脊髄小脳変性症に有効な漢方薬

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Q:週刊誌で読んだと言う事で脊髄小脳変性症に有効な漢方薬についての質問があったが、どの様な薬剤か

A:脊髄小脳変性症(SpinocerebellarDegeneration)に対する漢方薬投与の1例報告として、動揺感と下肢の脱力、平衡感覚不良、夜間排尿回数7-8回等を主訴とする症例に真武湯5.0gを投与。投与7日目頃より手足が暖かくなったということで、一時サフラン3.0gを追加投与したが、上気すると言うことで真武湯のみにした。

昭和58年6月から昭和59年4月まで連続服用中であり、昭和59年 6月より量を増やして真武湯7.5gに増量した。経過は良好で気分的な落ち込みも治まって復学の望みを持つようになったとする報告がされている。

真武湯(津村順天堂)の処方内容は、次の通りである

  • 本品7.5g中下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.0gを含有する。
  • 茯苓4.0g・芍薬3.0g・蒼朮3.0g・生姜1.5g・修治ブシ末0.5g
  • 本剤の適応症は消化器疾患のほか脊髄疾患による運動並びに知覚麻痺、神経衰弱、半身不随等である。

その他、脊髄小脳変性症に伴う小脳性失調と起立性低血圧に対し、烏薬順気散加羚羊角と苓桂朮甘湯の併用が有効であったと考えられる一例が報告されている。

烏薬順気散加羚羊角を服用することにより、歩行時ふらつき、下肢の脱力感が軽減し、重心動揺検査においても動揺が少なくなっていることが確認された。当初、真武湯を併用していたが、起立性低血圧に対する効果が乏しいため苓桂朮甘湯に変更したところ、立ち眩みも著名に軽減した。

烏薬順気散の処方例は、次の通りである。

  • 麻黄・烏薬・陳皮各2.5、川キュウ・白疆蚕・白シ・桔梗各2.0、乾姜・甘草・大棗・乾生姜各1.0

本剤の適応は頭痛、発熱、悪寒を伴う四肢麻痺、半身不随、顔面神経麻痺などに用いる。但し、本剤は医療用医薬品としての薬価収載はされておらず、原料薬品購入の上、処方箋に基づく調剤が必要である。羚羊角も原薬の購入が必要である。

苓桂朮甘湯(津村順天堂)の処方は、下記の通りである。

  • 本品7.5g中に下記の割合の混合生薬の乾燥エキス1.5gを含有する。
  • 茯苓6.0g・桂皮4.0g・蒼朮3.0g・甘草2.0g
  • 本剤の適応として動悸、息切れ、眩暈、頭痛等が見られる。

[510.FD15.011.1SPI][1991.4.25.・1999.3.29.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日野原重明・他監修:今日の治療指針;医学書院,1989
  2. 古寺秀喜(博多区):脊髄小脳変性症の漢方治療の一例;鐘紡薬品株式会社学術課・私信,1991
  3. 山田光胤:漢方処方の応用と実際;南山堂,1973
  4. 萬谷直樹・他:脊髄小脳変性症に対する和漢薬治療の試み;株式会社津村順天堂学術課・私信,1991
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.71,1991.4.30.より転載