herb (ハーブ)による有害作用

KW:副作用・健康食品・ハーブ化合物・植物性医薬品・副作用・有害作用・アルニカ花・arnica flos・西洋タンポポ・dandelion・茴香・ウイキョウ・fennel・ニンジン・人参・ginseng・緑茶・green tea・ガラナ・guarana・スペイン甘草・liquorice・パッションフローラ・passion flower・プロポリス・propolis・タイム・thyme

 

Q:ハーブの有害作用としてどの様なものが報告されているか

A:herb化合物(植物性医薬品)の単独又は従来医薬品との併用による有害事象について、次の報告がされている。

italyのUniv.Veronaに通院中の女性外来患者について5ヵ月間にわたり調査を行った。調査終了女性患者1044例のうち491例 (47%)が過去1年間に少なくとも1種類のherbを使用していたと回答した。そのうち272例(55.4%)は herbのみの使用であったが、219例(44.6%)は従来医薬品と併用していた。

使用されていたherbは73種類、併用群では32種類であった。herb使用491例のうち47例 (9.6%)が有害事象を経験しており、22例(8.1%)はherbのみの使用、25例(11.4%)は従来医薬品との併用例であった。有害反応に関連している可能性のある併用薬剤はNSAIDs、抗生物質、benzodiazepines、血圧降下剤及び経口避妊薬が含まれていた。

なお、47例中29例(61.7%)では、以下の有害反応について医師に報告されていなかった。

herbの名称 副作用 herbの性状等
dandelion 胃腸障害文献[2]:治療に用いる際の副作用については何も知られていない。本品の乳白色液に頻繁に触れた場合、接触性皮膚炎。

西洋タンポポ草・根。キク科。原植物:Taraxacum officinale Weber。英名:comm-on dandelion。薬用部分:葉・根。根には脂肪酸、糖質、生葉にはミネラル、ビタミンB1、ビタミンA、ビタミンCの他、葉緑素等を含有する。 その他、トリテルペン類等を含む。カリウム含有量多い。

fennel 胃腸障害文献[4]:茴香油はエストロゲン様作用が示唆-乳癌・子宮癌・卵巣癌・子宮内膜症・子宮筋腫患者は摂取回避。人参、セロリ、蓬、セリ科植物に過敏症の者は、茴香にも過敏症発現の可能性。 和名:茴香(ウイキョウ)。薬用部分:成熟果。セリ科。原植物:Foeniclum vulgare MILL。[局]Foeniculi fructus。[英名]fenn-el、fennel fruit。

2-6%の精油のうち50-70%迄は甘味のあるウイキョウ油で、更に20%までは苦くて、樟脳様の味がする(+)-fen-choneからなる。その他 methylchavicol、anisaldehyde及び二、三のテルペン系炭化水素(特にα-pinene、α-phellandrene、 limonene)が見られる。更にウイキョウは脂肪油、蛋白質、有機酸類及びフラボノイド類を含む。臭いはアネトールを主とした芳香である。臭いが強く、やや甘味があるものを良品とする。

ginseng 心血管障害文献[2]:比較的稀で、用量の多い場合又は非常に長期に連用した場合、不眠症、神経過敏、下痢(特に朝)、月経閉止期の出血、高血圧。 人参・根。ウコギ科のアメリカニンジン、朝鮮人参。原植物名:Panax ginseng C.A.Meyer。別名:Panax schinseng NEES (オタネニンジン)。[英]Ginseng root。2-3%のギンセノサイド(トリテルペンサポニン)。ginsenosid類のうちRg1、Rc、Rd、 Rb1、Rb2、Rb0が量的に圧倒的である。約0.05%の精油(limo-nene、terpineol、citral、 polyacetyl-ene類)。糖、澱粉などのように普遍的に存在する物質。
green tea 心血管障害虚血(避妊薬併用)文献[4]:適量経口摂取は安全。多量経口摂取はcaffeineの副作用発現が予測。妊娠中・授乳中適量であれば緑茶の経口摂取は安全性示唆、多量摂取危険性示唆。緑茶caffeineは胎盤通過し、早産や低体重児出生の危険性高める報告。過剰摂取は便秘、消化不良、眩暈、動悸、不整脈、興奮、不眠、頭痛、利尿、不安、胸焼け、食欲不振、下痢。慢性的-長期・多量摂取で耐性、習慣性、精神的依存性発現可能性。 茶、[英]Tea、 Black tea、 Green tea、 Chinese tea。[学名]Camellia sinensis (L..) Kuntze 、つばき科[チャ属]。茶は中国原産であり、その利用は何千年も昔にさかのぼる。製造工程により緑茶、ウーロン茶、紅茶などがある。緑茶は現在でも世界でもっともよく飲まれている茶飲料である。caffeine、少量の他のxanthine alkaloid(テオブロミン、テオフィリン、ディメチルキサンチン、xanthin、adenine等)も存在する。また、多量のtanninあるいはフェノール物質(5-27%)も含有、flavanol(catechin)ユニットおよび没食子酸ユニットを構成しており、緑茶の方が紅茶より多く含有している。茶の他の成分としては4-16.5%の脂質、フラボノイド、アミノ酸、ステロール、ビタミンCがあり、フレーバーおよび芳香化学物質だけでも300以上の化合物がある。蛋白質、トリテルペノイド等も含有。茶に存在する特定の成分、特にtannin物質の カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート等を含有する。エピガロカテキンガレートは抗酸化性を有しており、EGCGが最も強力である。
guarana 神経学的障害文献[4]:過剰摂取で排尿痛、腸管痙攣、嘔吐。

