『卵アレルギー既往患者への投与に注意を要する薬剤改訂第5版』

KW:卵 [同義語:玉子・鶏卵・卵黄・卵白・発育鶏卵・精製卵黄レシチン・卵黄レシチン・卵黄油・高度精製卵黄レシチン・卵白加水分解物]・[関連語:鶏肉・鶏肉由来のもの・ニワトリ胚初代培養細胞 ]

食物とアレルギーとの関係について、次の報告がされている。

食物は、成人においてはアレルゲンとしての重要性は低い。食事性抗原によるアレルギーの発現機序も、IgE抗体由来のI型アレルギー反応以外のII、III、IV型反応の関与がいわれている。その他、食品添加物による過敏反応などもあり、食物の摂取と症状・疾患の因果関係が明確ではない場合も多い。

鶏卵によるアレルギーは、動物性食物によるアレルギーに分類されるが、牛乳、鶏卵(特に卵白)、魚介類(鯖、鰹、鰊、イカ、タコ、蟹、海老、牡蛎)や肉類(牛・豚肉、ハム、ソーセージ等)等が挙げられている。牛乳に感作されている場合、乳製品であるバター、チーズ、牛乳を含む菓子類、卵に感作されている場合には、卵を使用した菓子、マヨネーズ等に対しても反応する。

その他、食物によるアレルギーの場合、食事性抗原とは異なる仮性アレルゲン(ヒスタミン様物質を含有することによりアレルゲンとなり得る物質)に起因するアレルギーも、発現するとされている。仮性アレルゲンを含有する食物として、ほうれん草、茄子、筍、山芋、里芋、蕎麦、空豆、落花生、松茸、栗、夏みかん、蛸、烏賊、海老、鰹、鮪などが挙げられている。

また、食物アレルギー症状の原因となる食物について、患者332名中118人(35.54%)が、鶏卵に由来するものであった。また、42人(12.65%)は、卵白がその原因であったとの報告がみられる。ちなみに牛乳による食物アレルギー症状の発現は、18.67%とされている。

症状発現の時間的経過として、食物摂取後1時間以内に症状の発現する即時型と1時間以後に症状の発現する非即時型に分類されているが、即時型の症状として、多くは摂取後15分以内に

『口中のかゆみ、嘔気、嘔吐、鼻汁、目のかゆみ』 → 時に『アナフィラキシー・ショック』

等が発現すると報告されている。その他の症状として

呼吸器症状 鼻汁、鼻閉、くしゃみ等の鼻アレルギー症状。咳嗽、喘鳴、呼吸困難等の喘息症状。
消化器症状 嘔吐、腹痛、下痢等の胃腸症状。口内炎、口角炎、肛門掻痒症、過敏性大腸炎。
皮膚症状 湿疹、蕁麻疹、皮膚の発赤、皮膚掻痒症。

等が挙げられている。

特に若年者では、食事性抗原によるアレルギーの発現がみられる率が高いとされているため、薬剤の使用に際しては、食物アレルギーと薬との関係について十分認識した上で、患者相談に対応することが必要である。

患者への注意事項(参照) §今までに薬や鶏卵によるアレルギー症状(例えば発熱、発赤、関節痛、ぜんそく、かゆみなど)を起こしたことがある方は、次の点にご注意下さい。?「インフルエンザHAワクチン」の予防接種を受ける方は、前もって医師に申し出て下さい。?過去に鶏卵等によるアレルギー症状を経験されたことがある方は、医師又は歯科医師の診察を受ける際には、忘れずにそのことを申し出て下さい。

?過去に鶏卵等によるアレルギー症状を経験されたことがある方は、薬局で薬を購入する際、前もって必ず薬剤師にご相談下さい。

     
[分類]一般名・商品名(会社名) 添付文書標記 機序等
[219]alprostadil
パルクス注(大正富山)
リプル(田辺三菱)
高度精製卵黄レシチン 18mg/1mL
高度精製卵黄レシチン 36mg/2mL
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→過敏症の既往歴ある患者]
[245]dexamethasone palmitate
リメタゾン注(田辺三菱)
卵黄レシチン 12mg/mL
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→過敏症の既往歴のある患者]
[6313]dried live attenuated measles vaccine乾燥弱毒生麻しんワクチン(武田)
乾燥弱毒生麻しんワクチン(田辺三菱)
[鶏卵の胎児初代培養細胞で増殖]
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→アナフィラキシーの既往があることが明らかな者]
[本剤成分→アレルギー呈するおそれある者。]
*弱毒生麻しんウイルスを伝染性の疾患に感染していないニワトリの胚初代培養細胞で増殖させて得たウイルス液を精製。
[631]dried live attenuated mumps vaccine乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン (武田) 鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分アナフィラキシーの既往]
慎重投与→[本剤成分→アレルギー発現可能性]
*ニワトリの胚初代培養細胞
[631]dried live attenuated rubella vaccine乾燥弱毒生風しんワクチン(田辺三菱) 鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤成分→アナフィラキシーの既往]慎重投与→[本剤成分→アレルギー発現可能性]
*ウズラ胚初代培養細胞
[631] influenza HA vaccineインフルエンザHAワクチン(田辺三菱) 慎重投与
投与禁忌(3
本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するお それのある者;本剤はインフルエンザA型ウイルス及びB型ウイルスを個別に発育鶏卵で培養、増殖したウイルスを処理して調製
[395]lysozym chloride
アクディーム錠・顆粒(あすか)
オペック錠・顆粒(大正富山)
ノイチーム錠・顆粒(エーザイ)
レフトーゼ錠・顆粒(日本新薬)
投与禁忌 卵白アレルギーの既往歴のある患者;本剤の成分は卵白由来の蛋白質で、卵白アレルギーがある患者においてアナフィラキシーショックを含む過敏症状の報告
[325] 消化態経腸栄養剤
エンテルード(テルモ)
鶏卵注意記載無 *卵白加水分解物が配合されているため、卵アレルギーを有する患者でアナフィラキシー・ショックが疑われる症例の報告がある(18。
[329]soybean oil
イントラリピッド(テルモ)
精製卵黄レシチン 12g/1000mLイントラリポス(大塚)
精製卵黄レシチン 3g/250mL

