鎮咳作用を示すが、去痰作用、平喘作用はない。ドクダミ成分「ピレスチン」について、毒性はなく、創傷、胃潰瘍の治癒を促進し、抗炎症作用があり歯槽膿漏、排膿瘍、湿疹に有効であるとしたが、抗トリプシン作用は全く認められないとする報告も見られる。臨床的には慢性腎炎や慢性気管支炎に対する治療効果も報告されている。

その他の報告として、quercitrinが極めて低濃度で、利尿作用を示し、高含量のK+塩と共に十薬(日本薬局方)の利尿活性成分であるとした。

十薬の10%-ringer浸出液を用いて各種薬理試験を行った結果、本浸出液は蛙の瞳孔を収縮させ、蛙の皮膚色素細胞を拡大させ、心臓には直接作用して弛緩期で停止、更に血管に対しては一過性の収縮の後拡張させ、血流量を増大させることを認めた。

また、ネコの血圧を下降させ、子宮・腸管平滑筋に対して周期運動を亢進させることを認めたが、これらの作用は全て灰化ドクダミにも認められ、K+塩の作用と同一であることから、ドクダミのこれらの作用はK+塩によるものであって有機化合物の関与はないとしている。

粉砕器で細粉とし90℃で24時間乾燥したものを5g秤取し、これに水100mLを加え直火を用いて約30分間で50mLになるように加熱し、ガラスフィルターを用いてろ過を行った煎液中の金属類を測定した結果が次の通り報告されている。

乾燥重量当たりの濃度(ppm)

金属 試料 Na K Ca Mg Fe Mn Zn Cu
含有量 全草 212 54,300 770 3,430 500 120 56 26
溶出量 全草 92.1 18,400 110 1,470 250 43 19 4.3

 

食事中に摂取されるカリウムやグリコーゲン分解・体蛋白異化によって遊出するカリウムを排泄するには、腎以外に出口はなく、大便中のカリウムは 10mEq以下(全排泄量の10%程度)であるとされている。腎不全の場合、腎からの排泄率が低下することから高カリウム血症を惹起しやすい状態になりやすい。

『茶葉大陸痩健茶』は、種々の成分が配合されており、個々の成分の作用あるいは複合的な作用は予測困難である。しかし、本剤中に含まれるカリウム量については、その配合成分から見て高いことが予測され、「十薬」については、上記報告の通りカリウム含有量が多い。

従って、患者の腎機能によってあるいは服用中の薬剤があれば、ハーブ茶の飲用により高カリウム血症が発現する可能性が考えられる。

高カリウム血症時の症状については、次の報告がされている。

「血漿中のカリウム濃度が正常上限(5.4mEq/L)を超えて上昇した病態で、体内のカリウム分布の異常による場合と、体内カリウム量の増大に由来する場合とがある。カリウム分布の異常は、アシドーシスや高カリウム性周期性四肢麻痺で認められる。全体カリウム量の増大は、急性及び慢性腎不全、副腎皮質機能低下症のごとく尿中カリウム排泄量が低下した場合、血管内溶血、筋挫傷あるいはカリウム製剤投与などカリウム負荷量の増大がある場合に認められる。症状としては、筋・神経系の興奮異常が主であり、意識障害の他、筋力低下、脱力がしばしば認められ、また心筋の異常として不整脈、伝導障害、心停止等が認められる。」。

以上の報告から血漿カリウム値の上昇が、原因ではないかと考えるが、患者の血漿中カリウム濃度の測定を行うか、あるいは茶の飲用を2週間程度休止し、経過の観察を行い、飲用休止によりCPK値の低下が見られれば、これらの茶の飲用による検査値の異常であるといえる。

[015.9POT:2000.7.12.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・監修:臨床検査データブック;医学書院,1997-1998
  2. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  4. 生薬ハンドブック;株式会社ツムラ,1989
  5. 高木敬次郎・他編:和漢薬物学;南山堂,1983
  6. 鈴木 章・他:生薬中の金属の溶出;生薬学雑誌,36(3):190-195(1982)
  7. 桜井 寛:薬局よもやまばなし(21)カリウムの話(1)ドクダミ中のカリウム;薬事新報,No.1795:487(1994)
  8. 株式会社ツムラ学術課・私信,2000.7.7.
  9. 伊澤一男:薬草カラー大事典;株式会社主婦の友社,1998
  10. 医学大辞典;南山堂,1992