caffeine含有物は不眠症、いらつき、動揺、吐気、嘔吐、尿量増加、頻脈、不整脈、頻呼吸、痙攣、耳鳴、頭痛、妄想、ひきつけの原因の可能性。

ガラナ。[学名]Paull-inia cupana Kunth。英名:guarana。むくろじ科[ガラナ属]の常緑で攀縁性のつる植物。南米のアマゾン地域に自生する。栽培すると2mほどの潅木に成長。薬用部分は種子(ガラナ子)。砕いて炒った種子をキャッサバ澱粉とともに水で練って円筒形にし、燻煙乾燥し固めたものをガラナエキス(通称ガラナ)と呼ぶ。ガラナエキスに カフェイン、テオブロミン、d-カテキン、タンニンを含む。種にはグァラニン(guaranine) と呼ばれるcaffeine類似の成分7%含むが、習慣性はなく、代謝される時間もより長くかかるため、穏やかな持続性の興奮作用が得られる。
liquorice 心血管障害神経学的障害。高血圧クリーゼ(避妊薬併用)文献[2]: glycyrrhizinとglycyrrhetinのミネラルコルチコイド作用のため、長期にわたり多量(1日50g以上)摂取で低K血症、高Na血症、浮腫、高血圧及び心臓障害惹起。極端な場合、全ての病徴を伴う偽アルドステロン症の発症。 スペイン甘草。根・匍匐枝(走茎)。マメ科、多年生草本。原植物名:Glycyrrhizia glabra L.。[英]Liq-uorice root、Sweet root。含有成分:2-15%のトリテルペンサポニン類、中でも特に蔗糖より50-100倍も甘いグリチルリチン及び24-ハイドロキシグリチルリチン。グリチルリチン酸は加水分解によりdiglucuronic acidとアグリコンのglycyrrheti acidを与える。その他に、アグリコン部が一部判明している。その他多数のトリテルペンサポニン類を含む。
passion flower 皮膚障害アナフィラキシーショック(benzo-diazepines併用) 文献[2]:未知。 チャボトケイソウ。トケイソウ科。原植物名:Passiflora incarnata L。[英]Passion flower、Maypop。含有成分:2.5%までのフラボノイド、特にvitex-in、saponarin、orien-tin等のようなグルコシル化合物。約0.05%のmaltol。少量の青酸配糖体、特にgynocar-din。組成未知の微量精油。harmaneアルカロイドの存在。
propolis

胃腸障害皮膚障害(全身性アレルギー)文献[4]:安全性未確立。妊娠中・授乳中は使用回避。蜂や蜂生成物に過敏症の者、特に喘息患者は使用禁忌。外用で用いた場合(化粧品を含む)、接触性皮膚湿疹発現の可能性。

propolisはミツバチが樹木の特定部位(新芽、蕾、樹皮など)から採取した樹液や色素などに、ミツバチ自身の分泌液を混ぜてできた巣材である。ハチの巣から分離するため純物質を得ることは難しく、巣の副産物が含まれる。また、産地や抽出方法によってその構成成分が異なる。フラボノイド(ピノセンブリン、ガランギン、ピノバンクシン等)。ブラジル産プロポリスはp- cumaric acidをはじめ、artepillin C, drupanin等が主な成分であり、その他の各地域(国)産プロポリスはchrysin、pinocem-brin、galangin等が主成分。
thyme 皮膚障害文献[2]:未知。文献[4]:全草を用いれば安全であるが、抽出された精油はいかなる量でも有害、専門家の指示がなければ経口摂取禁忌。精油は皮膚、粘膜に炎症・過敏症惹起の可能性。精油経口摂取で、むかつき、嘔吐、胃痛、頭痛、眩暈、痙攣、昏睡、心停止、呼吸停止の可能性。

チムス草。薬用部分:葉部・花部。原植物名:Thymus vulgaris L.(タチジャコウソウ)。 Thymus zygis L.(スペインタチジャコウソウ)シソ科。[英]Common Thyme、Garden Thy-me、Rubbed Thyme、Herb of Thyme、成分:精油成分1.0-2.5%。精油には主としてモノテルペン異性体であるthymol(30-70%)とcarvacrolが含まれている。フェノールの一部は生薬中でグルコシッドあるいはガラクトシドとしても存在している。更に精油中にはp-cymene、camph-ene、 limoneneの様なその他のモノテルペンも存在している。精油の組成は生薬の産地や収穫の時期によって、著しく変動する。

[510.HER:2006.6.12.古泉秀夫]


  1. 植物性医薬品(ハーブ化合物)の使用に関する安全性への影響:外来女性患者による調査;医薬関連情報,3:1479(2006)[Cuzzolin L. et al;Eur.J.Clin.Pharmacol.,62(1):37-42(2006.1. [翻訳])
  2. 井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999
  3. 第14改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  4. 「健康食品」の安全性・有効性情報;
    http: //hfnet.nih.go.jp/contents/detail498.html,2006.6.12.
  5. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント-健康食品Q&A;じほう,2003