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『オニダルマオコゼの毒性』

日曜日, 1月 3rd, 2010

KW:毒性・中毒・オニダルマオコゼ・ストーンフィッシュ・stonefish・ストナストキシン・stonustoxin

Q:オニダルマオコゼの毒性と刺されたときの処置について

A:我国周辺に棲息するオニダルマオコゼは、学名:Synanceia verrucosaといわれるもので、英名ストーンフィッシュ(stonefish)、『石のような魚』といわれている。カサゴ目オニオコゼ科に属する。別名:鬼達磨虎魚、鬼達磨鰧。

オニダルマオコゼ類は、一般に背中に沿って13本の棘を持っている。棘には背鰭にある一対の毒腺から強力な毒が分泌される。オニダルマオコゼの毒器官は、背鰭の13棘、臀鰭3棘、2腹鰭の各1棘、それらの外皮鞘及び毒腺組織からなる。棘は比較的厚い皮鞘に包まれている。背鰭の最長棘は、体長の1/6である。各鰭棘の各側に前側溝が1本ずつある。刺毒魚類のうち毒性が最も強い。

オニダルマオコゼは、南シナ海、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、インド洋・紅海、アフリカ南部に分布し、サンゴ礁などの浅い海に棲息する。日本近海では、小笠原諸島・奄美大島・沖縄周辺に分布している。オコゼの名称はカサゴ科の魚のうち鰭の棘に毒を持つものの俗称かつ総称であり、毒棘に刺されると長時間痛む魚である。毒は分子量が15万程度で、芳香族アミノ酸を多数含む蛋白質(高分子蛋白毒)と考えられており、酸を加えたり、海水で稀釈したり、熱したりするだけで毒性が無くなるとされている。

オニダルマオコゼ(stonefish)の毒成分としてストナストキシン(stonustoxin)が単離されている。stonustoxinは1991年にシンガポール大学の研究者が、オニダルマオコゼ類のSynaceia horridaから精製した毒素。分子量:148,000で、α、βの二量体からなる。オニダルマオコゼS.verrucosaの毒については、1995年ガルニエール博士らがケニア産試料を用いて精製しベルコトキシン(verrucotoxin)と命名した。α-サブユニット(分子量:83,000)とβ-サブユニット(分子量:78,000)が構成されている。両サブユニットは、それぞれ2本ずつの4量体で、分子量は322,000である。verrucotoxinのLD50(マウス静脈注射)は47μg/kgで、溶血活性と毛細血管透過性亢進活性を併せ持つとされている。

オニダルマオコゼの毒棘が刺さると、激痛や浮腫などが起こる。血圧低下や呼吸困難等の重症の場合は、オーストラリアでは抗血清(Commonwealth Serum Laboratory:国内未発売)が用意されている。一般的に痛みに対しては局所麻酔薬を用い、更に感染症の予防措置を行う。オニダルマオコゼの毒成分には、ヒアルロニダーゼ、毛細血管透過性を増大させる因子、血圧低下をもたらす致死的因子等があるとされる。オニオコゼ類の粗毒のマウス静注LD50値は0.2mg/kgとされる。オニダルマオコゼでは、背鰭の棘1本から約0.015mLの液状毒が得られ、平均サイズの魚では約0.2mLの粗毒を持つと報告されている。

オニダルマオコゼに刺されると、致死症状以外に種々の程度の症状が見られる。急激な痛みの他、傷口は白変ついで紫変し、また発赤する。全身の熱感が数日続き、その痛みは灼熱及び鞭打ちされる感じを伴って耐え難く、知覚さえも失われる。傷口は麻痺し、傷口から離れたところにも痛みがある。全身の麻痺、浮腫、傷口の腐乱も見られる。更に全身の症状を伴い、心律の衰弱、精神的錯乱、痙攣、吐き気、嘔吐、リンパ結節の炎症、腫れ、関節痛、発熱、呼吸困難、ショックなどが見られ、最後に死亡する。死を免れても回復に数ヵ月かかる等の報告が見られる。

魚刺傷処置法(Fish sting)

刺した魚を確認できなかったり、地方によって呼び名が異なって種類が同定できない場合もあるが、毒成分は共通の性質を持っているので、一般的に次の様な治療を行う。理由は解明されていないが、湯浸により痛みが著しく軽減することが多い。

基本的処置

傷口を洗浄、熱い湯(45℃以下)に30-90分浸す。棘の確認。残っていれば除去。

治療

破傷風・感染の予防。初期の湯浸を行わなかったり、遅れたときはアスピリン、麻薬、局所ブロック等による鎮痛。重症では呼吸・循環管理。

特記事項

必要であればX線検査を行い、棘の有無を確認する。

1)今泉忠明:動物百科 猛毒動物の百科[改訂版];株式会社データハウス,1999

2)小川賢一・他監修:学研の大図鑑-危険・有毒生物;株式会社学習研究社,2003

3)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005

4)(財)日本中毒情報センター・編:症例で学ぶ中毒事故とその対策;じほう,2000

5)日本中毒学会・編:急性中毒標準診療ガイド;じほう,2008

6)塩見一雄・他:新訂版 海洋動物の毒-フグからイソギンチャクまで-;成山堂書店,1997

[63.099.STO: 2009.8.7.古泉秀夫]