イントラファット注射液(日本製薬)
精製卵黄レシチン2.4g/200mL・6g/500mL

鶏卵注意記載無 重大な副作用:ショック、アナフィラキシー反応-呼吸困難、チアノーゼ等があらわれた場合投与中止、適切な処置。
*特に「鶏卵」に関する注 意事項は記載されていない。
[111]propofol
1%-ディプリバン注(アストラゼネカ)
精製卵黄レシチン 12mg/mL・大豆油100mg/mL
鶏卵注意記載無 投与禁忌→[本剤又は本剤成分→過敏症の既往歴ある患者]

医療用医薬品として、鶏卵が関係する医薬品は比較的少ない。インフルエンザHAワクチンでは、添付文書中に「本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するおそれのある者」として明確に「慎重投与」の記載がされている。その他の鶏由来の調製がされているワクチンについては、その添付文書中に特に鶏卵アレルギーとの関連情報は記載されていないが、使用に際し注意が必要であると考えられる。イントラリピッド関連の注射剤についても、組成中に「精製卵黄レシチン」の配合がされているが、「鶏卵」に関連する注意事項の記載はされていない。

参照:患者(男、生後14カ月)は、呼吸症状の治療のため入院し、入院後数時間以内に急性呼吸器不全を生じたため、当院に転送されてきた。既往歴としてアトピー性疾患、特に反応性気道疾患及び湿疹が著しかった。これまでに6回入院していた。卵、ピーナッツオイルに対するアレルギーが記録されていた。転送される前にpropofol及びrocuroniumを用いて緊急挿管が行われたが、病院の記録には具体的な用量は記載されていなかった。挿管処置から約30分後に緊急輸送機が到達時、患児は低血圧(83/34mmHg)及び頻拍(165/分)であった。患児の危篤状態は propofolに対するアナフィラキシー反応によると思われた。生食液をボーラス(bolus)投与し、ter-butalineをボーラス静注後、持続注入した。その反応の3時間前に換気による呼吸補助とmethylprednisoloneを投与されていた。生食液ボーラス投与から25分後、依然として頻拍状態であったが、BP(血圧)は126/85mmHgに改善していた。その後5分間に血圧が101/55mmHgに低下し、生食液を再投与した。バイタルサインは改善し、安定していた。挿管から2時間後に当院に到着後、小児ICUに入院した。患児は入院5日間で改善し、保護者は今後propofolを回避するよう指示された。Naranjo probability scaleにより、propofol投与後のアナフィラキシー反応は薬物有害反応である可能性が示された。propofol処方には卵レシチンと大豆油が含まれているので、これらの成分に過敏症の患者にはpropofolの使用は禁忌である。臨床医は特定の食物アレルギーを有する患者における薬物有害事象の可能性について考慮すべきである[Hofer,N.K.et al:Ann.Pharmcother.,37(3):398-401(2003.4)]

塩化リゾチームを含有するOTC薬

対象適応 注意事項 具体的注意
鎮咳去痰薬 投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
外用痔疾用薬 投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
眼科用薬
一般用点眼薬
抗菌性点眼薬
投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
鼻炎用内服薬 投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。
歯科口腔用薬
口腔咽喉薬
歯科口腔用薬(内服)
投与禁忌 *本剤又は鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人[塩化リゾチームを含有する製剤に記載すること]。

1)高久史麿・監修:治療薬マニュアル;医学書院,1997
2)インフルエンザHAワクチン添付文書,1997.9.改訂
3)梅田悦生:常用医薬品の副作用;南江堂,1996
4)乾燥弱毒生麻しんワクチン添付文書,1996.9.改訂
5)乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン添付文書,1996.11.改訂
6)乾燥弱毒生風しんワクチン添付文書,1996.3.改訂
7)乾燥弱毒生麻しんワクチン添付文書,1996.3.改訂
8)JAPIC・編:一般用医薬品集 1998-99;薬業時報社,1997
9)石井 彰・他:あれるぎーとは;からだの科学,170<5>:34-39(1993)
10)向山 徳子:食物アレルギー;からだの科学,170<5>:62-65(1993)
11)卵アレルギー患者に注意すべき医薬品について:月刊卸薬業,25(10)611-612(2001)
12)食物アレルギーの小児おけるpropofol投与後のアナフィラキシーの可能性(翻訳);医薬関連情報,7:707(2003.7.)
13)JAPIC・編:一般用医薬品集 2007;(財)日本医薬品情報センター,2007

[015.4.ALE:1998.1.20. 古泉秀夫・2003.5.27. 第2改訂・2003.7.15.第3改訂・2003.8.29.第4改訂・2006.8.29.第5改訂]