出ると思っていたら出た話

 

魍魎亭主人

ドラッグストア「ハックドラッグ」などをチェーン展開するCFSコーポレーション(本部・横浜市)は15日、医師の処方せんが必要な強心・喘息治療剤「ネオフィリン錠」を処方せん無しで店頭販売していたと発表した。量を誤って服用したと見られる人が、中毒症状を起こし、横浜市内の医療機関で治療を受けたことで発覚。CFSは錠剤の回収を始めた。

ネオフィリン錠は2005年4月の薬事法改正で、購入には医師の処方せんが必要になったが、CSFによると、同月以降、東京、神奈川、静岡、山梨4都県の計171店で、100錠入りを1113個販売した。販売元のエーザイから連絡を受けたが、社内の連絡ミスで、処方せんが必要になったことが店舗に伝わっていなかった。

CFSは服用を止め、医療機関を受診するように呼びかけている。神奈川県薬務課は、同社の管理体制に問題がなかったか調べている [読売新聞,第46790号,2006.6.16.]。

*大手医薬品店「マツモトキヨシ」(本社・千葉県松戸市)が、医師の処方せんが必要な医薬品を、処方せん無しで販売していたとホームページで公表した。販売されていたのは精神安定剤「アタラックスP」、駆虫剤「コンバントリン錠」など8製品。

これまでに15都道府県の計162店舗で、計468個を販売した。2005年の薬事法改正で、 8製品は販売に処方せんが必要になったが、社内での指示が徹底されていなかったという[読売新聞,第46794号,2006.6.20.]。

*大手スーパー「西友」(本部・東京都北区)の店舗内薬局で、医師の処方せんが必要な精神安定剤「アタラックスP」など5製品が、処方せん無しで販売されていたことが、20日わかった。これまでに東京、神奈川、千葉など9都県の19 店舗で計88個を販売していたという[読売新聞,第46795号,2006.6.21]。

*ダイエーは21日、 2005年4月から6月にかけて、東京、兵庫など12都府県のグループ21店で、医師の処方せんが必要な医薬品を処方せん無しで販売していたと発表。販売していたのは精神安定剤「アタラックスP」、駆虫剤「コンバントリン錠」など5種類、計35個[読売新聞, 第46796号,2006.6.22]。

各店適当な言い訳をしているが、従来から医師の指示書がなければ販売してはならないとされていた医薬品を法律に反して、指示書なしで販売されていたということである。各店その延長線上で、医薬品の販売を続けていたということだろう。

2005年4月1日の薬事法の改正により『要指示医薬品』が『処方せん医薬品』に改正され、『処方せん医薬品』が指定されたが、この改正は、本来医師の指示なしには販売できない医薬品を、指示書なしで販売していたことから、分かり難い『要指示医薬品』を『処方せん医薬品』と明確にするための改正である。

『要指示医薬品』であろうが、『処方せん医薬品』であろうが、専門家の病状判断があって治療薬として使用する医薬品であり、OTC薬とは明らかに異なるものである。確かにOTC薬との比較で、明らかに効果はあるかも知れないが、同時に副作用も念頭に置いておかなければならない薬なのである。

稼げれば何でも売ってやろうという発想は、医薬品を販売する世界には不向きである。今回の各店の実情は、前から違法に販売していたものをそのまま継続して販売していたと考えられるもので、将に出るべくして出たといわれても仕方がない。

参考のために薬事法の『第2節 医薬品の取扱い』-処方せん医薬品の販売に関する条文を挙げておく。

(処方せん医薬品の販売)

第49条 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

2 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、その薬局又は店舗に帳簿を備え、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者に対して前項に規定する医薬品を販売し、又は授与したときは、厚生労働省令の定めるところにより、その医薬品の販売又は授与に関する事項を記載しなければならない。

3 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、前項の帳簿を、最終の記載の日から2年間、保存しなければならない。

(2006.6.23.)