福寿草(spring adonis)の毒性
金曜日, 8月 17th, 2007| 対象物 | 福寿草(spring adonis) | ||
| 成分 | 全草に強心配糖体のシマリン、シマロール、アドニトキシン(adonitoxin)、ソマリンの他、コルコロサイドA、コンバラトキシン、ストロファンチ ン、リネオロン、イソリネオロン、アドニライド、ウンベリフェロン、スコポレチンなどを含む。アドニトキシンは非常に水溶性が高い。 |
||
| 一般的性状 | 福寿草[学名:Adonis amurensis Regel et Radde]。きんぽうげ科フクジュウソウ属。 分布:北海道、本州、九州及び千島、サハリン、朝鮮半島。中国東北部、シベリア東部に分布し、草地、林内に生え、観賞用などに栽培される多年草。 形 態:草丈10-30cm。根茎は短く肥厚する。茎はしばしば分枝し上部に乳頭状の短毛と、時に軟毛がある。葉は互生し、3-4回羽状複葉で小葉は皮針形。花期は2-4月。茎の頂にやや大型の黄色花を単生する。 別 名:元日草。英名:pheasant’s-eye。 薬用部分:根及び根茎(福寿草根<フクジュソウ コン>)、根及び根茎を堀上、水洗い後、日干しにする。 薬効・薬理:シマリンはジギタリス配糖体と類似作用があり、ウサギに投与すると少量で心臓の拍動を増強かつ緩徐にし、血圧が僅かな上昇する。蛙の露出心臓に滴下すると、初め拍動を増強、緩徐にし、ついで不整になって蠕動状を呈し、収縮期に停止する。福寿草根は浸剤、チンキ剤として強心、利尿薬としてジギタ リスの代用とする。 |
||
| 毒性 | ■福寿草根は毒性が大変強く、用量を誤ると心臓麻痺を起こして死亡する危険が大きいため、民間、家庭で は使用してはならない。 ■福寿草の致死量は約0.7mg/kgといわれている。42mgあれば体重 60kgの成人が死亡する。 ■福寿草の毒は心臓に作用するアドニトキシン(adonitoxin)という強 心配糖体の他に、20種以上の物質が知られている。そのうちアドニトキシンの含有量は0.25%。 |
||
| 症状 | ■76歳の女性、8年間にわたって心臓病と糖尿病を患っていた。福寿草の根を煎じて飲めば心臓病にいい といわれ、福寿草の根を掘り出して水洗いし、乾燥させた。2L入りの薬罐にひげ根の束を10cmほど入れ煮詰めた後、茶碗(180mL)についで飲んだ。 夫もつきあって少し飲んだところ、突然、胃が引っ繰り返るほどの嘔吐と、激しい痛みが二人を襲った。直ちに病院に運んだが、5時間後に心室性不整脈で死亡 した。夫は命を取り留めたが、1週間の継続入院が必要であった。 ■強心配糖体による急性中毒症状は、いわゆるジギタリス中毒の症状とは異なる。 嘔吐が80%に見られる。服用後数時間で出現するが、中毒の重症度と関係ない。25%の症例に不安を伴う興奮が見られる。錯乱性の迷妄、幻覚があらわれ、 てんかん様発作を見ることもある。頭痛、筋肉痛、脱力感が見られる。心筋の種々の部位で障害が起こり、その部位が刺激伝導路上で、下方に位置するほど危険 である。刺激伝導障害と自動能の傷害が同時発生する場合が殆どである。死亡は65%が心室細動、25%が長時間の無収縮、10%が急性循環不全である。高 カリウム血症は、重症度を示す重要な因子である。 |
||
| 処置 | ■福寿草摂取者に関する具体的な処置法は確認できなかった。以下にジギタリス以外の強心配糖体による中 毒発現時の処置として報告されている例を参照として紹介する。 [1]血清カリウム値を1時間おきに測定し、高いようであればケイキサレートの経口投与又はブドウ糖とインスリンの静注を行う。入院時の値が6.4mEq/L 以上は極めて予後が悪いと考えておかなければならない。[2]房室ブロックにはフェニトイン(アレビアチン注射液)を1回25mg(小児:1回0.5-1.0mg/kg)、1-2時間おきに静注する。心室性不整脈 に対しては、初回量15mg/kg(総量1gまで)、1分間0.5mg/kgを超えない速度で静注する。維持量は2mg/kgを成人で12時間おき、小児 で8時間おきに、必要に応じて静注する。できれば血清中フェニトイン濃度を測定し、10-20μg/mLを保つようにする。 [3]心室性頻脈、二段脈にはリドカインが有効。初回量1mg/kgを静注。必要なら0.5-1.0mg/kgを20分後に静注する。維持量として10- 40μg/kg・minを点滴静注する。 [4]血液透析や血液灌流ではalkaloid・強心配糖体を除去することはできない。 |
||
| 事例 | ぽ ん太が近づいてくると、忠吉郎はその棚の下にしゃがみ込んで、枯れた草を手に取ってみた。 「なんでございます」 似たような枯れ草が、その付近に散らばって、もうすぐ土になりかけていた。 「福寿草だよ」忠吉郎の声が、ひどく満足そうであった。立ち上がって、棚の上の竹籠と、その中にある箆(へら)のようなものを指した。 「こいつで土を掘って、福寿草を採って来るんだ」 平べったい植木鉢をのぞいた。 「ここにも、随分、沢山の福寿草が植えてあったらしいよ」 「枯れちまっていますね」 ぽん太も枯れ草を拾い上げた。 根のところから千切ってある。 「根っこがないだろう。みんな………」 「へえ」 「根が必要だったんだ」 |
||
| 備考 | 福寿草の根の毒性は、相当に強いということのようである。文献等を見ても、素人療法で福寿草を使用することは危険であり、回避するようにの注意書きが見られ る。早春に咲く花の美しさからは想像のできない悪辣さであり、間違っても美女の誘いに乗らないことである。 | ||
| 文献 | 1) 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988 2)植松 黎:毒草の誘惑;講談社,19973)植松 黎:毒草を食べてみた;文春新書,2000 4)内藤裕史:中毒百科 改訂第2版;南江堂,2001 |
||
| 調査者 | 古泉秀夫 | 記入日 | 2004.8.12. |
薬用部分:根及び根茎(福寿草根<フクジュソウ コン>)、根及び根茎を堀上、水洗い後、日干しにする。 薬効・薬理:シマリンはジギタリス配糖体と類似作用があり、ウサギに投与すると少量で心臓の拍動を増強かつ緩徐にし、血圧が僅かな上昇する。蛙の露出心臓